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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
3.「保育園での対応の実際…看護師の立場から」

足立区立沼田保育園 看護士 佐藤直子先生

2つ目の「園における感染症発症及び流行時の対応」に進みます。

感染症発症及び流行時の対応は、発症した感染症と症状を把握し、感染症ごとに対応の方法を確認し判断する。必要に応じて園医、主管、行政へ報告し対応を進める。そして終息を確認し、強化していた感染拡大の予防対策などを通常の感染予防対策へ戻す、ということが一連の流れになると思います。

流行する期間の発病の人数を年齢やクラスごとで把握したり、潜伏期を経て周期的に繰り返す流行の予測などを知るためには「感染症発生チャート」の活用が有効です。「表2」は足立区で昨年度使用したチャートです。

表2 発生状況チャート

感染症発生チャートは、昨年度、新型インフルエンザの流行時に似たような表を使いませんでしたか? 頷いている方がいらっしゃいますが、ご使用になったと思います。そして、現状を把握した上で、それぞれの感染症ごとに特徴をつかんで、迅速な対応を進めていくことが大切だと思います。

続いて、百日咳、水疱瘡、感染性胃腸炎、新型インフルエンザが発症したときの対応の大きな流れを示しました。両先生方のお話にありました、感染症のことがちょうど出ています。

まず、感染症の発生状況などを把握するとともに、それぞれの感染症ごとに、乳幼児の集団保育をしている場であることを意識して感染拡大の予防対策を進めていきます。

百日咳では、予防接種の状況の把握を進めます。先生方のお話にもありましたけれども、特に0・1歳児では一期と追加を実施中なので、このクラスでの発症は、こども達の免疫が弱い場合があるため感染が広がることがあります。緊急対応の意識を高めなくてはなりません。

幼児の場合も、確実に予防接種が勧められているかを把握することが大切です。

次に、水疱瘡の場合です。園内での流行の規模を推測するために、予防接種をしたかということと一緒に感染済みの園児の把握が大切です。その状況によって対策が2つに分かれます。その分かれた中で、きちんと焦点を絞った対応を進めていくことが大切だと思います。

感染性胃腸炎の場合は、感染者の便や嘔吐物から急激に感染が拡大するおそれがあるため、日頃からの処理・消毒方法を徹底するとともに、サーベイランス情報などにより地域の流行状況を把握し、職員、保護者間で情報を共有しながら、予防と、感染時の流行を拡大させない迅速な対応が必要です。

近隣がどのように流行しているかということをサーベイランスで知ると、とてもわかりやすくて良いと思っています。

ここまでの説明で、例えば、「5歳のクラスの園児が水疱瘡にかかりましたといって、「水疱瘡が出ました。症状、潜伏期間、気をつけましょう。登園許可証が必要です」という掲示をするとします。それだけではダメだということなのです。それはどの感染症でもしますが、水疱瘡なら、まず何を把握して流行しないようにするか。流行はしてしまうかもしれませんけれど、いまの園の状況を知った上で、大変だ、大変だというのではなく、落ち着いた対応が必要だと思います。

次に新型インフルエンザの話をします。昨年度、新型インフルエンザの流行時の対応について、講習会や報告会などでさまざまな機関が検証をされていると思います。園内においては、いつ発症、流行が起こるかという不安を持ちながら、園児、保護者、職員が、日々変化する情報や、行政機関からの指示に対応していかなくてはならなかったことが課題の一つとしてあったのではないでしょうか。

皆さん、どうでしたか? 毎日のように、こうしましょう、ああしましょうと、大変だったと思います。

ここでご紹介するのが「表3」の「健康カード」です。このようなカードも各園で同類のものを活用されたかと思います。健康カードは、一昨年、新型インフルエンザが国内感染を確認した頃の4月下旬、区より、各園で活用するように提示されました。活用の方法の制約がなかったので、各園でさまざまに使用されました。

表3 健康カード

私の園では、園長・職員間で話し合い、保護者、保育士、園がそれぞれの目的を持って園内で利用しやすいように、月日や項目を加え、平成21年5月から翌年の3月まで、毎日の朝の体調確認をするため、保護者が記入し園に提出していただきました。結果として、保護者は子どもの体調について毎朝確認をしていただくことができました。

それは、地域や園の流行が始まる前から子どもたちの体調の把握が習慣化していることで、発症の早期発見につなげられたと思います。保育士は毎朝、健康カードのチェックをすることで、園児の体調の変化を意識して注意することができました。看護師の各クラスへの巡回では、健康カードを見ながら体調不良の園児を確認することができました。

さらに、園としては、流行が始まったときに流行の拡大・防止策をたくさん講じる中で、健康カードの使用により、感染の早期発見や保護者への協力依頼、そして、保護者から園児や家族の感染者の報告などをスムーズに行いながら、次の段階の対応を迅速に判断して実行することができました。日々変化する情報に応じながら、さまざまな対応について、保護者の理解と協力を得ながら新型インフルエンザの流行時の対応が進められたことは大変重要だったと思います。

ここで申し上げたいのは、この健康カードがよかったということではないんですね。健康カードの利用目的をしっかり考えて、いかに有効活用をしていくかということです。感染症対応すべてに言えることですが、事前説明や対応、準備により、不要な不安や負担をかけずに協力体制を持つこと。そして、流行時には必要な情報を得ながら状況を把握して、迅速な判断と対応をしていくことが大切なのです。

このように、感染予防、流行時の対応は密接に関係しながら、日々、各園において、園児、保護者、職員、それから園医などの協力体制をもって実施されていると思います。その中で、毎日の確実な予防対策や、感染症発生時には拡大を防止するために、いままでの話のほかに、和田先生がお話しになりましたけれども、園児への予防接種の推奨。それから、登園許可証の提出による、保護者や主治医との連携などの重要性についてもご理解いただけたと思います。

そして、私たちがさまざまな感染症への対応の中で、最新の情報やガイドライン、使用されている各種書類などのツールをそれぞれ目的を認識しながら有効活用し、日々の活動を進めていければと思います。

ご清聴ありがとうございました。(拍手)

前川非常に実践的なお話をありがとうございました。

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