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少子化社会における小児医療 小児救急、時間外診療と地域医療への貢献、大学小児科の役割
大分大学医学部脳・神経機能統御講座 小児科学教授 泉 達郎



I. 少子化、出生率の低下と小児医療


 平成16年に生まれた赤ちゃんは110万7千人で、前年より1万7千人少なく、4年連続で最少記録を更新し、少子化に歯止めがかからない状態が続いています。1人の女性が生涯で生むこどもの数を推計した合計特殊出生率は昨年と同じ1.29でしたが、小数点以下は1.2888で、前年の1.2905より低下したこととなり、過去最低を更新中です。出生数から死亡数を引いた自然増加数は戦後最少の8万3千人と、初めて10万人を下回り、都道府県別の人口動態統計では、マイナス県は既に25道県で、半数を超え、2007年にも予想される日本全体の「人口減少社会」への到来間近の現実を見せつけています。先の衆議院議員総選挙では、どの政党もこの少子高齢化の問題を重要課題として捉え、いろいろな公約を提示していましたが、これまでの児童手当等の子育て支援対策では限定された現金給付に偏っており、西欧諸国に比して、育児休業制度や保育サービス、育児休業後の職場復帰制度等は低迷、不十分です。従来の発想の下での少子化対策では、出生率の改善はおぼつかないと思います。
 こどもの減少は、人口減少、就業者の減少、経済規模の縮小へと繋がり、年金制度や医療制度など世代間の相互助け合いである社会福祉制度が揺らぎ、地域社会、更には、日本の将来に大きな影響を及ぼすことは明白です。これほどまでに出生率が低迷しているのは、日本はこどもを持つことによる就業機会や経済コスト等が大きく、こどもを産みたくても産めない社会、こどもや母親を大切にしているとは言えない社会になっているからではないでしょうか。安心してこどもを産み、育てることの出来る健全な社会となるには何が必要でしょうか。小児医療が貢献しうる場所は多いと思います。
 将来の見通しが立たなければ、結婚、出産とはならないでしょう。若者が安定して働ける職場と、そこに住む住民が相互に助け合い、関わり合って、生きる地域社会の構築が必要です。ただ、働く機会、職場の多い大都市東京の出生率は1.0を割り込んでおり、職場の問題だけではないと思います。住みよい地域社会の構築には小児科医による地域の小児医療;救急、時間外診療、保健、福祉、教育などへの貢献は必須と思います。



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