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特集 対談 「なぜ今、食育か」
神奈川県立保健福祉大学栄養学科長、食育推進会議委員
中村丁次
神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎担当科長・東京慈恵会医科大学名誉教授
前川喜平


食育は、各省がかかわった国レベルの運動


前川 今度の食育というのは国家的な運動ですね。
中村 そうです。
前川 食育では、厚生労働省は国民の健康づくりの立場から、文部科学省は学校における食に関する指導、農林水産省は消費者の食生活改善や、食の安全・安心に対する理解を深めるということになっていますけれども、これについて中村先生のお立場から、何かコメントがありますか。
中村 結局、今までは各省がばらばらの行政をしてきたのではないかなと思うのです。
前川 おっしゃるとおりです。仲が悪いですね(笑)。
中村 しかし、食べるということを中心にして考えると、食べるものの生産は農林水産省がやるわけです。これは安全でなければいけないし、自給率もちゃんと持っておかなければいけない。これを食べるための教育は、文部科学省がやるのです。そして食べたあと、それによって健康になるか不健康になるかは厚生労働省の役割になります(笑)。食べるものと、食べ方の教育と、食べた後の健康状態をばらばらにやっている。このようなことをやっているから日本人の食事がちゃんとしないのではないかというので、これらを統合化しようと考えたのです。
前川 なるほど。そういう意味ですか。
中村 ええ。要するにうちの大学(神奈川県立保健福祉大学)と同じように連携と統合ですよ(笑)。
前川 そう話されるとわかりやすくなりますね。食べるということを中心にして、最初から結果までみんな一緒に管理して健康で丈夫で幸せな人間をつくるということですか。
中村 ええ。そういう意味では食べるということを中心として、これを健康問題、教育問題、農業問題、環境問題、あるいは人の価値観の問題とか、人生観の問題にまで膨らませて、全部を含めたわけです。
前川 生活習慣から運動からみんな入りますね。人間の生きていくための生活リズムですから。
中村 だから、参加した大臣は12省庁にまたがっています。
前川 すごいですね。
中村 12人の大臣クラスが参加しました。
前川 総理大臣も来たのですか。
中村 小泉総理大臣が委員長で、厚生労働大臣、文部科学大臣、農林水産大臣はもちろんですが、環境大臣も財務大臣や国土省の大臣、国家公安委員長までいましたね。
前川 随分かかわっていますね。
中村 ええ。だから、世界に例のない面白い法律だと私は思います。食べるということを中心に広範囲に検討し、いろいろな省庁の壁を取り払って、日本人の食事をとにかくちゃんとしようではないか、ということを目標にしているわけです。
前川 それは結局、健康だけではなくて、いろんな国策その他にかかわっているということですね。
中村 ええ。食料問題もそうだと思います。
前川 食の安全性で基本法ができましたね。遺伝子の食料が何とかかんとか、出ていましたけど。
中村 BSEの問題も入っていますから、そういう意味では世界に先駆けた国の基本法だろうと思います。
前川 「食育基本法」でしたね。
中村 基本法です。国の政策の根幹になる法律ですから、大変重要です。



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