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第25回 母子健康協会シンポジウム保育と食育
2.子どもの健康と甘味 〜適切な砂糖の使用〜
女子栄養大学大学院小児栄養学教授 大和田 操



学童糖尿病検診と小児期発症2型糖尿病


 肥満傾向を認めても、軽度肥満で、表1に見られるような肥満の合併症を伴っていなければ、緊急な対応は不要です。然し、日本では早朝尿検査による糖尿病検診の結果、小児の2型糖尿病が稀でないことが明らかになりました。私たちは、1974年から東京都の一部の地区で学童糖尿病検診を行って参りましたので、次にその結果を紹介致します。

1 糖尿病検診の方法と検診結果
 昭和48年に文部省は学童期の潜在性腎疾患の早期発見を目的とした早朝尿検査を義務づけ、この検査は学校検尿と呼ばれております。私たちは翌年から、その尿を利用して図2の方法で糖尿病検診を同時に開始致しました。その結果、中学生を中心に、成人に見られるタイプの糖尿病(2型糖尿病)が多く発見されました。従来、子どもの糖尿病は体重減少、意識障害などを伴って急激に進行し、治療にインスリン注射を必要とする1型糖尿病であると考えられてきましたが、表5のように東京地区の27年間の検診では215人の2型糖尿病が発見されました。1994年からは尿糖検査が学校検尿で義務付けられ、全国でも同様な成績が得られております。そしてわが国の小児期発症2型糖尿病の年間発見率は学童10万人当たり5〜8人であり、日本における1型糖尿病の年間発見率10万人当たり1〜2人に比べて有意に高率です。
【図2】小児糖尿病検診システム/【表5】東京の一部の地区における学童の糖尿検査(1974〜2000)

2 小児2型糖尿病の特徴
 東京地区の検診で27年間に発見された215例の2型糖尿病の約85%で診断時の肥満度が20%を越えておりました。そして表6のように男子の65%以上で中等度以上の肥満を認めたのに対し、女子例の約65%が非肥満或いは軽度肥満でありました。また、表7のようにこれらの患者の発見時の調査において、50%以上の患者に2型糖尿病の家族歴が認められました。これらの成績は、わが国では2型糖尿病の遺伝的素因をもつ個体に、食習慣や生活習慣等の環境要因の変化が関わって、糖尿病が早期に発症したことが推測されます。
 肥満が明らかな2型糖尿病患児5例に診断時に施行した食事に関する聞き取り調査では、表8のように過剰なエネルギー摂取とともに、脂肪、蔗糖、果糖などの過剰摂取が確認されました。この5例では表8の中で間食の項に記載した食品の摂取を中止させ、適切な食事・運動療法を行ったところ、数ヵ月後には血糖値が正常化するとともに肥満度も改善し、肥満の成因に脂肪摂取過剰とともに蔗糖、果糖の過剰摂取が関っていることが確認されました。そして、小児であっても2型糖尿病治療の基本は食事・運動療法であることも確認できました。



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