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第二十四回 母子健康協会シンポジウム 保育におけることばの問題と対応
3 吃音など構音上の問題とその対応
国際基督教大学教授 栗山 容子



栗山 栗山でございます。私は現場で子どもたちのことばの指導とか治療といったようなことを専門にしてやってきておりません。そこで、今日はこれまでに出会った、たくさんの子どもたちや吃音児のことばを中心に、言語習得期の構音上の問題とその対応についてお話をしていきたいと思っております。

ことばをモニターする


 子どもたちの発話を聞いておりますと、その内容には問題がないにもかかわらず、音につまったり、始めの音を繰り返したり、あるいは語句を言い直したりといったような発声をする子どもたちが、思っている以上に多いということに気がつきます。
 そこで、三十ヵ月から三十六ヵ月の言語習得期の子どもたちの自由発話を、文字に書き起こして、調べてみました。
 事例の(1)(表2)にあるように、例えば、子どもが、「めん め おめめが めめが おじちゃん の」、あるいは、「お お おじちゃん 電話 して しょ」とか、あるいは「おじちゃん の め め め めまげ」というように、最初の音がつまってしまうのですね。そうしましたら、母親が、「め・が・ね」というように言いかえてやるのですが、子どもは、「おじた お おじちゃん」というふうに、別のことばに転じて、やはりつまりながら発話するといったようなことが見られました。
 あるいは(2)の子どもは、「いためのも いためのの これ いためろの」と言っているので、母親のほうが「炒めもの?」というふうに聞いてやりますと、「そうだ」と言うわけです。
 このように、何名かの子どもたちの発話を調べましたその結果、こういった発音とか、あるいは語の言い直しですね。そういったようなもの数が年齢とともに増えているということがわかりました。
 また、母親に指摘されて直すというよりも、子どもが自発的に直す、ということがはるかに多いということも、気がつきました。
 先ほどの、例のように、母親が「め・が・ね」と言ってあげているにもかかわらず、「おじた お おじちゃん」というふうに、自分がいま言いたい言葉を、どもりながら言っているというようなことです。あるいは、二番目では、お母さんが「炒めもの?」というふうに言ってあげると、恐らく子どもの頭の中に、最初はうまく言えなかったのですけれども、「いためもの」と言いたかったんだという、そういう意識が子どもたちにあるので、お母さんに言われると、「そうだ」というふうに言っている。これは、子どもたちが自発的に、積極的に、自分の言葉を監視して、あるいはモニターして、適切な発音をしようとしているんだ、というふうに考えられると思います。
つまり、構音の獲得過程では、普通の言葉の発達をしている子どもたちでも、発声につまったり、あるいは不明瞭であったり、あるいは不適切な音声といったようなものを発声しながら、自分自身の言葉をモニターして、自発的に修正しながら、正しい言葉を獲得している、そういう様子が見られるわけです。



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