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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
4.総合討論(8)



— 先ほど前田先生の講義で、ブラッシングで、ペンホルダーで、あまりゴシゴシしないで1本ずつ磨くというお話がありました。調布では毎年、歯科衛生士さんが来園して「サヨナラ持ち」とか「コンニチハ持ち」という形で、元気よく磨きましょうというようなお話で指導されますがどういうものなのでしょうか

前田 それ自体はいい方法だと思うのです。ただ私は、サヨナラ持ちだとか、コンニチハ持ちだとか、わかりやすく言っていますけれども、それが絶対的なものではないということです。ペンホルダーでやっても、ちゃんと丁寧に時間をかけてやればきれいになります。ただゴシゴシ汗をかいてやっても歯茎を痛めたりしますので、子どもたちが受け入れてくれて、喜んでやっているのならそれで十分結構だと思います。
 先ほど一本一本と言ったのは、歯の本数が少ない子どものときには、一本一本ぐらいでやらないとちょっと難しいかなと思っただけです。その衛生士さんの方法でよろしいと思います。ただ、絶対にこの方法でなければいけないとか、こうではいけない、ということはないということです。むしろ楽しく、継続してやることが大事だということです。

井上 前田先生の言ったペンホルダーというのは、お母さんが磨くときが主体ですね。ペンホルダーは3歳ぐらいのお子さんにはなかなか難しいです。ですから、お箸をしっかり握って扱えるぐらいにならないとペンホルダーで歯ブラシを扱うのは難しいですから、子どもの場合には、グッと握ってゴシゴシでもしようがない。方向を決めるのには、しようがないから、サヨナラ持ちとかコンニチワ持ちである程度方向を決めるとか。それが、お子さんに教えるときの最初の一つの目安だと思います。
 技術的なものが向上したら、小学生ぐらいですと、ペンホルダーで細かく磨くのも上手になると思いますし、保護者の方が磨いてあげるときには、ペンホルダーで軽く当てて細かく動かすのが、一番よく汚れが取れると思います。そこら辺の差があると思いますけれども、たぶん衛生士さんは、一般的にみんながやりやすい方法で教えていらっしゃるのではないかと思います。

— 歯科検診のときに校医さんに手袋を一人一人チェンジするようにお願いしますが、100人もいるせいでしょうか、なかなかチェンジしていただけなかったり、アルコール消毒もなかなか実行していただけなくて、ちょっと苦慮しております。それと、探針を使わないほうがいいという記事を読んだことがありますが

井上 お子さんの口を触るときに、グローブをかえないのだったら、消毒液に浸けるとかは対応として望ましいと思います。まあ、かえるというのはたぶん時間的なものもありますし、我々が検診に行っても、10何年前は素手で手洗いだけでした。それが、だんだんグローブをつけるようになって。いまは、地域によっては「一人一人のお子さんでグローブをかえてください」という対応になっております。時代の流れとともに、必要性というよりは、周りの人の観念の問題が大きく変わってきているかなと思います。要するに感染予防の部分ですね。そういうことで、グローブをつけるつけない、かえるかえないよりも、清潔の部分を確認されたほうがいいと思います。
 探針に関しましては、先ほど出てきた表層下脱灰とか脱灰という部分、表面が壊れなければ確かにある程度もとに戻り得る。ただし、それが一回壊れてしまうと穴になるということから考えますと、「探針を突き立てる」というふうな表現はいまは避けるようにしております。
 ただし、汚れがついているとむし歯もわからないです。そういう意味で、探針は探る針ですので、突き刺す針ではないという概念で、汚れを取ったりとか、ちょっと探ってみて、デコボコがあるかなというのを見たりとか、力を入れないで使うような使い方で使ったほうがいいと考えている部分はあります。ただ、歯を壊すような使い方は絶対にしてはいけないと考えています。

前田 私たちがちょうど歯科医になった頃はグローブは使用しませんで、次の患者さんが来ると手を消毒して洗うだけで、それが当たり前だったのですが、いま、学生たちはすべてグローブを確実に一人一人かえています。「グローブをやって歯の治療なんかできるのか」と、当初は思ったぐらいですけれども、時代とともに変わってきます。いずれ、学校検診、幼稚園の検診等では、グローブを必ずかえなければいけないという時代が来るかもしれませんけれども、変な言い方をすれば、かえなくても別に何か感染症が広がったとかそういうこともありません。消毒さえしてくれればいいのですけれども、時代とともにこれも変わったなあという気がしています。
 あと、探針の問題です。昔は、歯の検診では、探針を必ず刺して、粘着感といいまして、くっつく感じのときにむし歯かどうかというのを探していったんですけれども、いまお話もあったように、むし歯になりかけのときに刺してしまいますと、顕微鏡で見ますとものすごく大きな穴があいてしまうんですね。これは明らかに人工的なむし歯をつくっているみたいなものですから、「探針は使いなさるな」と。もし使うならば、汚れを取るということで、「プローブ」といいまして、尖っていない、先が丸いのがあるんです。手で刺しても痛くないような状態のものを使ってきれいにして見なさいと。私が医局に残った頃は、探針の先を一生懸命磨いたんですね。それが新入医局員の仕事でした。痛いぐらい刺すやつで見ないとわからないという時代だったのですけれども、いまはそれはもう否定されています。

前川 ありがとうございます。 そろそろ時間が来ましたので、これでシンポジウムを終わらせていただきます。   〔拍 手〕

講師プロフィール

前川 喜平(まえかわ きへい)
神奈川県立保健福祉大学教授、東京慈恵会医科大学名誉教授。
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。
1996年より母子健康財団 シンポジウム統括を務める。同協会理事。2003年に小児科と小児歯科の保健検討委員会長。
主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「今日の診断指針」(共医学書院)など。

前田 隆秀(まえだ たかひで)
日本大学松戸歯学部付属病院小児歯科教授
1977年日本大学大学院歯学研究科博士課程修了。自治医科大学助手,東京医科歯科大学医員,トロント大学海外派遣研究員,日本大学歯学部講師を経て現職。学会:日本小児歯科学会副会長,日本障害者歯科学会理事,国際外傷歯学会理事,日本小児保健協会評議員,JADR評議員。著書:『小児の口腔科学』など。

井上 美津子(いのうえ みつこ)
昭和大学小児成育歯科学教室助教授
東京医科歯科大学歯学部卒業後、昭和大学小児歯科学教室助手を経て、1994年に現職。
主な研究テーマ:小児の齲蝕予防と口腔健康管理、母子保健と口腔の健康支援、小児の口腔習癖
主な著書「指っておいしい?母と子の指しゃぶり教室」「子どものための歯と口の健康づくり」「歯と口の健康百科」「口腔の成育をはかる」「よい歯を育てる食生活」「小児歯科学」「小児歯科のポイント100」他



 

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