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スマホ・ネットゲーム中毒(依存)―電子機器が子どもを取り囲む恐怖―

こども心身医療研究所・診療所 所長 大阪総合保育大学 名誉教授 冨田 和己先生

V 現実を厳しくみる

1. スマホの怖さ

大学生は授業中も机の上にスマホを置き、講義よりもそちらかの通信や情報に注意を向け、大学は掲示板でなくスマホでお知らせをしています。学校で禁止されている中高生はもちろん、日本人の多くは、ほんの少しでも時間があれば、歩きながら、駅で、車中と所かまわず忙しげに指先を動かし、家に帰れば深夜まで不要な情報を集め、無駄な通信をし、ゲームを会ったこともない者としています。先人の苦言はすべて現実になった以上の惨事を、特に子どもに引き起こしたのです。今や小学生までスマホをもち、母親は乳児をあやすのにスマホのアプリを使う時代になり、そのようなアプリを作る者がいる怖さです。乳幼児にスマホを見せれば、その画面や動きに好奇心が刺激され、直ぐに扱い方を習得するので、これを「賢い!」と「親ばか」で喜んでいては、子どもは将来、確実に中毒に突き進みます。私は毎日、スマホ中毒の子どもの治療を、親と共に模索していますが、絶望的な例が多く、まるで次元の異なる世界に住む者をみているような錯覚に陥ります。

2. 学童から大学生にまで忍び寄る怖さ

にもかかわらず、小学生からタブレットを使わせる勉強や、大学生はスマホを持たないと大学からの通知も届かない状況があるのです。10年余り前から幼稚園でパソコンを習わせるのを進歩的と思わせる風潮がありましたが、ここに落とし穴があったのです。最近はパソコンがタブレットになり、更に安易・便利になり、ますます子どもに簡便な勉強法を教え、大学生の卒論はコピペ(copy and pasteの略)の時代になってかなりになります。「メディア・リテラシー教育が必要」と言うなら、「電子機器を学生時代に使わせない教育」と私は考えます。電子機器の進歩による「利便性に伴う弊害」は、特に子どもに強く出て、彼らが成人になった時は考えるだけで怖くなります。


メディア・リテラシー教育: メディアの健全な利用の促進を図り、子どもが安全に安心してインターネットなどを利用できるようにする教育

3. 電子機器の具体的怖さ

具体的な電子機器による弊害の大きなものは「没頭する時間が長くなる」「自己規制が不可能になる」から「睡眠不足⇒朝起きられない⇒不登校⇒引きこもり」の順に子どもの社会性が失われていく道です。この状況を止めようとすると多くは暴力が出るので、親がひるんでしまうか、強行すると子どもに禁断症状が出ます。身体面への弊害は発光体による小さな画面による視力劣化・運動不足・自然光を浴びる時間の減少・睡眠不足を生じさせ、脳内の異常も少しずつ脳科学で明らかにされてきています。

ネットからの情報は断片的で、本の目次を見ただけのような知識に留まり、自ら考える知恵は絶対に生まれないのは、映像情報のところで述べたのと同じです。また、ネットゲームは深夜に活況を呈するので、多くの者は夜更かしが更に助長されていきます。隣国・韓国ではゲームセンターで80時間ネットゲームをしていた者がエコノミー症候群(血栓症)で死亡し、中国ではゲーム依存を注意した身重の妻を殺害した医師もいた(2)ようで、対岸の火事と言い切れません。

「中毒(依存症)」は昔からアルコールや薬物(麻薬)が有名ですが、それほど多くはなく、大人の病気でしたが、このスマホ・ネットゲーム中毒は子どもに出現し、数も比べものになりません。最近は精神科にネット外来も開設され始めていますが、「使用を制限する」と極めて当たり前の「できない指導」が行われていますから、簡単に治らないのです。私が診ている子どもの多くはこの中毒ですから、私も性格や育ち方、親の姿勢など多角的に考え、可能な限り指導しますが、多くは強硬手段以外ありません。それをほとんどの親ができないので、結果的に日々悪化・深刻化していきます。結論は子どもが中毒になる前の予防以外に適切な対策はないのです。

参考文献

  1. (1)渡辺京二:逝きし世の面影(平凡社ライブラリー)
  2. (2)橋元良明:調査から見た日本のネット依存の現状と特徴.「教育と医学」1月号(2015)
  3. (3)冨田和巳:小児心療内科読本-わたしの考える現代の子ども(医学書院)

※筆者の子育ての基本を詳しく知りたい方は(3)を参考にして欲しい。本書は専門書であるが、一般の方が読むことを想定して「心身症」「発達障碍」などと「子育て・家庭・教育・文化・歴史」を詳しく述べている。

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