設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(8)

伊藤それでは、食物アレルギーについてのご質問にお答えします。まず、答えやすいほうからですが、表示につきましてご質問をいただきました。「卵殻カルシウムと乳化剤というのはどういうものか」ということです。卵殻カルシウムというのは文字通り卵の殻で卵タンパク質が少量検出できます。ただ、ラムネなど小さいお菓子に使われているので、全量として少量です。ですから、もし、おやつにラムネ菓子を使いたい場合には、これを使ってもいいかどうか、主治医に聞いてくださいということを言っていただきますと、私どももそういう質問を受けたら、患者さんの重症度に応じてオーケーですとか、まだちょっと待っておきましょうとか、いろいろお答えをしております。

乳化剤には、乳という文字があるので牛乳アレルギーの方はやめようと思われることが多いのですが、乳化剤は大豆の油か卵黄です。卵黄を使うときは、乳化剤(卵由来)と書いてありますし、大豆の場合は、大豆は表示義務がありませんので、書いていない場合と、「大豆由来」と書いてある場合の両方ありますが、いずれも牛乳とは無関係です。

ついでに、もう少し紛らわしいものを言っておきますと、乳糖は糖質ですが、製造のときに乳タンパク質が少量入ります。インスタントの調味料などによく使われていますが、通常は大量ではありませんので、よほどの重症でない限りは使えます。これも、インスタントの調味料などを使いたいと思われるときには、患者さんに個々にご確認いただいて、主治医と相談してもらうということがいいかと思います。

それから、乳酸カルシウムとか乳酸ナトリウム、これも乳という字がついていますけれども、化学物質で、全く牛乳アレルギーとは関係ありません。

小麦で紛らわしいものとして麦芽糖というのがあります。やはりよくご質問を受けますが、ほとんどはトウモロコシでん粉です。もし小麦のでん粉を使っている場合は「小麦由来」と書いてあります。

そういう約束事には、まだいろいろありますが、消費者庁のホームページから表示についてのQ&Aを見られたら、いろいろ載っております。卵、牛乳、小麦など特定原材料の7 品目は、「〇〇由来」と通常は書いてあると思っていただいていいと思います。表示をよく見て参考にしていただくのがいいかと思います。

検査について、二つほどご質問をいただいています。

一つは、「アトピー性皮膚炎だったら、食物アレルギーについても検査を受けたほうがいいのかどうか」というご質問だと理解しました。

まず、湿疹が強い場合、痛そうだからといって石鹸で洗えていない、ステロイド軟膏は嫌だとおっしゃっている方もいらっしゃいます。一旦できた湿疹は、ステロイド軟膏しか効きません。一旦、標準的な治療により治しますと、その後は、正しいスキンケア、保湿が有効な場合もあります。逆に保湿し過ぎて汗で悪くなる人、いろいろあります。そういう基本的な治療や悪化要因の回避を行っても、ステロイド軟膏を塗ったときにだけよくなって、やめたらじきにぶり返す、非常にかゆみが強い湿疹が続く赤ちゃんに、母乳中に僅かに分泌されるお母様の食べられた卵や牛乳などのタンパク質が関係して湿疹をおこしていることがあります。そういう場合には、一度、小児科のアレルギー専門医を受診するということをお勧めいただくのがいいかと思います。血液検査だけではなく、除去試験、経母乳負荷試験により診断します。ただ、食物アレルギーが関与するのは乳幼児のアトピー性皮膚炎の中の3割程度です。決して全例ではありません。

それから、「検査のタイミング」ということですが、検査は、赤ちゃんのときからできます。私のところでは食物アレルギーを疑ったときには必ず行います。原因抗原の診断時には生後3〜4ヵ月までは皮膚テストと血液検査を併用して感作の状態(特異的IgE抗体の存在)をみて除去・負荷試験と合わせて原因抗原の診断と治療を行います。湿疹の原因として除去していた食物を離乳食として与えるときには、抗体の高さによりまして、与え方を決めます。そのときにも、一番参考になる検査です。陽性だから絶対にやめなければいけないのでも万能でもないのですけれども、参考になる検査を見た上で、今、負荷試験をすべきかどうかとか、などを決定します。特に保育園、幼稚園で過ごされる時期は、食物アレルギーが治りやすい時期です。やめたままにならないようにすることが大切です。定期的に年に少なくとも1回、京都ですと3歳まで乳児医療がきいていますから、大体半年に1回、経過を見ていくということをしております。

ご質問は、「4、5歳で卵アレルギーが治っているのかどうか」ということですが、これも抗体が陽性というだけではわかりませんので、専門医のいる医療機関で、現在、食べていらっしゃるものなどをチェックした上で、必要に応じて負荷試験をしていただいて、摂取できるということになったら除去を解除します。いずれにしましてもきちんとした検査を受けられるのがいいと思います。

もう一つご質問がありました。これはなかなか難しい質問です。重症のアレルギーの患者さんがいらっしゃる。どこの園も一人、二人は抱えていらっしゃるのではないかと思いますけれども、みんなと一緒に食べるということを園ではモットーにしていらっしゃると。非常にいいことだと思いますが、ほかの保護者の方が、アレルギーの子のためにこれもこの園では使わなくなったとか、そういうことを言われるということを、アレルギーのお子さんの保護者の方がすごく気にされるというようなご質問かと思います。

実際にそういうことは起こりうるかと思いますけれども、ある程度は理解を求めるとか、アレルギーの子がいるからというよりも、できるだけさりげなくというのがいいかと思います。大変ご苦労なさっているようでして、大豆のアレルギーがあるからということで、お正月のお餅つきには、きな粉をペースト状にされている。豆まきも小袋にしてということで、大変だとは思いますけれども、そういうことも場合によっては必要になってくると思います。

そして、そのお子さんも定期的に必ず病院を受診していただいて、すべてのものがだめな状態が続いているのかどうかということを診ていただいて、少しでも解除をしていただくという方向で診療を受けていただくのがいいのではないかと思います。

この点につきまして、何かご質問があればと思います。

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