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特集  「急変する社会環境から子どもの心を守る」
こども心身医療研究所所長 冨田 和巳



素因と環境の関係


図 紹介した事件の父子の組み合わせによる不幸を普遍化して素因(子供の資質)と環境(事件の場合は父親の支配する家庭環境)の相互関係として、問題(障害・疾患)出現という視点から図のように考えてみます。あらゆる素因(障害)の程度は重度から0に近いものに至るまで連続して変化し、重度であれば必ず障害が出現し(図の線(1)の左領域)、軽ければ性格の偏りの範囲(線(b)の下)に納まります。環境も理想的なものから最悪まで連続し変化するので、この素因と環境を重ねると、できあがった四角形の縦の長さが問題出現を示すことになります。線(1)の左領域は民族や時代などで多少の差はあっても、ほぼ一定に出現する素因(障害・脆弱性)を示し、線(2)の右領域はほとんどの子どもに問題を生じさせる最悪の環境です。また、環境は線(a)より上程度の悪さは仕方がなく、線(1)(2)(a)(b)に囲まれた中等度の障害は、環境さえよければ発症せず、悪化すれば発現する領域と考えます。10年前の事件はまさにこの領域で、昨年の事件は線(2)の右になるでしょう。共に家庭環境の問題が強くて、この二例に限り、環境は家庭だけにみえますが、最近の発達障害の急増や、心因性疾患から反社会的行動まで、あらゆる問題の増加は、広く捉えると家庭内だけでない現代の社会変化によります。この社会変化の基本は67号に詳しく述べています。
 いずれにしても、子どもの素因と家庭・社会環境を常にみながら、古くからある当たり前の「子育て」の価値観で養育・療育していくことが基本になります。繰り返しますが、10年前の事件は、親が普通の育児をしていれば、繊細さがうまく活かせ、芸術家として活躍したかもしれず、昨年の事件では「何の問題もない優秀な子ども」だったのではないか?と思います。
何処に相談するのか

このような問題を相談する機関としては、全国規模では児童相談所があります。最近は地域によって名称が「家庭子どもセンター」といったように変わっている場合もあります。また、教育委員会が主催する「教育センター(主に不登校児を扱う)」も、所によっては引き受けてくれます。「子育て支援センター」といった新しい形態の相談機関もできている所があるので、市町村の役所に問合せてください。

心理や教育学科のある大学では相談室を開いている場合もあるので、一度問合せるのもよいでしょう。

医療機関では児童精神科が専門になり、公立の小児専門総合病院と一部の専門機関にあるのですが、全国的には極めて少ない状況です。ある専門機関では「予約待ちが3年」という非常識な状況ですから、実質的に相談はできません。むしろ、民間の医療機関の中で、探せば親切に扱う場所もあります。また、公立・私立を問わず、病院の小児科・精神科や家庭医の中に、このような発達の問題を扱っている所もあるので、日頃から情報を集める努力をしておきます。

なお、あらゆる場合に診察室だけの問診と簡単なチェックリストで断定的に診断する所は避けなければなりません。幼児期の問題では丁寧な問診と玩具を使った行動観察(最低1時間はかかる)に、知能検査を組み合わせて診断するのが一般的です。場合によれば3ヶ月、6ヶ月と時間経過で再チェックして、やっと診断ができる場合や診断名が変わっていく場合もあります。



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