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特集  座談会「子どもの食育」
東京慈恵医科大学名誉教授 前川 喜平 先生
東京女子医科大学名誉教授 村田 光範 先生
こどもの城 管理栄養士 太田 百合子 先生



前川(司会) 本日は、「子どもの食育」ということで、二人の先生にお集まりいただきました。
 村田先生は小児科医で、最初は内分泌をやられて、肥満とか、昔で言う小児成人病、さらに生活習慣病、それから、最近は食育に関わっているこの道の大家です。
 管理栄養士の太田先生は、現在、こどもの城の小児保健部で、子どもの食事の問題、食育の問題など幅広く現場の実践を行っておられる先生です。


子どもの食育とは


前川 最初に、「子どもの食育とは」ということで、村田先生から、簡単にどういうことかということをお話しいただけますか。
村田 考えようによって、答えが大変難しいですね。なぜかというと、食育という内容はなかなか端的な表現で表せない。例えば英語にならないので、「shokuiku」というようなことも言われているように、とにかく食育基本法の内容を見てみると、基本的には、「食事をするということが、人が人として成り立っていく基本的なことであって、食事を、量・質、食事の摂り方、あらゆる面でよりよい方向に持っていくことが、人が健全で健康な状態に保たれる非常に大きなことだ」ということを前文では言っています。内容から言いますと、そういう一般的な食事に関することもありますし、教育の問題もあります。地産地消といいますか、今で言えば食料自給というふうな食料生産の問題もありますし、食品の安全の問題もあります。そういうのを包括的な立場で「食育」と言っているものですから、子どもの食育をどこに焦点を当てたらいいのか、というのはなかなか難しいわけです。
 しかし、子どもが育っていく上で基本的な問題は「食事」ですから、生まれて大人になっていくまで、どんな食事の仕方をしたらいいのかというのが基本ですが、子どもに対する食育の第一点というのは、食事は非常に楽しいものだということを、子どもによく教えることだと思います。
 その次は、やはり食事のリズムを持たなければいけない。食事のリズムを持つためには、空腹感を覚え、楽しい食事というか、非常に温かい環境の中で、温かい食事を提供されるということで、ひもじいというか、その空腹感が満たされるということが非常に大事なことだと思います。
 こういった主に二つのこと、空腹感を子どもが覚え、そして、楽しく食事をするということが基本にあると思います。
 ただ、どうしてそういったことのほかにいろいろなことが問題になるかといいますと、今の子どもたちがあまりにも問題のある食生活をしているわけです。食事のリズムの問題も、朝食を摂らない子が非常に多いとか、間食が多いとか、夜食が多いとか、食事のリズムが満たされない。食べている内容も、必ずしもバランスがとれていない。それから、家族が一緒に食事をする機会も大変少ない。こういった状況を、どのような形で子どもがよりよい食事ができる環境にしていこうか。
 子どもに限って言いますと、今申し上げたように、子どもが食事を摂る環境というものをいろいろな意味から大人がよく考えて、子どもに、健全な食事をする仕方と、どのようにしたらそういう食事ができるかという、自分たちでそういった力を育んでいくことを、我々が助けていこうと。小児科医の立場からすれば、こういったことが子どもの食育の内容ではないかというふうに思っています。
前川 ありがとうございます。それでは、管理栄養士の立場から、太田先生、いかがですか。
太田 今さら「食育」と言わなくても、私たちは今までずっと食育をいろんな形でやってきたと思っています。あらためて「食育」と言われると、私たち栄養士を含めて大人は、子どもに「何かやらなくてはいけない」と力が入ってしまいます。保育園で行われている食育は結構イベントが多いですね。家庭菜園をわざわざ作るように「何かをしてあげなくてはいけない」ではなくて、私は、食を通して人がかかわりながら楽しめるような地道な日頃の食事がすべて食育だと思っています。
 今、村田先生が、問題のある食生活をしている子が増えている状況をおっしゃいましたが、私も非常に同感で、幼児期の「空腹感というのがない」というのがありまして、大人がやはりつくってあげないといけないと思います。特に幼児は、親や大人の接し方次第で食生活の乱れを起こしたり、よくなったりということがあると思います。
前川 そうですね。
太田 空腹感をまずつくってあげて、そこで共に食べたりすることで、子どもたちはそれが「楽しい」と思ったりすると思います。だから、子どもだけの食育ではなくて、親も含めた全体のものが必要だと思います。
 今のお母さんたちは頑張っている人も多いです。だけど、ちょっと緊張し過ぎている部分があると家庭の食事は栄養学ばっかりになっていて、親の「楽しさ」というのが少ない気がします。その辺で「こういうふうにしたらもっとよくなるよ」というのを、簡単に、取り組みやすいやり方を伝えて親をリラックスさせるのも私たちの食育かなと思っています。




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