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お子さんが小柄である事が気になったら
大阪大学小児科学教授 大薗恵一先生



6.低身長をきたす代表的な病気


A)成長ホルモン分泌不全性低身長(GHD)
 GHDは、血清IGF-1値、負荷試験時のGH値により診断されます。GHは直接的に細胞の分化増殖に作用するとともに、肝臓でのIGF-1分泌を促進させ、骨・筋組織の分化増殖を促進します。GHDの原因としては周産期異常の他、脳腫瘍、脳外傷後などがありますし、まれには遺伝性の場合もあります。
 現在GH製剤は成長障害の改善を目的として行われているため、ある身長基準(小児慢性特定疾患治療研究事業での終了基準は男児156.4cm、女児145.4cm)に達すると治療は中止されています。しかしGHは生涯にわたって分泌されており、蛋白質、脂質、糖質、骨および水代謝に関与し、体の恒常性を維持し、動脈硬化危険因子の低減を図るためには生涯必要と考えられています。このため重症の成人成長ホルモン分泌不全症に対しても新たに適応が拡大されました。

B)軟骨無形成症
 軟骨無形成症は、最も多い生まれつきの骨の病気(骨系統疾患)といわれ、四肢短縮型低身長をきたす代表的疾患です。軽症の軟骨低形成症では、顔貌異常も目立たないことからさらに発見時期が遅れる傾向にあり、身長増加不良を主訴に外来を受診する場合もみられます。
 軟骨無形成症は、低身長、四肢短縮、顔貌異常(前額部突出、鼻根部陥凹、顔面中央部低形成、下顎突出)、頭囲拡大、三尖手などを特徴とします。骨X線像も特徴的で診断につながります。低身長は、年齢とともに正常からの差が顕著となり、また、思春期の成長スパートに乏しく、最終身長は男130cm程度、女125cm程度であります。
GH治療が骨端線閉鎖を伴わない-3SD以下の低身長の本疾患患児において適応となっていますが、有害事象を考慮して以下の場合には適応としません。すなわち、手術的治療を考慮するほどの大孔狭窄、脊柱管狭窄、水頭症、脊髄・馬尾圧迫等がMRI/CT上で認められる場合およびこれらのための圧迫による臨床上問題となる神経症状が認められる場合であります。

C)ターナー症候群
 低身長、翼状頚、外反肘、性腺機能不全、心奇形などを呈する女性で、X染色体をひとつ欠くか一つのX染色体に異常がある症候群をターナー症候群と呼びます。しかし、翼状頚や外反肘といった身体所見は明らかでない場合もあることから低身長の女児では染色体検査を考慮します。ターナー症候群の低身長もGH治療の対象です。性腺機能低下症を伴うので、適切な時期に女性ホルモンの補充をします。 以上、こどもの成長について簡単に触れましたが、実際、不安な点をお持ちの方は専門医にご相談いただく事をお勧めします。




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