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第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
2.「保育所における食物アレルギーの対応」

国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部 部長 海老澤元宏先生

次は「食物アレルギーの診断」です。伊藤先生が十分話してくださったと思いますが、アトピー性皮膚炎を合併している場合には、きちんと湿疹の管理をしていくことを先行させます。そして、そこに食物アレルギーがどのように合併しているかを検討します、即時型食物アレルギーに移行しても、基本的には食物アレルギーは、赤ちゃんのときに出たものは大体3歳までに50%、小学校に入るまでに90%は治ります。

臨床型分類

皆さんのお預かりになるお子さんは、食物アレルギーが発症する年齢もお預かりになるし、治っていく年代もお預かりになるし、非常に大変なところなのですね。多分、6歳児くらいまでお預かりになると思いますけれども、3番目に書いてある「保育所での食物アレルギー対応の実際」、図1を見ていただくとわかるように、0歳、1歳で保育所でお預かりすると、食物除去申請があるのは7・7%、9・2%という数字があります。6歳までの平均値を出すと、大体5・1%。ですから、20人に1人ぐらいの食物アレルギーの除去申請が、今、現場であるだろうと思います。

実際にはこれよりもう少し多いかもしれません。というのは、食物アレルギーがあると、お母様が自分で養育されているというケースもあります。ですから、日本の食物アレルギーの疫学に比べると、若干低めに出ている可能性はあります。

見ていただくとわかるように、1歳をピークにしてきれいに下がっています。ですから、こういうペースで治りますというのが、大体マッチしています。ただ、文部科学省の調査では、小学校に入って、2・6%という食物アレルギーの除去を申請しているお子さんの割合が出ていますから、1・3%というと、少し低めなのかな?という印象があります。

次に、「保育所での食物アレルギー対応の実際」に関して、お話ししていきたいと思います。何が一番問題で厚生労働省が食物アレルギー対応のガイドラインを作ったのかということをお話しします。

一番の問題は、ここに書いてあるとおり、誤食事故が頻発しているという現状です。十万人ぐらいの保育園に所属しているお子さんたちを対象にして、保育園保健協議会というところで調査したところ、過去1年間に誤食事故はありましたかという質問に対して、約30%の保育園がそれを経験し、また、医療機関に搬送する必要があるケースは10%ですから、日常茶飯事という状況なのです。

なぜ誤食事故が頻発してしまうかという背景は、子どもがまだ自己管理が十分できないということが一番大きな要因だと思いますが、隣の子の食事を食べてしまうということもあるでしょう。だから、つきっきりで皆さんが見ていなければいけないということもあると思いますし、もう一つは、診断がつくか、つかないかぐらいの子が入ってきます。そうすると、まだ湿疹があるけれども実際食物アレルギーがどうなのかわからない、そういう状態でお預かりするというケースもあるでしょう。

さらに離乳食を進めていく段階において、まだ食べていないものというのがたくさんあると思います。それを、最近のお母様方は仕事が忙しくて、「保育園で与えてくれませんか」という要求もあるようです。そういうことをすると、今まで一度も食べたことのないものを保育所で与えて、それによって誤食事故のもとになるということもあるでしょう。

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