保育園・幼稚園における感染症対策(1)

保育園、幼稚園における感染症対策については、抵抗力が弱く、身体の機能が未熟である乳幼児の特性を踏まえ、感染症に対する正しい知識や情報に基づいて、感染予防のための適切な対応が必要とされます。例えば、園内ではインフルエンザウイルスやノロウイルスなどの集団感染がしばしば発生しますが、園児がこれらの感染症に罹った場合、自身はほぼ症状が消失した状態となった後でもウイルスを排出していることがあるため、症状が回復してから登園した場合でも、病原体を周りの人にうつしてしまう可能性があります。また、園内で流行する多くの感染症は、典型的な症状を呈して医師から診断された園児だけではなく、たとえ感染していても全く症状のない不顕性感染例や、症状が軽微であるために医療機関受診にまでは至らない軽症例も少なからず存在しており、全く認識のないまま病原体を排出している可能性があります。これは、園児だけではなく職員にも同様のことが言えます。ですから、鼻汁などの分泌物や下痢便などは病原体を含んでいるものとみなし、その処理には十分気を付け、手洗いをこまめにする必要があります。年長児や職員に咳がある場合は「咳エチケット」を守ることが大切です。⑴咳やくしゃみを人に向けて発しない、⑵咳がでる時はできるだけマスクをしておく、⑶マスクがなくて咳やくしゃみが出そうになったらハンカチやティッシュ等で口を覆う、⑷少量であっても飛沫やくしゃみを素手で受け止めた場合はすぐに手を洗う、の4点です。これらにより、流行を完全に防ぐことは出来ないかもしれませんが、流行を最小限に食い止めることができます。年少児の場合も、可能であればマスクを着用してもらい、感染症が重篤化するリスクが高い乳児には接触しないようにします。1歳未満の乳児の場合は、同じクラスの子どもたちは皆リスクが高いので、咳や鼻汁の症状が軽くなるまで、登園を控えてもらいます。

多くの病原体は、罹った者に症状が出るより前から周囲に排出されるため、発症した後に患者隔離などによる感染拡大防止策を取っても完全な防止は困難です。したがって、病原体に有効なワクチンがあるのであれば、集団生活に入る前にワクチンを接種しておくのが最も有効な予防手段になります。