第34回母子健康協会シンポジウム 「子どもたちの遊びと体づくり」
4.総合討議(1)

前川前半の講演に対してたくさんの質問が来たので、シンポジスト一同、感激しております。その感激をもとにして、これからお答えします。

参加者の中で、お子さんがいらっしゃる方は手を挙げ下さい。

ああ、うれしいですねえ。それで、こっちから質問があるのです。子どもが歩き始めるときに、危ないからと一々支えられた方、いますか? 歩き始めはボーンと尻もちつきます。それで、だんだん歩いているうちにうまくなるでしょう。遊びもそうなんです。子どもというのは、発達するために必ず挑戦して、危険を侵して自分のものにしていくのです。だから、子どもらしく遊ばせるには、ある程度そういうことを考えて、危険に挑戦して、かつ、怪我しないように育てなくてはいけないです。

ところが、今の親御さんたちは、怪我をすることを極端に恐れています。ですが、それをしないと、子どもの運動発達も、いろいろなことも発達しません。それを親御さんたちにいかに納得させるかということが、これからの討論の一つのテーマではないかと思います。

それでは、東間先生に来ている質問、一つか二つ、答えてください。

東間それでは、お寄せいただいた質問からお答えします。

アトランダムですけれども、まず読みます。「来年度について。0歳児クラスに、今からつくれて運動遊びができる手作り遊具はありますか?」

はい。0歳は、大きなこんなスロープ、こういうようなものが大体置いてありますね。それはそれでいいのですけれども、0歳児は、歩けるようになりますと可動遊具にとりつきます。例えば牛乳パックでも、L字型のもの。そうすると、ここにつかまって押しながら歩くんですね。そういうことがありますから、やはりあっていいと思います。後半になると大体歩けるようになります。そうしますと、牛乳パックでもいいし、ほかのものでも、例えば、世界文化社から出ている、『0・1・2歳児の手作り遊具』という本がありまして、それに36種類ぐらいの手作り遊具が載っております。これは、私のレジメの一番最後に載っております。

それから、園庭遊びですけれども、できれば0・1歳用ぐらいの砂場を別につくるということを、「エデュカーレ」で私は5月に発表しました。そうしましたら、とても反響が多くて、「砂場を別にしてみたい」というお話がいろいろあります。それは「エデュカーレ」の5月号に載っていますので、どなたか持っていらっしゃる方もおられるかと思いますが、ごらんになってみてください。

それで、例えば、今までの砂場の小さいシャベルで、ままごとという感覚ではないような気がします。だから私は、レンゲとか、スプーンとか、おしゃもじを買って持っていってあげたのね。そうしたら、0・1歳がとても喜んでそれを使うのですが、なんと4〜5歳の女の子がみんなそれを持っていっちゃった。皆さん、こういうものは100円ショップでいっぱい買えますから、どうぞ購入してあげてください。

運動遊びはゼロちゃんはぜひ必要です。ゼロちゃん組には意外と設置遊具があるんですけど、1〜2歳組になると、パタッと大きく遊ぶ物が部屋からなくなってしまう、そういう保育園が結構多いんです。そうではなく、やはり1、2歳も室内には大きい遊具を沢山入れてあげてください。

次に、可動遊具。「どのくらいの時間でつくれますか。また、片づけずに部屋にずっと出しておくものですか」。例えば、牛乳パック1個の中に新聞紙を22枚、畳んで入れます。その入れ方も何も私のホームページにも出ていますし、私の本にも出ております。例えば「4連パック」と言いまして、牛乳パックを4つ並べたものです。このくらいの大きさのもの。それから、4つを縦長につくったこのくらいのもの。子どもたちが遊ぶのですから、パッパッパッパッとつくっても、4つを1つにまとめてつくるのに2時間ぐらいはかかるような気がします。

実は公立の保育園の場合は、1、2、3月は0・1・2歳組の先生は少し手が空くから、何かつくってと言うんですけれども、今はぎりぎりいっぱいの人数でやっていらっしゃる民間の園が多くなっています。そうすると、民間の園の園長先生は計算なさるの。1日に保育士に1人1万円払ったとすると、その保育士は3つぐらいしかできない。そうしたら、1個3,330円、非常に高いと。

そうしたら、石川県の木工所さんが手を挙げたんですね。私のところなら1個1,000円台でつくりますと。上からダンボールをやって、とてもやわらかくつくったの。「アルボカンパニー」さんというところも検索してみてください。そこで聞いてみてください。どっちが安いかとか、時間があるかないかという、保育園のいろいろの事情があると思います。それで用意もできるのではないかと思います。

それから、「片づけずに部屋にずっと出しておくものですか」。遊んでいる最中は、お片づけはしないようにしてあげてください。例えばマットを出すでしょう。こう広げて、広げてやっているかと思うと、ひょっと向こうを向くと、トトトトッと向こうへ行ってしまって、またそこでもってワッと広げ出すんですね。そうすると、先生が、「ちょっと待った! ここにある物を片づけてからいきましょう」と言って、ほら、お片づけねとやってから、その次に行くんですね。

この辺はセンスの問題ですけれども、私とか、慣れた保育士たちは、それはやらせないほうがいいと。なぜかというと、遊びというのは子どもにとっては継続なんです。テンションがだんだんだんだん上がっていくわけでしょう。途中で遊びを小間切れにしないというのは、そこのところではないかと思います。パッと切っちゃう。そうすると、「この次……今!」と思っていたその気持ちは、もうなくなってしまうわけです。

ですから、例えば、今は部屋の中で1時間とか1時間半遊ばせるんだと思ったら、その時間は遊んで、あとで片づける。そうすると、先生たちは、部屋の中がごちゃごちゃになると言うんですね。ごちゃごちゃになっていいんですよ。子どもにしてみれば、ごちゃごちゃになるから、見渡せば自分の好きな物が見えるわけです。ところが、箱に入れてしまってあると、どこに何があるかわからないのね。

よく、片づけの下手な大人の人がいるんですよ。部屋中こんなになっている人がいます。その人に、どうしてなの? と聞くと、見渡せば自分の物がすぐ見える。全部、本棚の中にピシャッと入ってしまうと、一々、一々、探すことになるかもしれないと。大人がそんなふうになっているのはみっともないかもしれないけれども、子どもの場合は本当にそのとおりだと思います。あっち見てホイ、こっち見てホイでね。

ですから、出しておくというのは変ですけれども、出しっぱなしになって、お片づけの時間には片づけて、つまり、子どもたちが取りやすい場に必ずあるということがいいわけです。収納のこともちょっと出ておりましたけれども、とにかく狭い部屋なのに収納できる。その「収納しやすい」というものを考えて、例えばぱたぱたは畳めますとか、畳んで収納できるとか、シュッと立てて棚と棚の間にスイッと入れられるものとか、本棚のようなものにバチッと入るものとか、そういうものを考えて、考えて……。もちろん、収納しにくいものもありますけれども、でも、考えて、考えて、いろいろつくってあります。それが私の本にありますので、皆さんごらんになって、あ、これは収納できるなと。

もう一つ、うんと狭い保育園は、部屋だけではなくて廊下も使います。廊下には、子どもの上着だの何だのが掛かっていて、廊下がこんな狭くなっているのに、なおかつそこで遊ぶの? なんて言いますけれども、工夫して、子どもたちの掛ける物をもう一段上のほうにつくった園があります。だから、下が子どもたちの上着。上に一段荷物の袋を下げるとポッと廊下が空いたりします。でも、このくらい狭い廊下でも、例えば0・1・2歳 組は、4連パックみたいなものを二段ぐらいにして、並べて廊下の隅に置くんです。そうすると、子どもたちは廊下へ出ると、左右から出してきて十分に廊下で遊ぶ。

これは「エデュカーレ」にも掲載したんですね。そのときに汐見先生に相談したのです。「先生、とても狭くてどうしょうもない園があるけど、廊下でも何でも遊ばせようかと思いますが、どう考えますか」と言ったら、汐見先生が、「廊下だろうが玄関ホールだろうが、どこでも遊ばせてください!」といって、やりましたのですけど、そんなものだと思いますね。

前川ありがとうございます。

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