2.血と止血のしくみ

出血とは、血管の傷害、変性や炎症などの原因により血管壁が破綻して、血管内の液体成分(血漿)や細胞成分(赤血球、白血球、血小板)が血管外に漏出することを言います。

通常、血管内では血液が固まることはありませんが、出血が起こると、止血機構が発動します。まず、血小板が、血管障害部位にフォンウイルブランド因子の糊の作用を介して粘着します。粘着した血小板は活性化されて次々に血小板どうしが結合します。これを血小板凝集と呼びます。洪水で川の堤防が決壊したときを出血と例えると、砂のうや土嚢の役目が血小板です。ただ、血小板凝集だけでは止血作用として不十分で、セメントの役割である凝固機構が必要です。凝固機構では多数の凝固因子が次々に活性化されて進行します(図1)。最初のステップは出血により露出した組織因子に結合した活性型第Ⅶ因子による第Ⅹ因子を活性化反応です。活性化第Ⅹ因子はプロトロンビンを活性化して微量のトロンビンに変換されます。この微量トロンビンが第Ⅷ因子や第Ⅴ因子を活性化します。活性化された第Ⅷ因子は活性型第Ⅸ因子による第Ⅹ因子生成反応を20万倍増幅します。さらに、活性化された第Ⅴ因子がプロトロンビンをトロンビンに爆発的に生成し、フィブリノーゲンが分解・重合してフィブリンが形成され、止血に十分な安定した止血栓が完成します(図2)。血液凝固機構は過剰なトロンビン生成やフィブリン形成を制御する抗凝固因子や線溶系が存在します。前者として組織因子に結合した活性型第Ⅶ因子をブロックする組織因子経路インヒビター(TFPI)、第Ⅷ因子や第Ⅴ因子を抑制するプロテインC、プロテインS、トロンビンをブロックするアンチトロンビンなどが挙げられます。後者は、プラスミンでフィブリンを溶解します。プラスミンを抑制するαアンチプラスミンが、線溶系を二重に制御しています。

図1 止血機構と出血傾向の原因 図2 細胞基盤凝固反応の概念