設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(4)

次に、総論としてのお話になろうかと思います。総論と言いましても、それこそいろいろなお話があるわけですけれども、一つご質問をいただきましたのは、「水疱瘡など怪しい発疹を発見したとき、その時点で隔離したほうがよいか」というご質問をいただいております。これは、ぜひそのようにしていただくことをお勧めします。隔離というのは子どもにとってはとてもつらいことのように思われるところもあろうかと思いますし、また、園としてそういったことが不可能であるという設備上の問題というのもあろうかと思いますが、園の中において感染を拡大させないための一番の方策は、やはり隔離である。ほかのお子さんと接しないようにするということは大変重要なことですので、これについても、ぜひ励行していただくことをお勧めします。

もちろん感染対策として、そのお子さんがどんなワクチンを打っておられるのかという情報はぜひ得ていただきたいと思います。一番要注意なのは、例えば水疱瘡であったら、水疱瘡のワクチンを打っていないお子さんと接触するというのが、一番具合が悪いわけですから、そのような形での対応というのが重要になってこようかと思います。

同じようなご意見、ご質問かとは思いますけれども、季節ごとに流行する感染症対策として、複数人の患者さんが出たときに、「クラスごとに分けて保育をするという対策を取っている」というふうなお話をいただきました。これは、今の個人に対しての隔離に対して、次は小集団での隔離、ほかのクラスへ蔓延させないということを考えると、非常に適切な対応であろうかと思います。やはりクラスごとに分けての対応というのは、ぜひ意識して感染を広げないという観点では、やっていただけるといいのかなと思っております。

いずれにしましても、感染対策として日常の中で重要なのは、手洗い、うがい、こういったものです。それぞれの感染症に対して、例えばおもちゃ、手すり、そういった子どもが触れるところに対する消毒であるというお話は、先ほどさせていただいたとおりですので、ぜひ、そのあたりを含めてしていただければというふうに思います。

それから、「うがいのかわりにお茶を飲むという形でもいいのか」ということです。いわゆる気道感染、呼吸器感染に関しては、もちろんこれはこれで構わないという形になりますが、胃腸炎、ノロウイルスであるとか、ロタウイルスであるとか、それは胃腸のほうにウイルスが入ってそこで悪さをするわけですから、飲んでおさまるかというと、そういうわけではないということになります。どの感染症を念頭に置いてどういう対応をするかということはやはり考えていかねばなりませんので、うがい以外にお茶を飲んでオーケーというのは、あくまで呼吸器の感染症である。のどのところに着いたウイルスを洗い流すということでご理解をいただければというふうに思います。

もう一つ、ちょっと内容が変わりますけれども、感染症などにお子さんがかかったとき、病院によって、登園許可書の内容がさまざまであるということで、戸惑うというご意見もいただきました。実は、食物アレルギーなども同じような意見をいただくところですけれども、皆さんにとって必要な内容は何かというと、このお子さんは園に来て感染を拡大させる可能性がないのかどうかというところに尽きるかと思いますので、細かいところは余り意識せずに、その部分については見ていただけるといいかと思います。

ちなみに、ノロウイルス、ロタウイルスはウイルス性胃腸炎と言う場合もあります。また感染性腸炎とすると細菌性胃腸炎が含まれたりすることもあって、確かに言葉としては曖昧で、ドクターの側としても気をつけねばならないことではありますが、これらの言葉がすべて間違っているかというと、そういうわけでもございません。まちまちではあるけれども、決して誤った情報が皆さんのもとに伝わっているわけではないということを、ご理解いただきたいと思います。

次に、「感染症によくかかる子どもとなかなかかかりにくい子どもがいるけれども、なぜか」というご質問をいただきました。ごもっともなご質問で、私たちもそれは時々なぜだろうと思うときがあります。肺炎を繰り返す子は繰り返しますし、一方で、全然かからないという子はかからないということがあります。正確にそれら原因の詳細を把握はできておりませんけれども、例えば感染に対する免疫力というのは、かかればかかるほど強くなっていくというお話はしましたが、一方で、成熟の度合いというのは子どもたち一人ひとり違ったりします。いつの時期にかかるかということによっても変わってきますし、軽い免疫の強さ、弱さというのは、子どもたち一人ひとり持っているものが違うということが考えられますので、こういった個体差というのは起こってきておかしくはないということもご理解いただきたいと思います。

さらに、皆さんが、この子はちょっとおかしいんじゃないか、風邪を引いているんじゃないか、感染症じゃないかというときに、おうちの方にお話をしても、なかなか病院に連れていってもらえないというご質問もいただきました。どうすればいいかということですが、これは園のほうとしてはつらいかもしれませんが、最終的に医療機関にかかるというのはおうちの方の責任で受診を決定されるわけです。おうちのさまざまな事情も含めますと、これぐらいでようやっと病院にかかる、そんな程度なのかというふうに思われるかもしれませんが、それはそれで飲まざるをえないところもあろうと思います。皆様としては、あるいは我々としてもそうですけれども、どうなんだろうか、ちょっと心配なんだけれどもという情報は、既に渡しているわけですから、一たんそちらのほうに振ってはおりますので、この時点で十分、役割としては果たしているというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。

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