予防接種(3)

水痘:水痘は感染力が強く、空気感染するため、発症した者を隔離しても流行を止めることは出来ません。健常者が罹患すると、通常は重篤にならずに済みますが、時に水疱に細菌が感染してしまったり、脳炎や脳症等の合併症を起こしたりすることがあります。免疫不全者が水痘に罹患すると重篤になりやすく、免疫不全状態にある児の多い小児病棟などで流行すると、時には病棟を閉鎖しなければならない事態に陥ることがあります。保育園、幼稚園でも、一旦流行がおこると、感受性のある(免疫のない)児がいる限り流行が持続することになりかねません。水痘ワクチンは1987年にわが国で開発されましたが、長らく任意接種ワクチンであったため接種率があまり高くありませんでした。2014年10月に水痘ワクチンがやっと定期接種化され、生後12月から生後36月に至るまでの間に、3か月以上の間隔をあけて2回皮下接種することとなりました。生後12月に達したらなるべく早く初回接種を行い、初回接種後6か月の間隔をおいて追加接種を行うことが勧められており、これにより適切な時期に十分な免疫が得られることになります。国立感染症研究所感染症疫学センターの発生動向調査によると、定期接種化後、定点あたりの水痘報告者数は1/2~1/4に減少しています(図2)。高い接種率が維持されれば、今後の水痘は、限局した地域における小さな流行になると思われます。しかし、これまでは、免疫のない人(水痘に罹ったことのない人、あるいは水痘ワクチンを接種していない人)のほぼすべてが水痘に罹患していましたが、これから水痘の流行が小さくなると、免疫のない(水痘ワクチンを接種せずにいて水痘にも罹らない)まま成人に達する人が出てくる可能性があります。麻疹や風疹で問題になっているように、感受性者の多い年代が存在すると、その年齢層が核になって水痘の地域的流行が繰り返される可能性があります。定期接種の接種率を高く維持することが重要ですが、定期接種化される以前の世代の感受性者をどのように減らすかが今後の課題です。

図2 水痘の定点あたりの報告数