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財団法人母子健康協会 第32回シンポジウム 「保育に必要な予防接種の知識」
4.総合討論(5)

前川次は、「保育園での従業者への予防接種の決定について、どのように対応していけばよいでしょうか」という質問です。

保育園で働く人に対しては、まず、就職するときに、最低の予防接種は打ってきてほしいというのが希望です。それはMRワクチンです。はしかと風疹、水痘、おたふく。それから、いまは成人の百日せきが問題になっています。保育士さんたちの年齢というのは18〜20歳ぐらいですね、もっと上の人もいるかもしれないけれども。だから、岡部先生、できたらDPTの0.3mlがいいですか。

岡部0.2mlでいいでしょう。

前川0.2で大丈夫ですか?

岡部はい。

前川いまのは三種混合です。acellularという特別な日本のワクチンがありますから、それを普通は0.5mlですが、0.2を打てば大丈夫だというので、できたらそれを打っておいてほしい。ただ、その費用は、就職するときはやはり自費ですかね。園で見てもいいけれども、それは園長先生に考えてほしいということだと思います。いずれにしても、それだけは打っておいてほしい。この意味は、子どもにうつさないということと、子どもからうつらないということです。二つの意味があります。

横井いま、前川先生がおっしゃった百日せきのワクチンは一般化されていないので、子どもたちに打った赤ちゃん用のDPTワクチンを少量打ちます。これは学問的には証明されていますけれども、開業医レベルではほとんど知られていないんです。

あと多いのは、肺炎球菌のワクチンは子ども用と大人用(老人用)があります。老人用のワクチンは老人に打たなければいけないし、子ども用は子どもに打たなければいけないけれども、これをよく間違えます。

最近、間違えやすいのは、水痘のワクチンというのがあります。あれは水痘のワクチンなんだけれども、大人の帯状疱疹への予防効果もある。皮膚科と内科の先生の一部の先生はご存じだから、打ちますけれども、うちも職員のおじいちゃん、おばあちゃんに「打ってもらったら」と言って、田舎にいるおじいちゃん、おばあちゃんが近くの内科医に行くと、「子どものワクチンなんか大人が打ったらダメだ」と、帰されちゃうんですね(笑)。そのあたりは知識の薄い濃いがあるものですから、トラブルになることがあります。

せきが出るのは百日せきと、RSウイルス、今年の夏からはやったと思いますが、あとはマイコプラズマ、喘息があります。百日せきというのはこういう感じですね。(咳のまねをして)これが百日せきです(笑)。RSウイルスの場合は、本来は冬の風邪ですけれども、今年はどういうわけか東京都では夏から秋口にはやりました。これは、咳、鼻水、熱で終わる子もいますけれども、重くなるとゼーゼーヒューヒュー言うんですね。特に小さい子でゼロ歳前後の子たちは、重くなると入院する子がよくいます。この子たちは喘鳴といって、咳と一緒にゴホッゴホッと言いながら、(喘鳴の音)この音を聞いたら、「小児科の先生に行ったほうがいいよ」と言ってください。同じ咳でも特に速くなった感じですね。こういうのは1日で悪くなるんです。きのうまでは、ただ鼻水グジュグジュしていた子が、今日来て預かったら、昼ぐらいから(喘鳴の音)……特に呼吸が速いというのはよくないんです。苦しいので、受診してください。

あと、間違いやすいのが喘息です。喘息は、風邪ではなくて、ホコリか花粉でなるんです。喘息の場合は(咳のまね)……呼吸が速くならないでゼーゼーだけです。喘息の場合は、必ず、前にゼーゼー言ったことがある、それでまたなったということです。それに対してRSウイルスの場合の細気管支炎というのは、一回きりですけれども、重くなる。特にゼロ歳以下の乳児、ゼロ歳児保育をやっているところでは、うつる力も強いし、重くなります。

それで、「シナジス」というワクチンが発売されました。ただ、このシナジスは一回接種するのに数万円かかります。そのために全員に接種できないので、先天性の心臓の病気がある子とか、低出生体重児のひと冬だけ補助がついて、ほとんどの自治体では、無料か、安い自己負担でできるようになっています。

シナジスというのはワクチンですが、ワクチンというのは、普通は抗体ができるようにちょっと薬を入れて、抗体をつくってくれるのを待つのですが、そういうのをRSウイルスはできなかったので、抗体そのものを打つ。だから、毎月打っていかないとダメなんです。毎月打って、ひと冬越すと、翌年からはRSウイルスにかかって乗り越えていくしかないので、ゼロ歳のときだけ、それぞれかかりつけの、クリニックではなくて、病院の外来で打ってくれる形になっています。心臓の病気があったり、超未熟児で生まれた子の場合は、毎月打っていますという子がいます。

シナジスというのは、世界では日本とアメリカとヨーロッパ、ごく一部のお金持ちの国しか打てないワクチンなんですね。1回が、簡単に言うと、冬物セールに出てくるコート代ぐらいかかってしまう。それを毎月打っていかなければいけない。でも、それを打つとかなり効果はあります。

あとゼーゼー言いやすいのは、鼻水をのみ込んで後ろ側で咳き込む子が多いので、こういうのは保母さんが鼻をかむ練習を子どもたちに教えていただくと、中耳炎も減るし、お咳も減るので、何しろ鼻のかみ方をお母さん方に説明してほしい。お母さんたちは大体、「フンしなさい」と言うんですね。子どもがフンと言うと、「違うのッ、フンしなさい」と。子どもは親に言われてフンと言っているんだけれども、お母さんは「かめ」と言っている。子どもにすると、フン、フンッて言ってるんですね(笑)。そうではなくて、先生たちはかませ方がわかると思うので、上手に鼻のかみ方を子どもに教えてあげる。そうすると中耳炎も減りますし、咳も減ってきますので、かみ方をお母さんに伝えていただくと、お母さんも安心すると思います。

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