4.総合討論(4)

村田補足させていただいていいですか。

今、お話があったように、やはり2歳までは、どういうことがあっても私はこういうメディアに触れさせないほうがいいのではないかと思います。それから先の問題は、いろいろ複雑な社会的状況があるので問題だと思いますけれども、例えば、YouTubeやインターネットを介しての情報という問題があります。

子どもたちは必ず一次情報というものに厳密に接する必要がありますけれども、インターネットを介して収集する情報というのは、何が一次情報なのか、二次情報なのか。それから、善意をもって間違った情報を流しているのは非常に困ることですけれども、悪意をもって悪意のある情報を流していく場合もあり得るわけです。フェイクニュースとか、今、盛んにアメリカで問題になっていますが、一番大きな問題は、情報の「質」がインターネットを介したときにはわからない。その情報の質を理解できるようになるというのは、相当トレーニングを受けた後でなければ難しい問題なわけです。

それともう一つ、インターネットで集める情報の問題点は、いいとこ取り。悪いところは全部捨てていくわけです。気に入った情報だけを集めるという傾向があって、世の中、それでは情報の偏りがあるのですが、情報収集という問題について、もう少し基本的な教育をしていかなければ、子どもたちに、インターネットの問題、YouTubeの問題、いろいろ本質的な問題を扱うのに難しいところがあると思っています。

前川今の村田先生の、どうして2歳までかということの答えですけれども、2歳というのは、ちょうど親の保護から表へ出る時期なんですね。それまでは、いわゆるバーチャルなスマホとか、ビデオとか、そういうものは子育てには必要ではないのです。何が必要かというと、愛情を持って親との触れ合いが必要なのです。バーチャルのスマホにしろ何にしろ、子どもはそれを勘違いしてやってしまうので、子どもが育つのに弊害があるから、2歳なのです。だから理屈から言えば、見せても、害にはなっても益にはならないということが2歳だと思います。

それからもう一つ、これは僕への質問です。

「同調する能力とありましたが、詳しくお聞かせください」。先ほど、妊娠中の母親には育てる力が遺伝的に組み込まれて、赤ちゃんにはいわゆる育つ力が組み込まれているということを話しましたね。それはお産しただけではスイッチが入らないのです。それがまず一つの問題。

ボールビーという人の、どうしてそういうものがうまくいくかという研究の一環だと思いますけれども、赤ちゃんは生まれて間もなく目が見えますね。その見える距離が、ちょうど母乳をやっているときのお母さんの目と赤ちゃんの目なのですね。

それから、赤ちゃんは耳が聞こえます。それで、最も保育をしている、子どもを育てているお母さんの声に反応するわけです。それから、生後5日以上たつと、お母さんのにおいがわかって、声がわかって、そっちに抱きつくようないろいろな行動をする。

大概のお母さんは、生まれてすぐ赤ちゃんを見せると、抱きしめたり、さすったり、母乳を与えたりします。それに対して赤ちゃんも、一方通行じゃないんです。そこで初めて親子の触れ合いが起こるわけです。それによってお母さんの育てる力と、赤ちゃんの育つ力にスイッチが入るということになっているのです。スイッチが入るのですけれども、過去において、大切に育てられて愛着形成が十分な母親とか、支援がある母親はスイッチが入りやすいのです。過去にそういうことがない、虐待とか何かされた親たちはスイッチが入りにくいのです。

そういう能力がありますと、今度は、どうして親になるかというと、赤ちゃんというのは泣きますね。泣いたって何かというのはわからないですよね。どうしていいのか。だけど、愛着を持って育てられた親たちは、何だかわからないけれど、同調する能力にスイッチが入って、わからないけどオムツを替えたり、母乳を与えたり、抱っこしたり、それで快の状態にするというのが、この同調する能力です。

これが、例えば否定的な妊娠とか要支援家庭の親だと、最初のスタートから同調する能力が入らないわけです。それから、過去においてスマホ育児で育てられた親というのは、どうしていいかわかりません。逆に言うと、スマホでほとんど育てられて自分も今スマホを使っている親たちは、生まれたときからふれあいが不十分で養育不全をおこすのだと思います。人生のスタートからいろいろなことにマイナスに残るのではないかと思います。これは非常に難しい問題だと思います。

以上です。