保育所・幼稚園における「育てにくさ」への対応(6)

保育の中で見られる育てにくさというのは、実は段階がありまして、最初の段階はやはり、「あの子、気になるね」という話から始まり、次に、「どうしてなんだろう」「何でなんだろう」というふうに、理解できないというところになります。次に、「心配だな。もしかすると…」という、いわゆる病気かな、障害かな、または家庭環境に何か問題があるんじゃないかなというふうになるわけです。

4段階目に、何かかかわってみて、ほかのお子さんとは違うかかわり方をしてみようというふうにしてかかわるわけですが、なかなか対応が難しい。そこで、保育に悩むとか、または逆に過剰な対応になってしまう。しつこく怒ったり、指導したりということになりがちになってしまう。または、「ちょっとあの子は難しいから、かかわらないで消極的な対応にしましょう」というふうになってしまう保育者もいるかもしれません。

気になる行動の、遅れ・偏り・歪み。遅れとか偏りという言葉はよく使われますが、実際は、遅れ・偏り・歪みというのは、言葉の意味がちょっとずつ違うんですね。「遅れ」というのは、全般的に基本的なスキル、いろんな行動の獲得が遅れているということでして、実際はやはり時間をかけて教えていかなくてはいけないわけです。全般的にゆっくりの発達ですから、ゆっくりと教えていく。

「偏り」というのは、ある部分は獲得しているわけです。だから長所もあるわけです。でも、ある部分はまだ未熟な面がある。そういうでこぼこがあるわけですから、では、どうしたらいいか。通常は、未熟な部分にばかり目を向けて、そこにアプローチして、「これ、できないんだから、できるようにしていこうね」というふうなやり方が当然ではないかと思われていたのですけれども、実は最近の子たちは、うまくないところばかりに目が行って、やろうね、やろうねというと、なかなかうまくやってくれない。

どちらかというと、長所のほうを活用して、より一層伸ばしていこう。「これは上手だから、もっと上手になろうね」というふうにすると、本人も、自己達成感、自己効能感というのが高まりまして、それによって未熟な面も、「じゃあ、ちょっとだったらやってみようかな」「我慢してみようかな」というふうになることが影響すると言われています。