設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(11)

質問者食物アレルギーの子どもさんで、卵アレルギーの子どもさんが0歳のときから入られましたが、そのときはアトピーのようにひどい症状があったということで、軟膏とかを預かって、保育所でも、ひどいときは体を拭いてから軟膏を全体に塗るという形にしていました。今、食物アレルギーのほうも除去食がなくなった状態で、前からずっとしてもらっているから、軟膏は引き続き体を拭いて塗ってほしいというようなケースになってきています。年齢が上がるにしたがってアトピーのほうも治まってくるというのもあるし、こちらのほうも人数が増えてくると厳しいものが出てくるので、どの程度になったときに声をかけて受け入れてもらうのがいいのかなと思いまして。今塗っているのがプロペトなので、ワセリンしか塗っていないんです。最初のころは、家でも朝夕塗っています。昼も、塗るときには体を拭いてくださいみたいな形で持って来られていたので、その辺がわかれば、ありがたいかと思います。

伊藤そろそろおうちだけで塗っていただくということでもいいのではないかと思います。体を拭く、みんなからそういう要求があったらできるかとなど、なかなか難しい問題を含んでいると思います。園で行うのはなかなか難しくなってきましたということで、ご家族に現状をお伝えいただく。プロペトには治す作用はありませんのでお昼に塗らなかったからすごく悪くなるということもないはずだと思います。もしそれでコントロールがうまくいかないようでしたら、むしろ、きちんとステロイドを使うとか、ほかの軟膏を使うとか、治すということに主眼を置いていただくのがいい時期に来ているのではないかと思います。

吉岡亀田先生、どうぞ。

亀田大変重要な点をご質問いただいたと思います。食物アレルギーと少し絡めてお話をしたいのですけれども、食物アレルギーも、伊藤先生がおっしゃったように、1年間たったら随分と食べられるものが増えてくるわけですから、その段階で生活管理指導表をもう一回出し直しをするということがございます。この方針でやっていくというのはこの1年間に限ったことで、これから1年間はこういう形でやっていきましょうということを、契約ではないですけれども、しっかりとその中で意識をして、具体的に口に出して、本当に必要であったら、文書化して置いておかれるということが重要なのではないかと思います。

軟膏、特にステロイドなり何なり薬物を使うという場合には、これは治療に当たりますので、先ほど伊藤先生がおっしゃったように、基本的には園でされるということはほとんど必要ないはずです。保湿だけという形になってくるわけですけれども、その保湿もどういう状況で必要なのかということがたぶん出てこようかと思います。よっぽど必要なお子さんというのが、皆さんの中であれば、それはせざるを得ないかもしれませんが、恐らくそう多くはないと思います。ですから、「1 年ごとに見直しをしていきます。今年やっているから来年も同じようにするということではないですよ」ということは、最初の段階で、しっかりと親御さんとの間で共通理解をしておかれるというのが大変重要ではないかと思います。

吉岡適切なご回答をいただいてありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

まだまだ聞きたいことはあるけれども、というところかもしれません。時間も押し詰まってまいりましたので、まとめに入りたいと思います。

今回、私ども母子健康協会が設立80周年の記念としてシンポジウムを初めて大阪でやらせていただきました。テーマも、我々のほうで決めたテーマでございましたけれども、たくさんの先生方に参加いただき、現場で困っておられるという質問をたくさんいただきました。また、我々からも、小児科医として、必要なことについてのメッセージをお送りすることができたかなと思います。

レジメも、この種のレジメとしては3 人でかなり根性を入れてつくりましたので、どこへ出しても恥ずかしくないような内容になっているかと思います。ぜひ、お帰りになって、先生方ご自身も、また、ある種の伝達講習としてほかの方々にもこれを見ていただいて、勉強いただくことでいかがかと思います。協会では機関誌『ふたば』の次号に、特集という形でこれを掲載することを計画しておりますので、ぜひ、それも見ていただきたいと思います。

最後になりますけれども、今日のように、医療と保育、あるいは保育園・幼稚園の管理を考えるときに最も大事なことは、子どもの健康をいかに管理するか。できればそれを増進するかということかと思います。健康とは必ずしも体だけではなく、心も知恵も、そして社会的にも大事ですから、すべての面で健康でありたいと思っております。

私の講演で既に申し上げましたが、事故やけが、そして、いろいろな病気は起こっていますし、また、起こるかもしれません。そういうときに大事なことは、子どもを慈しむ心を持っている皆さん方ですし、園のはずですから、まず子ども達の健康増進を一番大事にするということを基本に置いていただきたいと思います。その上で、やらなければならないことは、きちっと法に則り、あるいは常識に則り、やっていただくことだと思います。そのためのいろんな資源というのは、病院であり、診療所であり、医師であり、看護師であり、救急車であります。これをうまく使わないという手はないわけです。

ですから、普段から、いざというときにはこういうことが必要だということを、きちっとご相談いただいて、躊躇なく、例えば、消防署に、あるいは警察署に連絡するのが大切です。いちいち理事長、園長に相談をしないとできないというのでは間に合わないのです。現場の判断で臨機応変に救急車を呼ぶ。救急車を呼んで怒られることなんてあるでしょうか? 救急隊員が、「何で呼んだ?」と言うでしょうか? 先生方が呼ばなければいけないと思ったものは呼ぶんです。それさえしてもらったら、まずは一番最初の責任は果たしたことになります。

ただし、その次の対応は、お互いに子どもの健康の増進を願ってやっているということであれば、すべて解決するはずです。園の責任者の方々に申し上げます。情報は必要なものについては開示するという前提が大切です。行政に対しても、家族に対しても、周辺の方々に対しても、必要なことは開示をする。それを躊躇したり、隠蔽するなんてことは認められません。あり得ません。それさえ守られれば、どんなところに出ても大丈夫です。事故が起こってそれが死につながる、大きな後遺症につながるからといって、これが犯罪というわけではないのです。皆さん方が善意を持って行った中でも、事故やけがは生じうるのです。ゼロではないのです。だから、ぜひ、ある種の自信を持ってください。やれることはちゃんとやっているのだから、何も心配はない、怖いことなんかないと考え、正々堂々とおっしゃることはおっしゃり、開示するところは開示する。その気持ちを持ち続けていただければ、子どもたちは元気で笑顔で家に帰れると思います。

今日は長時間にわたりお付き合いをいただきありがとうございました。特にお二人の先生方には、お忙しい中をご講演いただき、ありがとうございました。また、たくさんの方々からご質問をいただきましたことを、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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