母子健康協会 > ふたば > No.71/2007 > 子どもが育つ保育 > 1.ふれあいの意味 > フレデリック大王の実験とネグレクト
第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
1.ふれあいの意味
神奈川県立保健福祉大学教授歯科教授
東京慈恵会医科大学名誉教授 前川 喜平



フレデリック大王の実験とネグレクト

 ふれあいがなかったらどういうことになるか、それが「フレデリック大王の実験とネグレクト」です。産業革命後のヨーロッパは捨て子が多くて、それを修道院に入れて修道士が育てました。フレデリック大王はあるとき修道士にマスクをさせて、赤ちゃんが目を見ても一切目を見てはいけない、笑いかけても笑ってはいけない、語りかけてもいけないと、ふれあいを一切しないで赤ちゃんを育てる実験をしたのです。そうしたら、実験が終わらない間に子どもはみんな死んでしまったのです。次は現在の社会で問題になっている虐待の一種のネグレクトです。赤ちゃんがだすサインを一切無視して育てると、子どもは身体も大きくならなければ発達も悪い発育不良になってしまいます。以上の事実からふれあいは子どもが育つ上で非常に大切だということです。
 今日お話しするタッチケアも絵本の読み聞かせも、すべて、このふれあいの延長線上にあるものです。ふれあいのもう一つの特徴は双方向性ということです。子どもだけが癒されるのではなくて、やっているほうもお互いに癒されるというのが特徴です。フィリス・デイヴィスという人の『パワー・オブ・タッチ(ふれあいの力)』という本がありまして、その本の中に、ふれあいがいかに大切かという詩が載っています。これをちょっと読ませていただきます。

 もしわたしがあなたの赤ちゃんなら
 どうぞ、わたしにふれてください
 今までわたしが知らなかったやさしさを
 あなたからもらいたい
 おふろにいれてください
 おむつを替えてください
 おっぱいをください
 ぎゅっとだきしめてください
 ほおにキスしてください
 わたしの体をあたためてください
 あなたのやさしさとあなたのくれる快楽が
 わたしに安心と愛をつたえてくれるのです
 もしわたしがあなたのこどもなら
 どうぞ、わたしにふれてください。
 いやがるかもしれないし、拒否するかもしれないけど、
 何度もそうしてください
 わたしがどうしていやがるのかわかってほしいから
 おやすみなさい、と抱きしめるあなたの腕が
 わたしの夜を甘くしてくれる
 昼間に見せてくれるあなたのやさしさが
 あなたの感じる真実を伝えてくれる (途中を省いて、最後のほうにいきます。)
 もしわたしがあなたの年老いた父親なら
 どうぞ、わたしにふれてください。
 あなたが小さかったときに
 わたしがあなたにふれたと同じように
 わたしの手をにぎり、わたしのそばにすわって、
 わたしを力づけてください
 わたしの疲れた体によりそい、あたためてください
 わたしは随分しわくちゃになってしまったけれど、
 あなたのやさしさに力づけられる
 どうぞ、何もおそれないで
 ただ、わたしにふれてください −フィリス・K・デイヴィス

これが今日の要約です。
 結局、ふれあいは、赤ちゃんから老人まで、総ての人に必要な重要なコミュニケーション手段だと思います。
 次に、吉永陽一郎先生に、「園におけるタッチケアの実践」ということでお話をいただきます。
 日本で行われているタッチケアは、アメリカではTouch therapyと言われているものです。それを日本に導入するにあたって、アメリカのマイアミと国際テレビカンファレンスをやりました。そのときに吉永先生が、日本では、タッチセラピー、ふれあいは治療ではない、ケアにしたらどうか、と言う提案で日本ではタッチケアとなりました。日本のタッチケアの名前の生みの親です。
 吉永先生は、世界の各国から一人ずつ選ばれたタッチケアの代表者で、日本でのタッチケアのインストラクターとして国際的に認められている方です。本当は親と子でやる方法として取り入れたのですが、保育園、その他でやって、意外な効果があることがわかってきました。そのことについてもお話しいただけるのではないかと思います。 それでは先生、よろしくお願いします。



母子健康協会 > ふたば > No.71/2007 > 子どもが育つ保育 > 1.ふれあいの意味 > フレデリック大王の実験とネグレクト

事業内容のご紹介 協会の概要活動の概要設立の経緯協会のあゆみ健康優良幼児表彰の歴史
最近の活動のご紹介
小児医学研究への助成 機関誌「ふたば」の発行シンポジウムの開催 Link:Glico