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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
3.母乳とむし歯、おしゃぶり、指しゃぶりの考え方
神奈川県立保健福祉大学教授
小児科と小児歯科の保健検討員会長
前川 喜平先生



おしゃぶり


 おしゃぶりは、舌やあごの発達を助けて鼻呼吸を促すという宣伝文句などと、ファッション性が受けてお母さんたちが非常に使っています。だけど歯医者さんに言わせると、これはすごく歯並びに影響を及ぼします。その理由は、指しゃぶりに比べてしゃぶっている時間が長いからです。泣くとすぐに与える。子どもは寂しいからピチャピチャしゃぶっている。
 おしゃぶりも指しゃぶりもそうなのですけれども、咬み合わせに影響を及ぼします。どういう影響を及ぼすかというと、一つは、上の前歯が前方に突出する。いわゆる上顎前突になりやすい。もう一つは、上下の前歯の間にすき間があく。これが開咬です。乳臼歯が生えてからおしゃぶりをやっていると、上顎と下顎と咬み合わせにズレが出てきます。それを、片側性交叉咬合といいます。要するに噛み合わせがずれてしまうのです。もう一つは、さっき井上先生も前田先生もおっしゃったけれども、歯列のアーチが狭くなってしまう。そういうことをもたらすことになります。
 咬み合わせに関することは、指しゃぶり、おしゃぶり両方とも、吸っていると上顎前突と開咬になりやすい。特に、おしゃぶりは開咬になりやすい。この事はいろいろな調査でも裏付けられております。おしゃぶりを使用する年齢が高くなればなるほど咬み合わせの異常が多く見られるのが事実です。
 何歳頃までしゃぶっていると影響が出るかというと、普通はおしゃぶりの使用は、3歳頃になると急激に減少します。1歳半とか2歳でも、おしゃぶりを盛んにしゃぶらせると、咬み合わせが悪くなるけれども、やめてしまえば治るのです。ところが、乳臼歯が生えてくる2歳から2歳半以後になっても使っていると、咬み合わせが悪くなるのです。そこが中止するポイントです。小児歯医の先生方は2歳までにはやめて欲しい。ところが、現実は3歳まで使っているのです。1歳、ズレがあります。問題はそこをどうしたら良いかということなのです。
【表10】  対策(表10)は、細かいことは省きますけれども、もしどうしても使うのでしたら、言葉とかそういうことを覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのホルダーを外すのです。常時しゃぶれないようにしておく。洋服に留めてあるからでまたポンとしゃぶらされるのです、下へ落ちてしまったら拾ってやらない。常時使わないようにホルダーを外すということ。遅くとも2歳半までには使用を中止するようにする。
 それから、おしゃぶりを使用している間も、声かけや、一緒に遊ぶなどして、子どもとの触れ合いを大切にするということが大切なのです。育児の手抜きでただ使ってしまうのはよくないということです。
 おしゃぶりはやめたけれども、指しゃぶりが残ってしまうというのは困ります。極端に言えば、遅くまでしゃぶっている子どもは親の構い方が少ないのです。もし保育園でもそういう子がいたら、みんなして構ってあげて、お母さんにも、ヨイショヨイショしてあげたらいいのです。そうすると自然と外します。もしも、4歳以後になっておしゃぶりが取れない場合は、いろいろなことがあるので、小児歯科の先生とか、小児科の先生に相談してください。
 おしゃぶりは乳児では悪いのではなく、「いつ外すか」ということが問題です。少なくとも2歳過ぎになったら取るように心がけてください。そうすれば歯並びには影響がないということです。




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