4.総合討論(10)

前川子どもがかまってほしいというサインを出しますね。でも、100%かまえないです。

結婚なさっている方、何人ぐらいいる?(挙手あり)

ご主人が帰ってきて、「おい、ビール」と言ったときに、10回言って何回で出したらご主人は満足すると思いますか。10回言って5回ならご主人は満足する。4回、6回……あまりやったことないですか。

大体、気がついたときにやれば、よい女房ということになるんですよ。それが6割の法則です。5割ではだめなんですね。人間の子どももすごく適応がありまして、いくら泣いても、かまってもらいたくても、全部やることないんです。普通の親は、気がついたときにやれば、ちょうど子どもが満足して育つ具合にできています。これは、エリクソンの心理社会的発達理論によるものです。

それからもう一つ、母親はいろいろなことがあって、もちろん、保育園などに預けている母親は疲れていて、あまりかまってもらえないとおっしゃっていましたね。そのときは、こちらから親のいいところを見て、褒めるか何かするんです。「お母さん、さっぱりしたものを着てますね」とか、「元気そうですね」とか、何でもいいんです。こっちが相手の状態を認めているということさえ満たす。これを共感と言いますが、そうすると、いろいろなことがだんだん話せるようになってくるわけです。

いかに親と会話するか、そういうテクニックに慣れてくると……。むしろ園長先生とか、保育園には慣れた人がいるんです。そういう人に頼んでもいいです。人間というのは、意外と自分のことはわからないんです。だけど、人にかまってもらって怒る人は誰もいないです。悪いことでかまってもらってはまずいけれども、褒めてもらうというか、そういうことも今の問題を解決する一つのきっかけになるのではないかと思います。

古野それからコンテンツ、中身の話です。殺人場面とか、医療系ものだったらどうなのか。子どもにとって一番よろしくないコンテンツは、実はニュースだろうと思います。暗い話しか基本的にないですね。しかも現実の世界の話なので、特に現実の社会がまだよくわかっていない幼児にあまりよろしくないコンテンツかなと思います。

ひょっとしたらそれよりももっとよくないのではないかと思うのが、「アンパンマン」。あれ、正義の人は暴力を振るっていいという意識を作りかねないです。もう少し学年が上がると、「名探偵コナン」。あれは始まってからもう何百人も人が死んでいますね。それを小学生の登場人物たちが目撃し、その後、笑いながらハンバーガーを喰っているわけです。異常な世界ですよね。

そんなふうに、皆さんがコンテンツというものを見るときにちょっと視点を変えてみてください。これが子どもたちにどんなメッセージを送っているのかという見方で見てもらうと、かなり異常なコンテンツが良いものとして推奨されています。それから言うと、「クレヨンしんちゃん」がお尻で歩いているのはかわいいものです。あれは優良画像だと思います。

村田ゲームに関しても、今、リアルゲームであるとか、ゲームの本質的な問題というのが深く議論をされています。例えば、「うちの子どもはゲームで育った」とか、そんな本もいろいろ出ていますし、ゲームの本質というものを見極めないとよくない。ゲーム論も大変難しい展開を示していることも事実です。

しかし、子どもにとって何が大事かというと、私としては、同じことを繰り返すようですが、情報の質、そこから得られる情報が何であるかということを大人は考えて、子どもには必ず一次情報を与えるように考えなければいけない。要するに、現実をまず情報として与えることを基本にしなければいけないと思っています。

古野スマホに依存していたり、自己肯定感が低い親へのアプローチで、「認めるということから始めたら?」ということを挙げました。もう一つ、私がやっている「IPPO(いっぽ)」というプログラムを紹介します。これは、第1子6カ月未満の乳児母子対象の愛着形成のプログラムです。先ほどの顔を見ながら世話をするというような、そういうグループのプログラムです。

(IPPOは、NPO法人 北九州子育ち・親育ちエンパワーメントセンターBeeが開発した「親育ちプログラム」で、生後2~4か月の親子が一緒に参加できるお出かけのきっかけにもなるプログラム)

親自身が、今、つながるという体験がすごく薄くなってきています。つながってちゃんとお互いが関わり合う、それから、よその子どもを見るということを意図的に環境としてつくり出さないと、それが心地よいものだと思えない。赤ちゃんが生まれて半年ぐらいまでの間は、共感力がすごく高まっています。共感する能力が高い時期にそういうプログラムをやってもらうと、人生観がガラッと変わります。今まで、人とかかわるのが苦手だったとか、いやだったとかいう人がガラッと変わる可能性もあります。仕事中心で、子どものことより自分の生活、自己実現と言っていた人がガラッと変わる可能性があります。そういうプログラムとしてやっていますので、ご興味のある方は古野までご相談ください。

また、親同士がちゃんと話し合える環境を、例えば支援センターなどでつくり出してやっていくことがすごく大事で、そういうファシリテーション(会話の支援、活動の促進者)の力を身につけるというのも、支援センターのスタッフトレーニングとしてやるといいと思います。そういったものも対応いたしますので、お気軽にお声がけください。だんだん何か宣伝になってきましたね。