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設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

季節と感染症 -幼稚園・保育園で流行する病気とその対策-(2)

大阪府立呼吸器・アレルギーセンター小児科部長 亀田 誠先生

今日は、冬に流行する感染症4つと夏に流行する感染症を2つお話をしたいと思います。まず、冬に流行する感染症で呼吸器の感染症、インフルエンザとRSについてお話をしたいと思います。

インフルエンザは今年とても流行しております。幸いなことに、そんなに重症化することはないようです。皆さんも経験があろうかと思いますが、一たん流行が始まると本当に短期間に急速に拡大します。症状としては、いわゆる風邪に加えて全身の症状が強いというのが特徴です。それは、頭痛、関節痛、あるいは倦怠感、小さいお子さんであったら「ぐったり感」というふうな言い方ができるかもしれませんけれども、そういったものが大きな特徴になろうかと思います。病気そのものは、一般には3日〜5日程度で改善します。これは体が発熱を来す期間ですが発熱によってウイルスを駆逐しているという意味があり、大体これぐらいでウイルスをやっつけることができると思っていただいてよろしいかと思います。そして、時に重篤な合併症を合併することもあるということです。

インフルエンザウイルスは、ご承知のように、迅速診断、鼻の中を綿棒でこすって、それを用いて診断をつけることができます。残念ながら100%ということではありませんが、かなりしっかりとした確率で結果を得ることができますので、その結果も含めて、感染対策がとれるようになってきております。また、患者さんに対して適切な治療を行うことができるようになっております。

ただ、治療で一番重要なのは、安静、休養。十分な睡眠と水分摂取にあるということは、ぜひ忘れないでください。これに加えて抗インフルエンザ薬などの使用ということになるわけです。子供の場合、ご承知のように、インフルエンザは異常行動を起こすおそれがあるということが指摘されております。特に発症から2日間は要注意ということで、この間、異常行動でけがなどを起こさないようにということは、十分な注意が必要であるということを覚えておいてください。

インフルエンザに対するお薬は、原則として発症から48時間以内に用いることになっております。これから先絶対に用いてはならないということではないのですが、細かいことは抜きにして、お薬の効き方として、48時間以降に投与してもさほど効果は期待できないということが、一般には言われております。48時間以内に用いることによって、発熱期間を短縮し、そしてウイルスの排出量を減少させることができるということが言われています。

発症したら、このような治療を行うわけですけれども、予防はどうしたらいいかということです。一つは、ワクチンが挙げられます。皆さんも打っておられるかと思います。しかし、非常に効果が高いかというと、そういうわけでもありませんので、それ以外の対策が非常に重要になってきます。

その対策として、まず重要なのが咳エチケットです。主な感染経路というのが、感染者が咳やくしゃみをする際に、口から発生されるしぶきが、鼻から吸い込まれたり口の中に入って粘膜にくっつくことで感染は成立しますので、飛び散らないように感染者がマスクをするということが、実は一番重要なわけです。しかし、感染されていない方が予防のためにマスクをして悪いかというと、決してそうではないです。直接バーンと鼻や口に入ってくるのを抑えることができるわけですから、これは確かに意味があります。

写真

マスクの正しいつけ方ですが、写真をご覧ください。

このつけ方は完璧です。鼻から顎までしっかり覆っておりますし、そして、左右の頬もしっかりと覆われています。これでマスクのサイズが適切であることが分かります。そして、マスクのところを見ていただきたいのですが、上と下を間違えていないのです。あるいは表と裏を間違えていない。何が表と裏かと言いますと、ひだが外側、外側に来て中に入り込むように上に行くというのが表側で、このことによって埃がたまらないようになるそうです。上下については、たいがい上にワイヤーが入っていますので、間違えることはないかと思いますけれども、そのあたりに気をつけていただくといいかと思います。

それから、外出後の手洗いは大変重要です。さらには、適度な湿度の保持ということです。これは局所も局所、のどの保湿・加湿ということを考えていただいたらいいし、さらに、そこに付着したウイルスを体の中に飲み込む、胃のほうに飲み込んでしまうという意味合いでも、うがいや水分をとるということは、重要であるということを覚えておいていただくとよろしいかと思います。

ワクチンの効果ですが、2割〜5割の発病防止効果が乳幼児ではあると言われております。しかも、それはワクチンを打って2週間程度たって、ようやっとこの程度の効果が出てくるということですので、非常に効果の高いワクチンかというと、そういうわけではないということも知っておかねばなりません。副作用につきましても、全くないわけではない。しかし、ワクチンというのは体に何らかの反応を起こさせるものですから、ないとおかしいわけです。これらがあるから怖いというわけでは決してないということは、同時に知っておいていただきたいと思います。副作用というのは、体が免疫をつくるために生じる一つの反応、というふうに解することもできるとご理解をいただきたいと思います。

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