4.総合討論(14)

質問者埼玉で保育園の園長をしております、カワカミと申します。昨年に続いて、今年も楽しみに参りました。ありがとうございました。

大変抽象的な質問になりますけれども、乳幼児期に育つもの、乳幼児期でなければ育つことができないようなものは何かということです。ちょっと抽象的になりますが、先生方、もし教えていただければありがたいのですが、いかがでしょうか。

前川一言で言えば、乳幼児期に必要なのは愛着の形成だと思います。親に愛されている、周りの人から受け入れられているという感情を、子どもに植えつけることだと思うのです。それから、あとは大人の信頼感。周りの人を信頼するということが一番必要ではないかと思います。親がだめだったら、他の人々がこの感情を植え付けるよう努力するのが方法です。ちょっと先生方、答えてくれないかな。

橋本昔から、「三つ子の魂百まで」という言葉がありましたね。何とか神話なんていう人もおりますけれども、今、これは脳生理学的にそれが実証されてまいりました。乳幼児期がほかと違うのは何があるかというと、一つは、おっぱいなんですね。その時期しかないのです。

今までは母乳といったら、栄養、免疫、病気しない、消化もいい、吸収もいい、そういうことで、ミルクじゃなくて母乳、母乳と言っていたんですね。今はそんなことだけではなく、あったかい、優しい心を持つ子どもに育てようということで、母乳育児というのが叫ばれているわけです。

だから、母乳とミルクの違いは、ゴム乳首ではなくて、お母さんの乳首なんだよということです。これも生理学的に、前川先生が言われた愛着の形成に関係するということが、証明されてきたのです。赤ちゃんが乳首を吸いますと、吸われることによって、オキシトシン(愛情ホルモン)がわいてきて、それがお母さんの母性中枢を刺激して、子どもを産んだ女性を母親に変えるということが生理学的にわかってきたわけです。なお感動することは、こんな生理学や科学がまだなかった時代に、昔の人はそれをちゃんとわかっていたんです。字を見たらよくわかりますね。「女」という字があります。それに点々を入れると「母」という字になります。昔の人の経験とか文化というのは、科学より先にちゃんとしたものを見ているんですね。科学は後でついてくる。今、そういう状況がいっぱいあります。

ですから、乳児期といったら、本当に母乳育児というのはほかにはない時期です。それによって、抱いて、さすって、お母さんにも赤ちゃんにもオキシトシンが出る。お互いに愛情がわいてくる。これがまさに母子の〝基本的信頼感〟の原点となるわけですが、これが、愛着構築期の非常に大きなポイントのひとつといえます。