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特集 小さな挑戦者たち−木更津社会館保育園−
「森・里山の保育−すがすがしい子供たち」
木更津社会館保育園園長 宮崎栄樹さん



森に入った


 10年程前、20世紀が終わろうとしていた頃、ちまちまと室内で遊び回る5歳児の姿に、私は疑問を感じ始めておりました。他方で園長就任以来の20年の保育が父母関係者から絶大の信頼を得ていることにも、限界と不安を感じていたのです。その中でふと思いついたのが、「自己否定」という言葉でした。一度すべてを捨ててみたい。
 平成11年(1999)3月、5歳児たちの、「森の保育」を始めました。ドイツに前例があることを私は全く知りませんでした。3年程で、1軒の古い農家を改修した森の分園「佐平館」を拠点として、敷地や田畑など3000坪の空間で保育を展開出来るようになっていました。
そこまでは園の車で移動することもありますが、基本的に子どもたちは、園から1時間程かけて歩いていきます。イベントとして年に1・2度森に遠足に行くのではなく、年間を通じて定期的に里山に通うようになったのです。主な活動の1つは畑で野菜を、田んぼで稲を植え、それを収穫することですが、里山の自然は、あけび・クワガタムシ等の多様なプレゼントで子どもたちを魅了してくれました。
 私たちの里山保育が、ここまでやってこられた最大の要因は、直井洋司氏という生物と幼児心理を専門にする方に会えたことでした。偶然、彼の奥様が、我が園の保育士であったこと、奥様が「里山保育」の企画を直井洋司氏に伝えて下さったこと等の幸運に恵まれて、マムシ等の毒虫対応も出来るし、環境保全の基本もはずさない保育が可能になったのでした。
 「森・里山の保育」を始める時、私は、「森・里山の保育園には、フェンス・園舎・玄関・ピアノ・絵本等はない。何にもない。あるのはトイレのみ」と宣言したものです。
 「森・里山の保育」は、欲求充足をあらゆる場面で、「腹八分」にすることを目差しています。自然とは時に、腹八分以下の生活を子どもたちに求めてきます。それが耐え難いレベルに達しない範囲で、子どもたちの心身を揺さぶってくるとき、子どもたちは、試されている自己を受け容れるか、拒否するかの決断をします。この決断が彼等を自立に導くのです。




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