設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(9)

吉岡今の先生の説明に関係のあるところ、また食物アレルギー全般についても、ご質問がある方は手を挙げてください。

質問者アレルギーに関してですが、私は1 歳児のクラスを保育園で担当しておりまして、そこで卵アレルギーの子がいます。その子が大変アトピーもひどくて、特に最近乾燥する季節になりまして、非常に掻きむしりがひどくなっています。私の園は薬をお受けしていないので、園で保湿をしてあげたりすることができない。お母さんとも相談しまして、なるべく冷やしたりという処置はするのですけれども、普段の保育にも支障があるぐらい何にも集中ができずに、常に掻いている状態が続いています。最近、薬が変わっているのですが、それでちょっと落ち着いたかなと思っても、また掻きむしりがひどくなっていまして、そういう場合は、どういう対処を園でできるのか。その子は長時間なので、結構長い時間園にいますので、どういうふうな対応をしたらいいかお聞きしたくて。個別なケースですが、お願いします。

伊藤今のご質問は、アトピー性皮膚炎のある方ということだろうと思いますけれども、本当にそれだけ繰り返している方でしたら、一度、食物アレルギーも含めまして、今の時点でもう一度、きちんとした診断をつけていただくことが必要と考えます。軟膏は、朝、きちんと塗ってきていただいて、夜、入浴後の清潔な状態で塗るという形をとるのでよいと思います。

私も患者さんに、必ずしも軟膏を園で塗っていただくことはお勧めしておりません。といいますのは、きれいな状態で塗っていただけるかどうか、もしそこに感染があったときに広げてしまわないか、そういうことを園で判断していただくのは、少し難しいかと思います。例えば緊急時の投薬、それこそ抗ヒスタミン薬、そういうものはぜひ園でしていただかないといけないとは思いますけれども、軟膏に関しては、そのように考えております。

また、冬ですと、どうしても暖房がしっかりして暑いということもあります。もう一度、主治医によく診ていただくということが大事です。お洗濯のすすぎがうまくいっていないなど、冬独特の皮膚の悪化要因がありますので、よく主治医に相談していただき、場合によっては、皮膚科の観点から見直しをしていただくのもよいかもしれません。朝から晩までかゆいのでは治療の見直しも必要と思います。

もう一つのご質問は、食事に関しての参考書についてですが、『乳幼児の食物アレルギー』(診断と治療社、2012年)にも、かなり抗原のことが書いてあります。より詳しくは『食物アレルギーのための食事と治療用レシピ』(診断と治療社、2014年)。ご参考になればと思います。

吉岡今日は、アレルギーの中で食物アレルギーにできるだけ特化しましたが、もちろん、アトピー性皮膚炎やその他のアレルギーと無関係ではありません。したがって、アトピーについては、もし当協会がまた今回のようなシンポジウムをやるというのであれば、ぜひそういう機会に取り上げるといいと思います。しかし、今日は食物アレルギーと関連のある範囲にとどめておきたいと思います。

と申しますのは、アトピー性皮膚炎については、医療界、特に小児科医、皮膚科医の中にも一部いろんな意見がある状況です。それを受けて、マスコミがそれをいろいろな風に増幅した結果、お父さんやお母さんにおいては、非常に強い抵抗感や、嫌がるとか、強い依存があったりすることがありますので、園としてもなかなかその対応は難しかろうと考えます。まして、こういう機会にポロッと我々が申し上げたことで、何か大きな衝撃を与えてしまうようなことは避けたいというのが本旨でございます。アトピーはまたの機会にしていただきたいと思っております。

ほかに、食物アレルギーで伊藤先生にご質問、コメントはいかがでしょうか。あるいは、自分のところでは、こういうことをやっていてとてもうまくいっているとか、コミュニケーションを含めてうまくいっているという方があれば、ご披露いただくとうれしいですが。みんな苦労されているから、「うちの秘伝やから、よそには教えたらへんわ」と思うてはるのか…。

それでは、もう少し追加があったと思いますので、亀田先生のほうに移ります。

亀田追加のご質問、あるいは、先ほど時間がなくてお話をしなかった部分がありますので、もう少し追加をさせていただきたいと思います。

一つは、消毒に関するご質問をいただきました。「おもちゃ消毒をした後、薬剤が乾燥すると、乳児が触れたりなめたりしても大丈夫であろうか」というご質問です。これは二つございまして、一つは、アルコール消毒をする場合があろうかと思いますが、この場合はさほど心配をする必要はないかと思います。

もう一つ、次亜塩素酸ナトリウムのほうですが、レジメにも書いてありますが、一たんそれで拭き取った後、もう一度水拭きをするという形で記載してあると思います。ということは、子どもたちがいるときには、それを使った消毒というのは実際にはできないということですし、また、そういう場に子どもたちがいること自体が問題であるということになろうかと思います。消毒に関しましては、通常は水拭きで十分だとは思いますが、それに加えて、感染症が発生した場合にはせめてアルコール消毒をしていただく。そして、便などでの汚染があった場合には、次亜塩素酸ナトリウムの(特にノロと診断された場合ですが)消毒が必要である。この場合は、子どもたちをそこに近づけないとご理解をいただければよろしいかと思います。

複数のご質問で、恐らくこれは似たようなものではないかと思いますが、皆さん、ヒトメタニューモウイルスというのを聞かれたことはありますか。余り聞いたことがないですよね。ボカウイルスというのも聞かれたことがないと思います。今朝、朝日放送のモーニング何とかを見ていましたら、新種の深海魚が発見されたというニュースがありましたけれども、ウイルスも実は同じでして、すべてがわかっているかというと、そういうわけではないのです。

研究が進んできますと、どんどん新たなウイルスがわかってきたりします。そういう中には、エイズであるとか、最近であればエボラ出血熱のように、本当に一気に人の命を奪ってしまうウイルスもあろうかと思いますけれども、一般の我々の生活の中に比較的密着する形で存在するウイルスでも、まだわかっていないものが少なからずある。あるいは、日常の検査の中で、それを検出できないということは、同様に少なからずあるというふうにご理解をいただきたいと思います。

感染症で重要なのは、そういうものを我々がどんどん研究をして、より感染を広げないということを、今、一生懸命やっているところではありますけれども、診断名がどうかではなく、その症状に対してどのように対応するかということが、一番重要であるというふうにご理解いただきたいと思います。例えば呼吸器感染症であったら、やはり咳をする、くしゃみをする、これは感染の原因になるということを理解していただけるとよろしいかと思いますし、下痢というのは、その対処を誤ると一気に広がってしまう可能性はある。そこに診断というのは、変な言い方ですけれども、対策という観点からは二の次、三の次というところも言えなくはないということを少し意識していただきますと、変に診断にこだわるということがなくなろうかと思いますので、このようにお考えいただくとよろしいかと思います。

もちろん、十分わかっていないというウイルスは、頻度は少ないということが一般的ですから、こんなことも知らなければいけない、あんなことも知らなければいけないというふうに強く認識をなさる必要はないと思います。それがもっとはっきりしてきましたならば、また、出席停止事由であるかと、何らかの形で皆様のもとに、そういう報告あるいは通達があろうかと思いますので、そこまで待っていただけるとよろしいかと思います。

あと、幾つか、個別の感染症についてのご質問をいただきました。ヘルペスについてということでご質問をいただきましたが、初感染で特に口の中、歯肉がバーッと腫れたりすることがありますけれども、それ以降どうなるかと言いますと、ヘルペスは体の中にずっと住み着くわけです。体調が悪くなってくるとまたヒョッと出てきて、例えば口角にヘルペスができたりするということがあります。

初感染を予防するという観点から言いますと、例えば直接触れるということをできるだけ避けることをお考えいただけるとよろしいかと思います。100% 避けるというのは、ヘルペスはなかなか難しいものでもございますので、目くじらを立て過ぎることのないように、逆に気をつけていただけるとよろしいかと思います。

溶連菌感染症についてのご質問もいただきました。「何回もかかる子もいるけれども」ということですが、溶連菌は1回の感染だけではなく、複数回かかることはある程度よく知られたことでございますので、1回だけではなく、2回、3回かかるということは、あっておかしくはないというふうにご理解ください。

ちなみに、溶連菌は、今までお話をしてきましたウイルスとは違いまして、細菌、バクテリアと言われるもので、これは顕微鏡でのぞくとちゃんと姿が見えるという大きさのものです。最近、溶連菌感染症は、抗生剤をしっかりと使うことによって、その後のさまざまな疾患、例えば腎炎、リュウマチ熱、心臓弁膜症といったようなものを予防することができるようになっておりますので、これについては、我々医療者にお任せいただけるとよろしいかと思います。

最後に、A型肝炎ワクチンについてのご質問をいただきましたが、これは、小児におきましては推奨ワクチンには入っていないかと思います。恐らく、海外へ行くときに、行かれる場所によっては、打っておきましょうということが推奨されることもあろうかと思いますけれども、日常の園の生活において、A型肝炎ワクチンを受ける必要は必ずしも高くはない。むしろ、そんなに推奨するようなものではないということは言えるのではないかと思います。A 型肝炎の感染源として、生ガキなどがあるわけですが、これを保育所で出しているところはないですね。ですから、そういう点を含めて、これは余り気にする必要のないものだとご理解をいただけるとよろしいかと思います。

ほかにもさまざまなご質問をいただいておりますが、感染症というのは、このウイルスであったらこんな症状しか出ないということはないわけです。このウイルスでこういう症状は一般的に出るけれども、それが出ない場合もありますし、反対に、それを超えてさらにひどくなる場合もあります。非常に珍しい症状を来す場合もありますので、この辺を十把一絡げに「こうでないといけない」という理解ではなく、大体こういう形で、主たる症状というのはそろっている、なるほどAウイルスなんだ、Bウイルスなんだというご理解をいただき、柔軟な理解と対応をしていただけるとよろしいかと思います。

以上です。

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