2013年 第19戦 フォンタナ マーカス・シモンズ レースレポート

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第19戦 フォンタナ
変わらなかった“流れ”
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全長2マイルのフォンタナ・スピードウェイで開催された2013年IZODインディカー・シリーズの最終戦でも、佐藤琢磨の運気は変わらなかった。なにしろ、レースの折り返し地点を過ぎたあたりで、琢磨はマシーンを惰性で走らせてピットに戻り、そのままリタイアに追い込まれたのだから……。

250周/500マイルで競われるレースの144周目、コース上のゴミやマシーンの破片を拾った影響で琢磨のマシーンはオーバーヒートを起こし、エンジンが不調に陥って戦線離脱を余儀なくされた。この結果、No.14のフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダは17位とされ、チャンピオン争いの最終結果でも同じように17位となった。

事前にフォンタナでのテストを行なっていたこともあり、西海岸に向かう琢磨とフォイト・レーシングの志気は高かった。「フォンタナで行なわれたテストに1日参加し、ここでコンペティティブなパッケージであることが確認できたので、僕たちには少し自信がありました」と
琢磨。「タイアのスペックは去年とは違っていました。また、テストでは様々なアイテムを試しました。クルマのバランスはよく、いい状態でしたが、本番はナイトレースなのにテストはすべて日中に行ないました」

ところが、金曜日にコースを走り始めたとき、マシーンの感触は思わしくなかった。「90分間のプラクティスで、路面がグリーンの間はいいフィーリングだったのですが、タイアの摩耗が進むにつれてスタビリティが低下していきました。なんとかこれに対処しようとしましたが満足のいく結果は得られず、プラクティスが終わるころにはとてもナーバスな挙動を示すようになりました」

「ダウンフォースの制限が掛けられたインディカーでフォンタナを走ると、ターン1とターン2ではとてもトリッキーな動きを見せることがよくあります。コース幅が広くバンク角も深いので、いろいろなラインでコーナーに進入することができるのですが、各レーンを仕切るつなぎ目がとてもスリッパリーだったりします。しかも、各レーンのバンクが少しずつ違っているので、これをまたいで走ろうとするととてもナーバスな動きをします。いっぽうのターン3とターン4は、多少バンプがありますがそれほどバンク角の変化がアグレッシブなものではないので、こちらはレーンをまたぐことがよくあります」

「ここでセッティングを変更したところ、リアのスタビリティが失われてしまい、ターン3でスナップ・オーバーに見舞われました。おかげで僕はいきおいよくウォールに接触。ひどい週末のスタートとなってしまいました」

これで予選には出走できなくなったが、驚くべきことに、金曜日の走行を締め括る夜のプラクティスまでにマシーンの修復は完了したのである。「衝撃はとても大きかったけれど、幸いにもダメージはあまり大きくありませんでした。バックアップカーに乗り換える必要もありませんでした。修復の必要があったのはリアエンドと車体の左半分で、メカニックたちはマシーンを修復するのに素晴らしい働きをしてくれました。ただし、予選はその2時間後だったので、残念ながら間に合いませんでした」

「それでも、夕方のセッションを走れたのは素晴らしいことでした。そうでなければ、いきなり夜の決勝を迎えることになったはずです。僕は20番手に留まりましたが、それでもいくつかのアイテムを試し、自信を取り戻すことができました。ただし、大きなトラフィックのなかでハンドリングを確認することはできませんでした。マシーンは、とりあえず自分が望むようなスタイルでドライブできるようになっていましたが、それでもタイアが摩耗するとオーバーステア傾向を示していました」

これで琢磨は最後尾25番グリッドからのスタートとなったが、レースは序盤から順位を上げていく期待のもてる展開となった。そして最初のピットストップが行なわれる頃には19番手まで浮上していたのである。「今回は500マイルの長いレースなので、徐々に順位を上げていけばいいと考えていました。マシーンのフィーリングはまずまず良好でした。路面は非常に滑りやすい状態でしたが、 スタート直後は他のマシーンが密集して走行していたので、上手く勢いにのせて順位を上げるチャンスに恵まれました」

「タイアの性能低下が始まったとき、去年と同じように順位を上げられることを期待していましたが、今回はプラクティスのときのようにスタビリティが低下していきました。状況は少しずつ難しくなっていったので、早くフレッシュタイアに履き替えたいと思っていました」

コース上に多くの破片などが散らばっていたため、1回目のピットストップでは琢磨だけでなく多くのドライバーがタイムをロスした。
「ラジエターのエアインレットからゴミを掻き出す必要がありました。また、チームはオイルと冷却水の温度が上昇していることを心配していました。ラリー・フォイトがコース上の破片を拾っていることに気づいたので、メカニックたちがそれを取り出そうとしました」

「昨年は、ターン3につながるバックストレッチの220mph(約350km/h)でアプローチする部分に大きなバンプがあり、これに乗り上げると4輪が宙に浮いてホイールスピンを起こし、エンジンのリミッターが作動してしまうほどでした! このため今年はバックストレッチ全体の路面を削りましたが、その破片というかホコリがコース上に残ったままでした。カリフォルニアの砂漠では雨がほとんど降らないので、ずっと洗い流されなかったのです。それでホコリが何度もコース上に現れ、リスタートのときにはまるでサンドブラストをかけているかのようにホコリが舞い上がりました!」

「コースの清掃係は繰り返しホコリを払おうとしましたが、たくさんのドライバーがこの問題に悩まされたほか、このホコリのせいで捨てバイザーもあっという間に台無しになってしまいました」

ピットストップが長引いたせいで琢磨は周回遅れとなったが、最初にコーションラップとなったところでリードラップに復帰。この段階で周回数はまだ170周も残っていた。「長い夜に向けて、僕は再スタートを切ることができました。この頃になると、マシーンのフィーリングは段々よくなってきました。路面は引き続きとても滑りやすい状態でしたが、ラバーがだんだんのってきたほか、日が沈んで気温が下がり始めたため、僕たちには好ましい状況となり、いくつか順位を取り戻すこともできました」

実際、琢磨はオリオール・セルヴィアとジェイムズ・ジェイクスをオーバーテイクして18番手に浮上。さらに次のコーションラップでは16番手へと駒を進めた。続いてグレアム・レイホールとジャスティン・ウィルソンをパスして14番手と挽回。その直後にウィルソンを巻き込む大規模な多重事故が発生したため、コース上は長い時間、イエローが提示されたままとなった。

「アクシデントの残骸は凄まじい量でした。ジャスティンのことがとても心配で、1日も早い回復を祈っています。事故のあともドライバーがコクピットに閉じ込められたままになっているのを見るのは辛いものです」

チームは琢磨を2回ピットに呼び寄せ、燃料がちゃんと入っているかどうか、そしてフレッシュタイアがパンクしていないかどうかなどを念入りにチェックした。これはまだレース半ばのことで、この後の展開はまったく予想できない状況だったが、残念なことに、それから20周ほどを走ったところで琢磨はリタイアを喫することになる。

「水温がどんどん上がり続けたのでエンジンがオーバーヒートしてしまい、パワーが低下しました。残念でしたが、今回は本当にサバイバルレースとなりました。完走したのはたったの8台です。こんなことは、CART時代のミシガン500マイル以来、なかったそうです」

最終戦を終えた琢磨は日本に戻り、鈴鹿と富士でスーパーフォーミュラ・シリーズのレースに臨むことになるが、これを別にすれば、
今後は2014年のインディカー・シリーズをどう戦っていくかが主なテーマとなる。「いいこともそうではないこともたくさんあった2013年は、本当に驚くようなシーズンでした。でも、僕たちは初優勝を達成しただけでなくポールポジションも勝ち取り、そのほかのレースでも高いポテンシャルを発揮できたので、とてもエキサイティングなシーズンでした。引き続きこの勢いを保っていきたいと思います」

「今シーズンもたくさんのことを学びました。まずはABCサプライ・AJフォイト・レーシングのスタッフに心から『ありがとう!』といいたいですね」

 

2013年 第17・18戦 ヒューストン マーカス・シモンズ レースレポート

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第17・18戦 ヒューストン
ホームレースの光と影
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ヒューストンの市街地コースで行われたインディカーレースは実にエキサイティングだったが、それでも佐藤琢磨の“不運の連鎖”を断ち切ることはできなかった。ただし、少なくとも琢磨とAJフォイト・レーシングを上り調子へと転換させることはできたようだ。

ダブルヘッダーで開催されるこのレースでは、第2ラウンドの最終ラップで琢磨が関係する大クラッシュが発生したものの、幸いにも琢磨は無傷だった。いっぽう、同じレースの第1ラウンドでは琢磨がポールポジションを獲得。なお、フォイトのチームが予選を制したのは1999年7月にアトランタ・モーター・スピードウェイでビリー・ボートが達成して以来のことである。いっぽう、琢磨がインディカー・シリーズでポールを獲得したのは、2011年のエドモントンを筆頭に、これが通算3回目となった。

かつてチャンプカー・ワールドシリーズの舞台だったヒューストンでインディカー・シリーズが開催されたのは今回が初めてのこと。
フォイト・レーシングでNo.14のマシーンに関わっている誰もが、このイベントを楽しみにしていた。「チームにとってはホームレースなので、とても楽しいイベントでした」と琢磨。「チャンプカーが開催された6年前のレースのビデオを見ましたが、非常に興味深いと思いました。クレージーなコースで、とてもバンピーなのに、速くて面白そうでした!」

ただし、1ヶ所だけあまりにバンピーなところがあった。「今回はダブルヘッダーのイベントだったので、プラクティスは非常に短いものでした。いっぽう、他のカテゴリーでターン1のバンプが大きな問題となったので、速度を下げるための臨時シケインが設置されることになりました」

「予選は土曜日に延期され、その間にバンプの整備を行ったので、シケインなしのコースに慣れるために10分間のウォームアップが設けられました」

「金曜日のプラクティスは、ライドハイトやスプリングなど、ごく基本的な作業に取り組みましたが、大きな手応えを掴みました。
そして土曜日の午前中にはとても古いタイアを装着して臨みましたが、マシーンは好調で、自信を抱くことができました」

「メインストレートでは引き続き大きなバンプを避けなければならず、キンク部分のイン側を走ることになりました。それでも予選は最高に楽しかったですよ。僕たちは最初に硬めのブラックタイアでコースインし、ここでいいラップタイムを記録した後、レッドタイアに履き替えてポールポジションを獲得しました。この結果にはとても満足していますし、チームは素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
たくさんのチーム関係者と、腰の手術を終えて初めてサーキットに姿を見せたAJの前でこのような成績を収められたので、最高の気分でした」

「いつもだったら、ポールを獲った後は一晩いい気分でいられますが、今回は記者会見を終えると、そのままレースの準備を始めなければいけませんでした」

土曜日の午後には決勝のスタートが切られるのだから、忙しい思いをしたのは琢磨ひとりではなく、誰にとっても同じことだった。
ただし、スタートラインでクラッシュが発生したために直ちに黄旗が提示され、この影響で琢磨は右リアタイアにパンクを負うことになる。

「それほどいいスタートではありませんでしたが、トップを守ることはできました。ところが、先頭でこの事故現場に戻ってきたため、パーツの破片を拾ってしまったようです。エンジニアがラップごとに空気圧が下がっていることを伝えてくれたので、ピットストップをしないわけにはいきませんでした。これはとても辛いことでした」

これで琢磨は12番手に後退。そしてリスタート以降は、トニー・カナーン、セバスチャン・ブールデ、マイク・コンウェイらと立て続けにバトルを演じることになる。

「予選のときに比べると気温は大きく上がり、僕らはマシーンのスピードを失っていました。グリップは徐々に落ち始めていましたが、サイド・バイ・サイドのバトルがたくさんあったので、引き続きとてもエキサイティングでした。いっぽう、多くのドライバーが縁石に乗り上げて激しく跳ね飛び、コース上のホコリやマーブルに乗ってしまうような難しい状況でしたが、とにかく我慢のレースとなっていました」

残念ながら、無線のトラブルによりチームと連絡をとれなかった琢磨には黒旗が提示され、ここでピットに戻ったマシーンをチームは修復することができた。この作業はあっという間に終わったが、琢磨はチームにハンドリングの症状を伝えるチャンスを逃してしまう。

それでもレース戦略が的確だったこともあって、残り20周でリスタートを行ったときには8番手まで挽回していたが、フィニッシュまであと2周となったところで不運が襲いかかり、琢磨はウォールと接触することになる。「ジョセフ・ニューガーデンがターン1でイン側に飛び込んで僕をパスしていきましたが、このとき、彼はまったくスペースを残さなかったので、僕はシケインをショートカットすることになりました。これでタイアにはホコリがたくさんつきましたが、その後のターン3では3台が非常に接近して進入する形となります。僕のイン側にはジェイムズ・ジェイクスが飛び込んできました。僕はなんとかコーナーを曲がろうとしましたが、路面はとても滑りやすい状態になっていたため、一度ラインを外すともうどうすることもできず、僕はウォールに接触してしましました」

「このときトーリンクにダメージを負いましたが、他のドライバーがリタイアすればポジションを上げることができるので、残り数周を走るためにレースに復帰しました」

琢磨にとってはさらに悔しいことに、レース2の予選はキャンセルとなり、スターティンググリッドにはポイントランキング順に整列することとなった。ただし、エンジンをストールさせたダリオ・フランキッティと、チームのコミュニケーションが図れずに間違ったグリッドに並んだ琢磨のふたりは、最後尾からのスタートを余儀なくされた。

「予選開始の10分前に雲行きが怪しくなってきたので、僕はヘルメットのなかで笑顔を浮かべていました。なにしろ、雨は大好きですからね! 僕は最終的にセッションがキャンセルされるまで、誰よりも長くコクピットのなかで待ち続けました」

スタートとリスタートを完璧に決めた琢磨はぐんぐん順位を上げていき、レースが折り返し地点を迎えるころにはトップ10に迫っていた。「土曜日の走行から学んだことがあったので、マシーンはよくなっていました。僕がいちばん速かったわけではありませんが、チームが指示したピットストップやレース戦略がよかったので、トップグループと肩を並べることができました」

最後のピットストップを終えたとき、7番手となった琢磨はサイモン・パジェノーを追っていた。「6番手争いのバトルはエキサイティングでした。リスタートしたときのスピードは彼のほうが上でしたが、その後、彼に追いついていき、さらにプッシュ・トゥ・パスを使ってギャップを縮めていきました。サイモンとは僅差でフィニッシュできそうでした。抜けるかどうかはわからないけれど、とにかく全力を尽くそうと思ったのです。ファイナルラップの1周前、バトルをしていた僕はターン8の縁石に乗り上げてしまいます。これでマシーンは跳ね上がってラインがアウトにはらみ、マーブルに乗り上げて出口側のウォールにかすってしまいました」

「レースはとても接戦だったので、勢いを失った僕はその直後にいくつかポジションを落としていました。また、リアのトーリンクにダメージを負ったようにも思いました。ここから最終ラップのターン4まではすべて左コーナーです。マシーンがドリフトするため、さらにマーブルを拾ってしまいました。このときはレースを走りきることだけを考えていました。けれども、右コーナーのターン5に進入したとき、左リアタイアに大きな荷重がかかり、これでトーリンクに問題が起こってしまったようです。ここはとてもトリッキーなコーナーで、僕は内側のラインをキープしようとしましたが、残念ながらひどいスナップオーバーが急に起こり、クルマ1台分くらい大きく横滑りしてしまいます。
このとき、ちょうどダリオが僕をオーバーテイクしようとしていたので、ハイスピードで接触した2台によって大きな事故が起きました」

琢磨のマシーンはコースを横断したところで停止したが、その側面に前方が見えていなかったEJヴィソのマシーンが激突する。
「ものすごい衝撃でした。マシーンの右側は大破し、ベルハウジングまで大きな穴が貫通していました。それは、2002年のオーストリアGPを思い起こさせるようなアクシデントでしたが、ニック・ハイドフェルドがマシーンの弱い部分に突っ込んできたのに対し、EJが接触したのが頑丈な部分だったことは幸いでした」

「衝撃はとてつもなく激しかったのに、シェルにはまったくダメージがありませんでした。僕は軽い打撲傷を負いましたが、大したことはなく、最新のシャシー設計の素晴らしさに大いに感謝しています」

「いちばん心配なのは、ダリオ、ケガをされた13名の観客、そしてインディカーのオフィシャルたちで、一刻も早いご回復をお祈りしております。日曜日の夜11時ころ、足首の手術に成功したダリオのもとを訪れました。彼は本当に強い男で、ジョークを言ったり笑顔を見せてくれたりしました。麻酔の影響で軽い目まいを起こしているようでしたが、笑い合って話せたことで、僕はようやく胸を撫で下ろすことができました。彼が1日も早くコクピットに戻ってくることを願っています」

幸いなことに、2週間後にカリフォルニアのフォンタナ・スピードウェイで開催される2013年最終戦に琢磨は出場する予定だ。
「ヒューストンのレースの直前に、僕たちはフォンタナでテストし、いい結果を得ているので、そこでもパッケージが好調であることを期待しています」

 

2013年 スーパーフォーミュラ第6戦 菅生 レース結果

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スーパーフォーミュラ第6戦 菅生
予選(9月28日)8位:8番グリッドに好感触をつかむ
決勝(9月29日)11位:波乱のレースを11位で完走
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● 予選
【佐藤琢磨のコメント】
「昨年に続いて、ここスポーツランドSUGOに帰ってきたわけですが、去年に比較してチームのエンジニアリングが進化したことに驚きました。昨年は、山本選手とわざと異なるセッティングで走り出して、良いところを探らなければならなかったのですが、今日のプラクティスではほとんど同じ状態で走り出して、お互いに試したことのいいところ取りをして予選に臨みました。ただ、予選は難しかったです。
というのも、今日は非常に路面が汚れていて、レコードラインが1本しか残っていない状態だったからです。そこを少しでも外れると土埃で挙動を崩してしまう。Q1、Q2、Q3と順調に進出出来たのは良かったんですが、Q3では最初にリヤを滑らせてしまって、それを取り戻せないまま終わってしまいました。そういう意味では、クルマは非常に良く仕上がってきていたのでもっと前のポジションに並べたはずと残念です。でも久しぶりに国内トップフォーミュラの予選を楽しみました。山本選手とのデータの共有もスムーズになったので、これからチームと明日のレースセッティングについて話し合います。明日はこのポジションからさらに上を目指して、良い戦いができると思います。」

● 決勝(66Laps)
【佐藤琢磨のコメント】
「朝のウォームアップ走行では、昨日の延長上にクルマが良くなっていて、手応えを感じました。それで、スタートではジャンプアップを狙っていきました。ここは抜きにくいサーキットですし、スタートでできるだけ前に出てレースを始めたかったからです。ただし、路面コンディションの影響もあって、スタートでは過大なホイールスピンを抑えようと狙いましたが、結果的にエンジンをストールさせてしまいました。ここはサーキット全長が短い為に、レースに復帰したときにはちょうど周回遅れになってしまったのは残念でした。何度もセーフティーカーの入る荒れたレースで、最後尾から少しでも順位を上げられたことは良かったと思いますが、チームも好調だっただけに、スタートの失敗でレースを台無しにしてしまったのは残念です。次は最終戦の鈴鹿に出場します。春に走ったデータもありますし、今回もポジティブな側面は多かったので、再び鈴鹿に戻ってレースできることを楽しみにしています。」

 

2013年 第16戦 ボルチモア マーカス・シモンズ レースレポート

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第16戦 ボルチモア
トンネルの出口は見えたのか?
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朗報だったのは、ボルチモアでの佐藤琢磨がここ数戦よりはるかにコンペティティブになったこと。あまり好ましくない報せは、好調だったのがたった3周に過ぎなかったことにある。

佐藤琢磨とNo.14をつけたAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダは、IZODインディカー・シリーズ・レースのオープニングラップで8番手を走っていたが、エンジン・トラブルが発生したため、メリーランドで行われた市街地レースからリタイアに追い込まれることとなった。シーズン半ばの悪い流れは、どうやらまだ断ち切れてはいないようである。

「ボルチモアには大いなる期待を抱いてやってきました」と琢磨。「昨年、チームも僕もここでコンペティティブな戦いを演じていたので、今年も力強く戦えると考えていましたし、チームのスタッフもこのレースを楽しみにしていました。ただし、タイアのスペックが変わり、コンディションも異なっていたので、新たなチャレンジでもありました」

「最初と2回目のセッションは順調でした。僕たちはベーシックなセットアップに取り組んでいましたが、とてもポジティブな印象でした。
ロードコースで行われた過去2戦よりはるかに好ましい状況です。また、2013年スペックのタイアをこのサーキットにマッチさせる作業も行いましたが、これも順調に進みました」

琢磨は第2セッションで8番手のタイムをマークしてイベント初日を終えた。「今回も大変な接戦でしたが、僕はいつもボルチモアのレースを楽しんできました。ただ、ここでは常に運に見放されてしまうのです。今年は踏切のところに設けられたシケインが2011年のときと同じレイアウトに戻され、3つの高い縁石が作られていました。ここはとても難しく、マシーンを跳ね上げてしまうドライバーが何人もいました。縁石を乗り越えるときは、正しい角度で進入しなければいけないのです」

土曜日の朝は上手くことが運ばなかったものの、予選では競合揃いのグループだったにもかかわらず最初のセグメントで3番手となり、12台が出走する第2セグメントに進出した。「3回目のプラクティスではマシーンにトラブルがあり、それがラップタイムにも反映される形となりました。このため難しい状況で予選に臨むことになりましたが、チームはとてもいい働きをしてくれました」

「予選の第1セグメントは、強力なドライバーが揃ったグループでしたが、とてもうまくいきました。タイムアタックも本当に楽しかった! 僕たちは大きな期待をもって第2セグメントに挑みましたが、ベストラップを記録している最中に赤旗が提示され、残念ながら10番手に終わってしまいました」

もしもそれがなければ、ファイアストン・ファスト6に進出できただろうか? 「それはわかりませんが、第1セグメントでは素晴らしいスピードを記録しました。だから、チャンスはあったと思います」

それでも、決勝日当日のウォーミングアップでフォイトのマシーンは力強い走りを見せていたので、決勝でも好成績を残す望みはあった。「天気予報は雨が降るかもしれないと伝えていたので、最高の気分でした! しかも、ウォームアップでは大きな前進も果たしていたので、とても勇気づけられるとともに、強い手応えを感じるセッションでした。多くのドライバーが硬めのブラックタイアを使っているとき、僕たちは2番手か3番手につけていました。その後、ほかのドライバーが柔らかめのレッドタイアに交換すると8番手まで落ちましたが、マシーンのバランスはとても満足がいくもので、午後に行われるレースを楽しみにしていました」

コース上に“踏切シケイン”があったこともあり、ボルチモアのスタートは2列縦隊で並んだいつものローリングスタートとはいささか様子が異なるものとなった。今年、ドライバーたちは3列に並んでいたが、スタートラインを横切ったとき、10番グリッドの琢磨と並んでいるドライバーは誰もいなかった。けれども、このおかげで琢磨は前方のドライバーたちを追い越すに足る勢いを手に入れることになり、ターン3ではライアン・ハンター-レイとトリスタン・ヴォウティエをアウト側から仕留めると、その出口ではスピードを落としたエリオ・カストロネヴェスをオーバーテイクすることになった。これで7番手となった琢磨は、チャーリー・キンボールに迫っていった。

「スタート直後は、下り坂のうえにブレーキングゾーンにバンプがあり、さらにはターン1に向けてコース幅がぎゅっと狭くなっていたため、とてもトリッキーな状況でした。だから、僕にできることといえば、慎重に進入してアクシデントに巻き込まれるのを避けることと、次のコーナーにいい態勢で進入できるよう準備を整えることしかありませんでした」

「ターン3は入り口がとてもワイドなため、いろいろなチャンスが手に入る素晴らしいコーナーです。舗装はコンクリートですが、なぜかグリップは良好でした。ここはいろいろなラインが選べるので、レースをするには最高の場所です。このため、誰もがまるでツーリングカーレースのような接近戦を演じていました。僕はブレーキングでアウト側に回り込むチャンスを手に入れ、コーナーの出口にかけていいポジションにつけていました。結果的に7番手まで上がれたのですから、完璧なスタートだったと思います」

「このコースはブレーキにとってとてもきついので、その後はマシーンをいたわりつつ、タイアを持たせるとともに、燃費にも気をつけながら周回していきました。これにはスリップストリームを活用することも重要ですが、前のクルマにあまり近づきすぎると、ブレーキの冷却に問題を抱えることになります。けれども、すべては順調にいっていました」

「ところが、4周目にシケインから脱出しようとしたところ、急激なパワーダウンに見舞われました。エンジンにトラブルが発生したようだったので、ピットに戻って問題を解決しようとしましたが、残念ながらリタイアに追い込まれることになりました」

とても悔しい結果だったが、大荒れに荒れたボルチモアのレースでは好成績を残すチャンスもあっただろう。「これで僕たちもまともにレースを戦えるようになると、スタッフ全員が期待していました。残念で仕方ありませんでしたが、少なくとも僕たちがコンペティティブであることははっきりしました。これはとても重要なことです」

「今回はとても荒れたレースになりました。かりにフィニッシュできたとして、何位になっていたかはわかりませんが、どうなっていたのか、本当に知りたいと思います。でも、いまの僕にできることといえば、状況を大きく変えるハードワークをこなし、コンペティティブなマシーンを用意してくれたスタッフたちに感謝することだけです」

インディカー・シリーズはここから5週間のブレイクに入る。そして次戦はAJフォイトのホームタウンであるテキサスはヒューストンの市街地コースで開催される。ただし、9月29日に菅生で開催されるスーパーフォーミュラ・シリーズにチーム無限から挑む琢磨には、休息をとる余裕はほとんどない。

「来週はインディアナポリスで予定が入っています。それから日本に帰っていくつかの仕事をこなしてからアメリカの西海岸に戻り、フォンタナで行われるインディカーのテストに1日参加。その日の深夜便で日本に戻り、すぐに仙台に向かいます。その後は菅生でレースウィークエンドに突入することになります!」

「フォンタナのテストがうまくいくことを願っています。そして菅生が終わるとヒューストンのレースに挑みます。これはチームのホームレースで、(今年前半に体調を崩した)AJが久々にピットスタンドに戻ってくるイベントとなります。たくさんのスタッフが家族を連れてくるので、いいレースとなることを期待しています」

 

2013年 第15戦 ソノマ マーカス・シモンズ レースレポート

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第15戦 ソノマ
ふたつのアクシデントに巻き込まれる
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佐藤琢磨をIZODインディカー・シリーズのポイントリーダーに押し上げた目映いばかりの春は終わり、陰鬱な夏は数多くの不運とアクシデントを琢磨にもたらした。したがって、もしもカリフォルニアの“ワイン・カントリー”で素晴らしい走りができたなら、それは新しいシーズンの素晴らしい幕開けとなったことだろう。ところが、苦労の末にマシーンを仕上げた琢磨とAJフォイト・レーシングは鮮やかにトップ10を走っていながら、避けきれないアクシデントのため入賞のチャンスを逃したばかりか、続いて起きた「逃げ場のない事故」のためリタイアを余儀なくされた。悲しい夏のスランプは、まだその勢いを失っていないようである。

琢磨とAJフォイト・レーシングはマニュファクチュアラー・テストとオープン・テストのふたつに参加してソノマのレースに備えたが、前者にはほぼ全チームが、そして後者にはすべてのチームが参加したため、結果的には全体的なコンペティションのレベルを押し上げることにしか結び付かなかった。

「マシーンのことを学ぶにはとてもいい機会で、たくさんのアイテムを試しました」と琢磨。「ミドオハイオのレースが終わってから、僕たちは高い戦闘力を取り戻せるよう強く希望していましたが、バランスとグリップについていえば、どちらのテストでも満足のいくレベルには到達しませんでした。それでもいろいろなことにチャレンジし、間違いなく進歩もしましたが、レースウィークエンドを迎える前に行わなければいけないことはたくさん残っていました」

「ソノマは、コースレイアウトの面だけでなく、舗装の面でも、丘の上という地形の面でもトリッキーなサーキットです。午前中から午後にかけて風向きは180度変化するほか、日中に吹く風は砂やホコリを路面に向けて巻き上げるため、コースコンディションは目まぐるしく変化します」

「それに加えて、今回ファイアストンは新しいタイアを持ち込みました。これは、新品の状態では高い性能を発揮しますが、デグラレーションがとても大きいので、タイアの使用本数が限定されているとテストはとても困難なものになります。せっかくセッティングを変更しても、コースコンディションもそのたびに変わってしまうので、比較テストを行うのは非常に難しいのです。これは誰にとっても同じことですが、僕たちは満足のいくセッティングを見つけられませんでした」

フリープラクティスを通じて各チームが前進を果たすなか、当初の苦しい状況を考えれば琢磨も徐々に戦闘力を取り戻していった。
その結果、予選の第2セグメント進出まで、ポジションにしてあとひとつ、タイムでは0.15秒差まで追い上げたことは立派な成果だったといえる。こうして、琢磨は13番グリッドからレースに挑むことが決まった。

「少しずつ、僕たちが進むべき方向が見えてきました。そして走るたびに状況はよくなっていきました。十分な速さだったとはいえませんが、昨年のソノマにおけるチームの状況を考えると、大きな進歩を遂げたといえるでしょう」

「レッドタイアが十分なグリップをもたらしてくれると期待して、僕たちは予選に臨みました。今回も、いつもと同じく大変な接戦となりました。第2セグメントに進出できなかったのはもちろん残念ですが、フィーリングは少しずつ改善されていました。それに、ある意味で13番グリッドはベストなポジションともいえます。なぜなら、第2セグメントに進めば、そこでもレッドタイアを使うことになるからで、11番グリッドや12番グリッドを手に入れるためにレッドタイアを使ってタイアの割り振りで苦労するよりも、その直後のグリッドから新品のレッドタイアをたくさん携えてスタートするほうが戦略的には有利だと考えられます」

「僕たちは、最初のスティントをプライムのブラックタイアで走り、そのまま集団に留まりながら走行してからレッドタイアに交換する作戦をよく用いますが、ソノマはオーバーテイクがとても難しいので、プライムタイアでスタートすることには大きなリスクが伴います。なぜなら、ひとたびレッドタイアを履くライバルたちに抜かれると、順位を取り戻すのは不可能に近いからです。でも、レッドタイアだったらポジションを守ることができるし、うまくいけば順位を上げられるかもしれません」

スタート直後、この作戦はうまくいきそうな展開になり、オープニングラップで琢磨は11番手まで駒を進める。レース序盤のコーション・ピリオドでは、トニー・カナーンに対してリスタートでポジションを落としたものの、琢磨はすぐさまふたつ順位を上げてトップ10入りを果たした。別のリスタートではマルコ・アンドレッティやカナーンと好バトルを演じたのに続き、次にイエローが出るまでに9番手となり、非常に好調そうに思えた。

「ソノマでは信じられないほどオーバーテイクが難しいので、ほとんどの場合、チャンスがやってくるのはリスタートのタイミングとなります」と琢磨。「誰もがとてもアグレッシブでした。たくさんのクルマに、タイアと接触した跡が残されていて、僕はバトルを楽しみました! けれども、困ったことが起きたのは、その後のことでした」

その事件は、3回目のリスタートでグレアム・レイホールがスピンしたことをきっかけにして起こった。カナーンとバトルをしていた琢磨はコース中央を走行していたため、完全に行き場を失ってしまったのだ。

「ターン1からターン2にかけて、3ワイドや4ワイドになりながら丘を駆け上がり、エキサイティングなバトルをしていました。ものすごく混み合っていましたよ! ターン3の進入でスピンしたグレアムはコース上に戻ってくると、横滑りしながら丘を登っていきました。TKと僕はサイド・バイ・サイドをしていて、レイホールのマシーンはコースの右側、僕は真ん中で、そしてTKは左側にいました。もしも僕が左に進路を変えていたらTKと接触していたことでしょう。したがって唯一の望みは、グレアムのマシーンがコースの外側に移動していって、僕がふたりの間をすり抜けていくことでしたが、そうはなりませんでした。僕はグレアムのフロントウィングに乗り上げる形となり、右フロント・サスペンションにダメージを負ってしまいます。とにかく、2台横並びになっていたので、まったく避けようがありませんでした」

ピットに戻ってきたマシーンをAJフォイト・レーシングは懸命にリペアしたが、このため琢磨は大きく遅れたため、残り周回数はいくらかでもポイントの上乗せを狙うか、別のセットアップを試すために費やされることとなった。

「データ収集のためには、少しでも多く走行することが重要でした。いずれにせよ、僕はコース上に留まらなければいけなかったので、レースを戦っている他のドライバーには進路を譲らなければいけませんでした。それでも、時にコース上でオーバーテイクすることがありました。僕のマシーンがこのような反応を示すことにはとても勇気づけられましたし、ブラックタイアでもレッドタイアでもいいパフォーマンスを示すことができました」

レース終盤、チャーリー・キンボールが琢磨のマシーンに突っ込むというアクシデントが発生し、これで琢磨の戦いは完全に幕を閉じる。「チャーリーはターン7の出口でスピンして、コースの真ん中に止まっていました。アクシデントを避けようとしてたくさんのマシーンがアウトサイドやインサイドに進路を変えていきました。僕はインサイドに行きましたが、ちょうどそのとき、彼はスピンターンを始めたのです! 本来、そんなことはすべきではありません。チャーリーのマシーンは進行方向とは180度逆を向いて止まっていたので、次々と迫ってくるマシーンの姿を彼は目の当たりにしたことでしょう」

次のレースは、1週間後に大陸の反対側で開催されるボルチモア戦となる。この、東海岸の大好きな市街地コースで、これまでの身の毛もよだつような不運の連鎖に終止符が打たれることを琢磨は期待している。「非常にタフで、残念な結果に終わったロードコースのレースが2戦続いたので、ボルチモアのレースを楽しみにしています。ボルチモアでは、楽しくてエキサイティングなレースが毎回のように繰り広げられるので、まずはインディに戻って荷物をまとめ、大きな希望を持って旅立つことにします」

 

2013年 第14戦 ミドオハイオ マーカス・シモンズ レースレポート

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第14戦 ミドオハイオ
繰り返された“不運の連鎖”
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シーズン半ばの慌ただしい連戦を終えたIZOD インディカー・シリーズは3週間のブレークを迎え、ここのところ苦戦続きだった佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングは反撃のチャンスを虎視眈々と待ち構えていた。では、休み明けに開催されたミドオハイオはどんなレースだったのか?良かったのは、No.14をつけたダラーラ・ホンダがフィニッシュまで着実に走りきった点。そして悪かったのは、テストでトラブルを抱え込んで以降、ペースが伸び悩み、レースを22位で終えたことだろう。
「ものすごく苦しい週末で、とにかくスピードが伸びませんでした」 琢磨はそう振り返る。

チームは、穏やかな起伏が続くこののどかなコースでテストを行ない、レースに備えようとしたが、大した情報は手に入らなかった。
「今回はオープンテストだったのでほとんどのチームとドライバーが参加しました。しかし、使えるタイアは3セットだけで、午前中はチョイ濡れのコンディションでした」

「ミドオハイオはトリッキーなコースです。コース幅が狭く、曲がりくねっているところもそうですが、コースコンディションが大きく変化することは信じられないくらいです。市街地サーキットではコースコンディションが改善されていくことがよくありますが、今回のミドオハイオは、通常67秒程度のラップタイムがそれより8秒も遅かったほどです! 舗装の状態とそれに対するタイアの反応により、グリップがまるでなく、コースのそこらじゅうでマシーンが滑っているような状況でした。このスピードではマシーンをセットアップするのはほぼ無意味で、その日の午後までテストプログラムを始めるのを待たなければいけませんでした。チームは、タイアのコンパウンドや構造が変わっていたこともあり、昨年彼らが用いたセットアップと2013年仕様のセットアップを組み合わせたものを用意していました。このときは順調に前進していくつかのことを学び、トップ10に食い込める自信を抱きました」

しかし、金曜日のフリープラクティスになると、様々な問題が噴出し始める。
「まるでスピードが伸びませんでした。45分間のセッション中にコースコンディションは3〜4秒も速くなるほど改善されましたが、僕たちはギアボックストラブルのため早々と走行を打ち切りました。これは2回目のプラクティスセッションに向けて厳しい状況を作ってしまいましたが、さらにはギアボックスに別のトラブルも起きてしまいます。3回か4回コースインして、1ラップずつ計測できましたが、この程度の走行量でマシーンを進化させることは不可能です」

負のスパイラルは土曜日朝のプラクティスでも繰り返された。
「新しいブレーキを馴らす状態に不具合がありました。セッション序盤は再びチョイ濡れで、ひどく滑りやすいコンディションです。マシーンはとてもドライブしにくい状況でした。ターン2の進入でブレーキを踏みましたが、まるで何も無かったかのようにまったく食いついてくれなかったのです。温度が低かったうえに、車高の影響もあって、クルマが底打ちをしながら滑り始めるとまったく止めることができませんでした。もともとグリップは低い状態でしたが、濡れたグリーン上はゼロに等しかったです!マシーンはウォールに接触してダメージを負ったので、ピットに戻り、予選に向けて修復作業を行うことになりました。この時点まで、2周以上の連続の計測ラップを行えていないという酷い状態の週末を迎えていました」

それでも、希望を持てることがひとつだけあった。このように様々なことがありながらも、琢磨は予選グループで8番手となったのだ。
Q2進出に必要だったタイム差が0.1秒となかったのは素晴らしい努力だといえる。この結果、琢磨は15番グリッドからレースに挑むことになった。
「第2セグメントに進めなかったのは残念ですが、メカたちが懸命に努力してここまで立ち直れたことは嬉しく思っています。予選ラップではベストを尽くしましたし、状況を考えればスピードは悪くありませんでしたし、少なくともある程度のペースまで乗せることができましたから。けれども、予選でも赤旗が提示されてセッションが中断されました。もう、ほかの何はなくても、もっと周回数が欲しかったですね!」

決勝日のウォームアップでは再び運が下向きとなる。チームが考え出した新しい方向性のセットアップを試したが、
「ひとつだけよかったのは、これがまったく使い物にならなかったということが確認できただけ」という状態だったのだ。
「ただし、テストする時間はもう残されていなかったので、予選で走った状態をベースとしたセットアップに戻すことにしました。ただし、これで決勝を戦えるかどうかはまったくわからず、状況が少しでも改善されればと期待してレースに臨みました」

琢磨は素晴らしいスタートを決めたものの、その後は、早めにピットストップしてファイアストンのブラックタイアをレッドタイアに交換するまで、ずるずると順位を落としていった。
「グリッド上ではブラックタイアを履いたドライバーとレッドタイアを履いたドライバーが混在していました。僕は、スタートは良かったのですが、2周目にはエリオ・カストロネヴェスに抜かれ、その後は次々とポジションを下げていきました」

「マシーンが本調子でないことはすぐにわかりました。ほとんどコース上に留まっているだけのような状況だったので、とても長い午後になると覚悟していました。しかも、コースコンディションは急速に変化し、ハンドリングのバランスシフトも起きていましたが、とにかく僕たちはスピードが不足していました。最初のスティントをごく短くし、残る3スティントはすべてレッドタイアで走ることになりました。これでグリップはよくなりましたが、あくまでもそれは相対的な話で、十分なスピードとはいえません。できることはすべて試しましたが、ついに満足のいくスピードは手に入りませんでした」

「レース終盤に向けてコースコンディションが改善され、僕たちのマシーンも高いグリップを発揮して、しっかり走ってくれるようになりました。ところが、このときはすでにラップダウンになっていたほか、ピットストップでも問題が起きていました。まったく、僕たちにはどうにもできない週末でした」

これが終わると、琢磨たちは再び3週間のブレークをとって体制を立て直し、8月26日にカリフォルニアのソノマで開催されるレースに出場する。今回は2日間のテストも予定されているので、シーズン半ばの再スタートとなることを期待したところだ。

「次回もロードコース用タイアを使うことになりますが、僕たちにはまだ把握できていないことが多いようです。ソノマはアップダウンの多いコースなので、できればロードコースのセットアップに新たな進化をもたらしたいと思います。来週はホンダのテストデイ、続いてオープンテストが予定されているので、これは僕たちにとってボーナスのようなものです」

 

2013年 第13戦 トロント 第2レース

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第13戦 トロント(カナダ)第2レース
予選(7月13日)15位:14番グリッドより出走
決勝(7月14日)20位:残り2周でアクシデントに巻き込まれリタイア
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ホンダ・インディ・トロントの第2レースにおいて、佐藤琢磨はトップ10フィニッシュを目指して走行していました。ところが、全長1.7マイル(約2.72km)のタイトな市街地コースで繰り広げられるレースが残り2周となったとき、2列に整列してから行われるリスタートでドラマが起き、琢磨とABCサプライ・チームは失望を味わうこととなりました。

ウィル・パワーとライアン・ハンター-レイのふたりが目前で接触したため、琢磨はチェッカードフラッグを見ることができませんでした。直前のスタート・フィニッシュ・ラインを9番手で通過した彼は、ターン1で行き場を失い、続いて接触の憂き目に遭いました。

予選を15位で終えた琢磨は、ライバルの1台がドライバー交代により後方グリッドからのスタートとなったため、14番グリッドからレースに臨みました。この日のレースでは、前日インディカー・シリーズの主催者から発表があったとおり、スタンディングスタートが採用されました。琢磨は得意のスタンディングスタートでポジションを上げると、1周目が終わったときには10番手となっていました。

最初のピットストップを25周目に行うまでに琢磨は7番手へと浮上し、57周目に次のピットストップを行うときまで7番手を守り続けました。その後、全員がピットストップを終えたとき、琢磨は7番手に返り咲くはずでしたが、それよりも早くフルコーションとなったため、このタイミングでピットストップしたダリオ・フランキッティは運良く順位を上げることに成功します。

琢磨は8番手からリスタートしましたが、後続の2台がレッドタイアを装着していたため、ブラックタイアを履く琢磨は順位を落とします。85周レースの81ラップ目にエド・カーペンターのクラッシュによりフルコーションとなったとき、琢磨は10番手につけていました。そして83周目に再スタートが切られ、琢磨はウォールと接触してレースを終えました。リザルト上は20位とされましたが、過去4レースでいずれもリタイアを喫した琢磨はポイントスタンディングで13番手となっています。


【佐藤琢磨のコメント】

「スタンディングスタートは最高でした。とても楽しく、またポジションも上げることができました。昨日に比べるとマシーンの状態はよくなっていたので、今日はトップ10を狙えると期待していました。僕のマシーンを速くしてくれたメカニックとエンジニアに感謝していますが、まだトップグループには離されているので、さらに努力をしていく必要があると思います。
最後のリスタートは大混乱に陥りました。第1ターンをアウト側から無事にクリアできそうでしたが、実際にはたくさんのクルマが集中しており、僕は行き場を失いました。そこで玉突き状態となり、僕は逃げる場もなく接触しました。とても不運でした。今日はほとんどの周回をトップ10圏内で走行していました。みんなは本当によく頑張ってくれたのに、残念な結果に終わってしまいました」

 

2013年 第12戦 トロント 第1レース

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第12戦 トロント(カナダ)第1レース
予選(7月12日)12位:第1レースは11番グリッドより出走
決勝(7月13日)24位:排気系トラブルのためリタイア
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●第1レース予選
トロント・エキジビション・プレイスにおいて開催されるダブルヘッダーレースの第1レースの予選で、佐藤琢磨とABCサプライ・チームは12番手で予選を通過。これは、全長1.7マイル(約2.72km)の市街地コースで得た成績としては過去2番目に優れたものでした(過去最高位はいずれも昨年記録しており、琢磨は9番手、ABCサプライ・チームは11番手だった)。

ただし、予選5位となったドライバーに10グリッド・ダウンのペナルティが科せられるため、琢磨は11番グリッドから明日のレースに臨むことになります。

今朝のプラクティスではいくつかのトラブルが発生し、90分のうちのおよそ1/3は走行できませんでした。それでも、琢磨は予選に向けたセットアップの方向性を見つけ出すと、これをエンジニアに伝えました。

チーフエンジニアのドン・ホリデイはこのコメントをもとにセットアップを全面的にやり直し、マシーンを大幅に改良しました。

ノックアウト方式予選のラウンド1において、琢磨は12台が属する予選グループで3番手となりました。そしてラウンド2のセッション終盤、ファイアストン・ファスト6への進出を目指して琢磨がアタックを開始したところ、ターン1でマシーンがボトミングして宙を舞い、そのままタイアバリアに激突、左フロント・サスペンションとフロントウィングにダメージを負いました。これでセッションは赤旗中断とされ、その原因を作った琢磨はペナルティとしてふたつのベストラップが削除されました。この結果、琢磨の公式な予選スピードは101.2mphとなりましたが、これはこのセッションにおける本来のベストラップより3mph(約4.8㎞/h)も遅いものでした。

この後、チームは土曜日の朝に行われるレース2の予選に臨みます。このセッションは、プラクティスのスピードでふるい分けたふたつのグループごとに実施されます。琢磨は偶数順位のドライバーが出走するグループ2に挑みます。各グループは12分間のセッションを行い、その最速タイムによってスターティンググリッドを決定します。

朝の予選セッションが終わると、チームは第1レースに向けた準備を行います。この第1レースでは、IZODインディカー・シリーズでは初の試みとなるスタンディングスタートが採用されます。1周のフォーメーションラップを終えたところで各車はスターティンググリッド上に停止。シグナルが点ったところでスタートが切られます。土曜日のレースは85ラップで競われます。


【佐藤琢磨のコメント】

「今朝のセッションではいくつかの問題が発生しました。走り始めた段階では、マシーンがコースにあまりマッチせず、プラクティスではたくさんの変更を行いましたが、その後もさらにトラブルが発生し、時間を使い果たす結果となりました。
予選に向けてもさらに変更を加えていき、レッドタイア装着時のグリップを上げられるようトライしたところ、これを達成できました。セグメント1でさらにマシーンは進化し、次第に乗りやすくなってきたので、ハードにプッシュできました。ところがセグメント2に入ると、いつもは軽く触れる程度だったターン1進入のバンプで激しくボトミングしてしまい、タイアバリアと接触してしまいました。
残念な結果に終わりましたが、明日も予選セッションはあるので、もう一度進化を果たしたいと思います」

 

2013年 第11戦 ポコノ マーカス・シモンズ レースレポート

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第11戦 ポコノ
4番手を走行中にまさかのアクシデント
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1989年以来、久しぶりにポコノで開催されたインディカレースにおいて、佐藤琢磨は滅多にない種類のアクシデントを起こし、実に悔しい思いを味わうことになった。

AJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダを駆る琢磨は、6台で構成されるトップグループの4番手を走行中、この日のファステストラップとなる218.320mph(約349.3km/h)をマークした直後に、それまでトップ争いを演じていたライアン・ハンター-レイとピットレーンで接触してしまったのである。

それまで、すべては順調だった。これ以前に行われた2度のテストには参加しなかったものの、琢磨とAJフォイト・レーシングは木曜日に実施されたセッションで侮りがたいスピードを発揮すると、土曜日のプラクティスでも力強い走りを示していた。

「ポコノは素晴らしいコースで、魅力的な会場です」と琢磨。
「コースの形状はトライオーバルと呼ばれるもので、コーナーの性格はすべて大きく異なっています。ハイバンクのターン1は大きく回り込んでおり、230mph(約368km/h)に達するストレートエンドから進入するととてもトリッキーなうえ、コース幅も狭くなっています。軽いキンクのあるターン2はほとんどストレートと見なせますが、それでも誰かに続いて進入するとものすごくトリッキーです。資料によれば、ターン3のバンク角は6度だそうですが、実際に走るととてもフラットで、コーナーのアウト側に滑り落ちそうになります」

「このコース全体がドライバーとエンジニアにとっては大変なチャレンジとなることはいうまでもありません。通常のオーバルコースでは、どのコーナーも速度域やバンク角がとてもよく似ているため、完璧なセットアップを追求することになります。けれども、このコースではいくつかの部分に分けて考える必要があります。たとえば、ターン1とターン3ではまったく特性が逆で、ターン1では強いアンダーステア傾向ですが、ターン3ではニュートラルからオーバーステア傾向となります」

「レース前の木曜日にテストができたことはとてもよかったと思います。いくつかのチームは4月に、そしてまたいくつかのチームは火曜日にテストを行なっていました。まったくテストをしなかったのは、僕たちを含め、ごく一部です。走り始めて最初に気づいたのは、僕たちのベーシックなセットアップがこのコースでは有効であるということ。そこで僕たちはこれを基本にセットアップ作業を進めることができ、とても効率的でした」

土曜日に1回のみ行われたプラクティスでは予選シミュレーションを1度だけ試し、続く公式予選では8番手のタイムをマークした。
「このときはものすごく満足できました。やるべきことはなにひとつ残っていないように感じられたほどです」

日曜日の午前中には“予選後プラクティス”という名の、実質的なウォームアップ・セッションが実施されたが、ここで琢磨は2番手のタイムを記録した。
「このときはレースシミュレーションに近いことを行いました。僕たちは集団になって走行したので、このタイムを鵜呑みにするわけにはいかないでしょう。僕は強力なトウ(スリップストリーム)に助けられていたからですが、それでもタイムシートの上位に名を連ねるのは悪い気分ではありません。レースコンディションでは、スタビリティを確保するためにもっとウィングを立てる必要があると予想されましたが、基本的なセットアップは良好で、僕は満足していました」

「それにしても1ラップを走るのにとても忙しいコースです!コーナーの性格が異なることから、僕は1周の間にアンチロールバーやウェイトジャッカーをこれほど激しく使うことは今まで経験したことがありません。たとえば、ターン1ではフロントのアンチロールバーを軟らかく、リアを硬くして、ターン3ではその反対に調整する必要がありました。日曜日の決勝レースでは同じ操作を毎周やらなくてはいけなくなりそうな感じです」

レースが始まると、ジェイムズ・ヒンチクリフがクラッシュしたために琢磨は6番手に浮上。続くリスタートではエリオ・カストロネヴェスをパスし、あっという間に5番手に立った。やがて6台で構成されるトップグループは徐々に後続を引き離していく。そして最初のピットストップがグリーンのまま始まったときも、琢磨は引き続き5番手につけていた。

ウィル・パワーがピットストップを行ったときには、フォイト・チームの絶妙な働きぶりにより、パワーが本来のスピードに到達する前に琢磨はこれをオーバーテイク。その1周後にはトニー・カナーンを攻略して3番手につける。この結果、前を走るのはマルコ・アンドレッティとハンター-レイのふたりだけとなった。

「エリオとは何度か抜かしたり抜かされたりになりました」と琢磨。
「スタートとその直後のリスタートはうまくいき、そこから徐々にポジションをあげていくことができました」

「しばらくすると、順位を上げるのが少し難しくなりましたが、僕は速いクルマを追い続けました。トップグルーブに混じって走るのは気持ちよく、僕は次のスティントで何が必要になるかを考え、その準備をしていました。最初は十分なグリップ力があると考えていましたが、やがてトップスピードを伸ばす必要を感じてきたので、最初のピットストップでは少しウィングを寝かせることとしました」

残念なことに、一旦は周回遅れの影響でトニー・カナーンに抜かれて4番手となったが、心配には及ばない。
「ちょっと行き場を失ってしまったけれど、問題ありません。レースはまだ長く、スピードを取り戻せることもわかっていました。トップを走るマルコの姿はまだ見えていたし、ライアンが彼を追っていて、さらにTK、僕と続いていました。また、次のピットストップではもう少しセットアップを変更する計画も立てていました」

2回目のピットストップもグリーン中に行われたが、ここからすべてが悪い方向に流れていってしまう。
「とにかく、攻め続けるしかありませんでした。最初のピットストップでは、ピットレーン進入時に少し減速しすぎたと感じていたので、2度目のピットストップでは進入速度をもう少し速くし、ギリギリの線を狙うつもりでした。また、次のピットストップが間近に迫っていることもわかっていました」

「しかし、僕は判断を誤ってしまった。。僕が気づいたときには、ライアンにものすごいスピードで近づいていました。そこでさらにスピードを落とそうとしたところホイールがロックし、マシーンがスライドして彼と接触してしまいました。これは本当に残念でした。ライアンとアンドレッティ・モータースポーツには申し訳ないことをしたと思っていますし、今週末もトップ争いを演じられるマシーンを用意してくれたメカニックたちにも謝らなければいけません」

しかし、レースの世界では何もかもすぐに忘れ去られていく。ここは、トロントの市街地コースで来週開催されるダブルヘッダー・レースについて考えた方がいいのではないか?
「一刻も早くコクピットに戻りたいですね。これまでエキサイティングなオーバルレースをいくつか経験して、チャンピオンシップのことを考えるとシーズンはとても重要な時期に差し掛かっていると思います。僕たちの強さについては自信があります。僕たちはトロントのレースを懸命に戦い、最高の結果を手に入れたいと思います」

 

2013年 第10戦 アイオワ マーカス・シモンズ レースレポート

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第10戦 アイオワ
来年こそ、いいレースになることを祈って・・・。
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IZODインディカー・シリーズは“初夏のオーバルレース・ラウンド”に突入した。そして残念なことに、佐藤琢磨も“初夏のバッドラック・ラウンド”に突入してしまったようだ。

琢磨とAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダは、ハイバンク・ショートオーバルのアイオワで力強い走りを示したが、結果的にはエンジン・トラブルによりリタイアに追い込まれ、琢磨はポイントスタンディングで4番手から8番手へと転落することとなった。

昨年のAJフォイト・レーシングがこのコースで苦戦していたことを考えれば、琢磨のパフォーマンスはとても良好なものだった。
「最初のプラクティス・セッションは、終盤を迎えるまでまずまず順調でした」と琢磨。「チームにとって昨年のレースはあまりいいものではなかったので、セットアップをがらっと変えることにしました。予定では最後の10分間で予選シミュレーションを行うことにしていましたが、そこまでに僕たちは大きな進歩を遂げていました。残念ながら、ここでエンジンが不調に陥ったため、僕たちは少し早めにプラクティスを終える形となります。この影響でエンジンを交換することになりましたが、おかげで予選シミュレーションができなかったうえに、決勝では10グリッド・ダウンのペナルティを受けなければならないなど、とても残念な展開になってしまいました。ただし、今回は少なくとも予選には出場できたので、これは不幸中の幸いというべきでしょう」

予選を10番手で終えた琢磨は、このレース独自のフォーマットに従い、予選ヒートに出場することになった。ここでは、予選のトップ6は自動的にファイナルヒートへと駒を進めるが、7番手以下のドライバーは2グループに別れ、それぞれの予選ヒートを戦ってスターティンググリッドを決めるという変則的なルールが採用されている。なお、各予選ヒートで上位に入った者は後方グリッドからファイナルヒートへの出走が認められる。

予選で10番手となった琢磨は、8番手だったスコット・ディクソンに続く2番手グリッドからスタートすることになる。琢磨はこのポジションのままフィニッシュしたので、ファイナルヒートに駒を進めることができた。このレースでは当初苦戦していたものの、終盤に盛り返し、最後はトニー・カナーンをオーバーテイクして7位となった。

「予選シミュレーションを行っていないのに10番手となれたことは、チームの奮闘を示すものです。ディクソンがポールで、僕が2番グリッドからスタートした最初の予選ヒートはとても順調にいきました。僕は50ラップのレースでタイアのパフォーマンスがどのように変化するかを見極めようとしました。また、バランスシフトの様子を確認することで、決勝に向けたセットアップも見直すつもりでした。この段階ではまだいくつかの点で満足がいかなかったので、決勝までに再調整を行うこととしました」

「この予選ファイナルヒートではトラフィックのなかでマシーンがどう反応するかをチェックできたうえ、最終的には7番手でフィニッシュできました。特別いいとはいえませんが、まずまずの状態まで仕上がっていたといえるでしょう。ここまでの進歩はある意味で順調でしたが、スピードについてはさらに伸びが欲しいところでした」

10グリッド・ダウンのペナルティを受けた琢磨は17番グリッドからレースに挑むこととなった。ただし、決勝でのオーバーテイクは文字どおり至難の業だった。
「ファイアストンがハイバンク用オーバルのために用意したタイアは、去年までのものよりもずっとデグラレーションが小さくされていました。それでも、ダウンフォースはギリギリまで削っていたので、前のマシーンに接近するのは非常に困難でした」

「最初のスティントでは、オーバーテイクはほとんどできませんでした。そこで最初のコーションまで僕たちは待つことにします。ピットストップでは3台をオーバーテイクしました。メカニックたちの働きぶりは今回も素晴らしいものでした。そしてリスタートでもいくつかポジションを上げられたのです。これはとても楽しかったですよ!」

最初のピットストップを終えたところで、チームクルーの素早いピット作業により琢磨は13番手までポジションを上げていた。リスタート後にはジャスティン・ウィルソンとスコット・ディクソンを攻略。これでポジションをふたつ上げた琢磨は11番手まで順位を上げることに成功する。

「このレースでは好成績が収められそうな展開でしたが、やがてエンジンが不調に陥り、徐々にスピードが伸び悩むようになっていきました。このとき使っていたエンジンは、インディ500のカーブデイと決勝を走っただけのものです。つまり、走行距離は500マイル(約800km)を少し上回る程度で、比較的フレッシュなエンジンでしたが、僕たちは次第に苦戦を強いられるようになります。エンジン・マップやフューエル・マップなど、変えられることはすべて変えましたが、それでも効果はなく、スピードは徐々に落ちていきました。とても苦しい状況で、何とかしてスピードを保つように努力しましたが、最終的にはまったく加速しない状態になってしまったのです」

これは3回目のリスタートでのことで、この時点で琢磨がリタイアするのは確実となった。残念な結果ではあるが、ここは次戦ポコノでの反撃を期待したいところだ。ペンシルヴァニア州に建つユニークな2.5マイル(約4km)のオーバルコースでインディカー・シリーズが開催されるのは1989年以来のことで、幸運にもチームはイベントが開幕する数日前にテストを実施する計画を立てている。しかも! このコースは1973年から1981年にかけてAJが4勝を挙げたこともある、AJフォイト・レーシングにとってはゲンのいいサーキットなのである。

「アイオワは今回も非常に残念なレースとなってしまいました。メカニカル・トラブルでリタイアするのは辛いものです。チームは全力で作業し、僕は懸命にレースを戦った。僕たちは、自分たちのパフォーマンスをフルに発揮できたわけではありませんが、全般的に言えば僕たちは力強く、そしていい成績も残せたと思いますので、この点には満足しています。毎年、僕はアイオワのレースを楽しんでいますが、たくさんのポイントをなかなか持ち帰られないのは残念なことです」

「ポコノではテストを実施する予定なので、チームの誰もがこのコースについて学ぶことができます。見たところ、とてもチャレンジングなコースで、3つのまったく性格の異なるコーナーがありますが、ここでも力強いパッケージングとともに戦えることを期待しています」

 

2013年 第9戦 ミルウォーキー マーカス・シモンズ レースレポート

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第9戦 ミルウォーキー
寸前で取り逃した“オーバル初優勝”
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IZODインディカー・シリーズのなかでももっとも全長が短いコースのひとつであるミルウォーキー・マイルにおいて、何度もチャンピオンに輝いたダリオ・フランキッティを僅差で抑えて7位でフィニッシュしたとしたら、それは立派な成績と捉えるのが普通だろう。ましてや、250ラップを走りきってリードラップでフィニッシュしたドライバーはたったの8人しかいない激戦だったのだ。そして、いかにも彼らしいエキサイティングなレースを戦い終えた佐藤琢磨は、ポイントをたっぷり獲得したのである。

たしかに、そうかもしれない。けれども、もう少しでインディカー・シリーズでの2勝目を、それもオーバルの初優勝という形で手に入れられそうだったのだから、琢磨が大きな失望を味わったのは当然といえる。実際のところ、No.14をつけたAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダはこの日のレースを完全に席巻していた。おかげで、リードラップをもっとも多く走行したドライバーに与えられるボーナスポイント(琢磨は実に109周をトップで周回した)も手に入れたのだが、信じられないほど悪いタイミングでイエローコーションとなったため、琢磨はまたも勝利を取り逃がしたのである。

予選を15位で終えた琢磨は、その影響でトップランナーの多くとは異なるタイミングでピットストップしていたが、この予選結果でさえ、AJフォイト・レーシングにとっては好成績というべきものだった。

「大きな期待を抱いてミルウォーキーにやってきました。このレースをとても楽しみにしていたんです」と琢磨。「このコースは世界で一番古いオーバルで、とてもユニークな性格のため、ここを走るのは大好きです。しかも、バンクがないからクルマをコントロールしながらずっと限界で走り続けることになる。コーナーをアクセル全開で抜けることはできません。とてもチャレンジングなコースです」

「残念ながら、AJフォイト・レーシングはミルウォーキーで好成績を収めたことがなく、驚いたことに今回の15番グリッドはチームのベストグリッドと並ぶものだったようです! だから、チームはここにやってきたとき、少しナーバスになっているようでした。それに、僕のエンジニアであるダン・ホリデイは去年ミルウォーキーに来ていなかったそうです」

「ミルウォーキーのコーナーはとてもフラットです。もちろん左コーナーだけで、ここを150mph(約240km/h)ほどで駆け抜けます。オーバル用のスタッガーを用い、キャンバーも特殊な設定になりますが、コースにバンクがないため、セットアップはロードコースと基本的に同じものを用います」

「最初のプラクティスは30分間ととても短く、クルマのバランスにはあまり満足がいかなかったので、いくつかの部分を調整した結果、2回目のプラクティスではまずまず満足のいく仕上がりとなりました。そこで予選シミュレーションを行ったところ、とても力強い手応えを得ることができました」

「クルマの調子がいいと気分までよくなります。本当に、勇気づけられているような気持ちになるのです。けれども、予選は少し期待とは異なる展開になりました。2ラップ走るうちの1ラップ目(これは総合11番目のスピードでした)はよかったのですが、2ラップ目はターン3でアンダーステアになってしまい、ラインがアウト側にはらんでマシーンが滑り出し、ターン4ではどきっとする状況に追い込まれたのです。スピードも落ち込んだため、これで平均速度が2mph(約3km/h)ほど低下しました。それでもリーダーボードのトップに立ったのは、僕が4番目の出走だったからです。しかも、この段階ではまだ路面が埃っぽかったので、路面がきれいになってから走行したドライバーに次々と先を越され、結局15番手となりました。これはとても残念な結果でした」

決勝レース前のウォームアップは行われなかったが、プラクティスでユーズドのファイアストン・タイアで走行したときのデータから、摩耗したタイアでもタイムの落ち幅が小さいことがわかっていたので、琢磨は自信満々でレースに挑んだ。けれども、タイトなミルウォーキー・マイルでオーバーテイクするのは容易なことではなく、このため、21周目にシモーナ・デ・シルヴェストロがスピンしてイエローコーションとなったときも、琢磨はまだ15番手のままだった。このとき、琢磨を含む最後尾の一団は揃って1回目のピットストップを行うこととなった。

「最初のスティントでの調子はあまりよくありませんでした」と琢磨。「バランスが少しずれていて、順位を上げることができなかったのです。だから、まるで高速列車のように一列に連なって走っていました。最初のコーションが出た時点で、各チームはふたつの戦略に分かれました。僕はピットでクルマをアジャストしてと訴え、ピットアウトしたときにはドンピシャのセッティングになっていました。メカニックたちが素晴らしい働きをしてくれたおかげで素早くピットアウトできたほか、僕はフレッシュタイアを履いていたので、僕とは違う戦略で走るドライバーたちに対して非常に有利な立場に立つことができました」

最初に琢磨がイン側のラインに飛び込んだのは、リスタートでアレックス・タグリアーニがスピンしたのを避けようとしたときのことで、直後にはペースカーが導入された。「ものすごい急減速をしなければいけませんでした。おまけに、スピンしているアレックスと目が合ってしまいました! 彼の大きなふたつの目が、ヘルメットから飛び出してくるんじゃないかと思ったくらいです!(笑)」

琢磨にとっては、ここからが本当のレースとなった。次のリスタートでは瞬く間に12番手まで浮上。そこからさらに順位を上げていき、60周目にはトニー・カナーンを追い越して8番手に、そして64周目にはエド・カーペンターを仕留めて7番手となった。その数周後、トップグループを構成していたドライバーたちが最初のピットストップを行ったため、琢磨はトップに立ったのである。

それから20周ほどを走行したところで琢磨はピットストップ。すぐにコース上でウィル・パワーをオーバーテイクすると、マルコ・アンドレッティのマシーンがストップしたため、再びコーションとなった。これでトップグループが2度目のピットストップを行ったので、琢磨は再びトップに浮上。続いて108周目にグリーンが提示された。

この頃になると琢磨は手のつけようのない速さを示すようになり、30ラップ後にはエリオ・カストロネヴェスを5.5秒もリードすることに成功していた。

「まさに絶好調でした。ドライブしていて楽しくて仕方なく、ほぼ毎周、誰かをオーバーテイクしていました。トップ10に入るまではあっという間で、それからもずっと順位を上げていきました。そしてリスタートでは大きく後続を引き離していったのです」

そして、琢磨はラップダウンになるまいとして懸命にもがくカーペンターの直後につけることとなる。おかげで、これからほぼ10周の間に、カストロネヴェスは行く手を阻まれている琢磨に追いついたのである。
「あれはいささか納得できませんでした。僕がかつて戦っていたF1とインディカーが異なるレースであることはわかっています。インディカーでは、それも特にオーバルでは、周回遅れにならないようにディフェンスすることが認められています。でも、あれから10周にわたって僕は前にいけなかったのだから、少しひどすぎると思いました。コーナー出口での勢いは僕のほうがありましたが、彼らはストレートで非常に速く、仕掛けることさえできなかったのです」

おかげで、次のピットストップは際どい争いとなった。琢磨と同じように早めのピットストップを行っていたカストロネヴェスがまずはピットイン。続いて琢磨がピットストップを終えたとき、琢磨はカストロネヴェスのすぐ目の前でレースに復帰したのだ。しかも、すぐさまアナ・ベアトリスを間髪入れずに攻略した為、琢磨はカストロネヴェスとの間に周回遅れのクルマを置く事にも成功したのである。
「メカニックたちはまたも最高の仕事をしてくれました。しかも、インラップとアウトラップが速かったので、僕はトップの座を失わずに済みました」

それから12周が経過した169周目、他のドライバーがピットすると再び琢磨は首位に立ち、2番手のカストロネヴェスには4.3秒の差をつけていた。ところが、183周目にチャーリー・キンボールを周回遅れにしようとしたとき、琢磨をヒヤッとさせるようなことが起きる。さらに、このとき琢磨の直後にカストロネヴェスが迫っていたことも、何か問題が起きている証拠といえた。

「このスティントに入るまでは、マシーンのバランスとタイアのデグラレーションをうまくコントロールすることができましたが、この頃、急激にグリップが低下するようになっていました。チャーリーの後ろについてターン3に進入しようとしたとき、いきなりリアのグリップを失って、グレイ・ゾーンまで飛び出していったのです。本当にウォールが目の前に迫ってくるほどでした。幸いトップの座は守りましたが、とても苦しい状況になっていました。間もなくライアン・ハンター-レイがエリオをパスして僕に迫ってきましたが、僕にはどうすることもできませんでした。僕は、最後のピットストップを行ってもいいタイミングまで粘ったところで早々にピットへ飛び込み、フレッシュタイアに交換して残りの50ラップに備えることにしました」

7番手でコースに復帰した琢磨を待っていたのは、その10周後にアナ・ベアトリスがクラッシュするという、まさに最悪の展開だった。最後のコーションピリオドとなったこのとき、琢磨の前を走っていた6人のドライバーは最後のピットストップを行ったうえに、通常だったら隊列の後方に並ぶところを、琢磨の目の前に復帰したのである。さらに悪いことに、彼らはいずれもフレッシュタイアを装着していた。

「とてもアンラッキーでした。これで僕はほぼ1周遅れになってしまったのです。僕には、もう1度ピットストップを行って予選で使ったタイアに履き替えるという手も残されていましたが、そうすればいくつか順位を落としたはずですし、そのタイアはいま履いているものより5ラップほど使用した周回数が少ないだけでした。いずれにせよ、フレッシュタイアを手に入れたドライバーたちをオーバーテイクするのは不可能でした。最後はダリオとの接戦になりましたが、結局僕は7位でフィニッシュしました」

それでも、琢磨がまたも素晴らしいパフォーマンスを示したことには変わりなく、翌週開催される今度はバンク付きのショートオーバルであるアイオワ・スピードウェイにはさらなる自信を得て挑むことができそうだ。
「オーバルでの初優勝を果たせると思っていたので、これ以上ないくらい残念でした」と琢磨。「もう、ウィナーズサークルは手に入れたも同然でしたが、裏返せば、これはシリーズがどれだけコンペティティブかを物語るものともいえます。ミルウォーキーは僕たちのスポンサーであるABCサプライにもっとも近いコースです。このため950人ものゲストがサーキットに詰めかけてくださいましたが、皆さんもきっと楽しんでくれたことと思います! レース後は誰もが僕のところにやってきて、いかにエキサイティングだったかを説明してくれましたが、これは本当に嬉しいことでした」

「アイオワに向かうのは少し複雑な心境です。初挑戦となった2010年は大いにエンジョイして、2011年にはポールポジションを獲得しましたが、翌年はひどく苦しむこととなりました。ミルウォーキーとは違ったセットアップを使うことになりますが、できれば、コースにうまくアジャストして、力強くレースを戦いたいと期待しています」

最後に、イギリスF3選手権のチームアソシエーションを率いていたジェレミー・ロードがミルウォーキーの前の週末に亡くなったことについて、琢磨は追悼の言葉を述べた。イギリスF3に参戦した多くのドライバーやインディカーのチーム関係者なども、ロードの死を揃って嘆き悲しんだ。
「信じられませんでした。ジェレミーは誰にでも熱心に接してくれたほか、僕がF3を離れてから彼に会ったときは、参戦していた当時のことを詳しく話してくれて、僕を驚かせてくれたものです。彼は本当の紳士でした。誰もが彼の死を悼んでいます」

 

2013年 第8戦 テキサス マーカス・シモンズ レースレポート

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第8戦 テキサス
どんなに苦しくても立ち止まらない
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AJフォイト・レーシングがこれほど好調なシーズン序盤を迎えたのは、IZODインディカー・シリーズが現在のように国際的なエントリーを集めるようになって以来のことだが、その功績の大半はドライバーの佐藤琢磨に帰することができる。そしてインディカー・シリーズは、フォイトの生まれ故郷であるテキサス州に建つテキサス・モーター・スピードウェイでの第8戦を迎えることになった。チームにとって、これが極めて重要な一戦であることはいうまでもない。

残念ながら、金曜日のプラクティスと予選では、彼らが期待するような成績を収められなかったが、それでも琢磨はダラーラ・ホンダを駆って11位に食い込み、ポイント・ランキングでは5番手に浮上してフォイトのホームタウンを後にしたのである。

「テキサスを訪れるのはいい気分です」と琢磨。「たくさんのチームスタッフが自分たちの家族を連れてレースにやってきましたが、これは素晴らしいことだと思います。地元のファンからも声援を送っていただいたほか、スポンサーのABCの皆さんにも応援していただきました。まるでファミリーのような素敵な雰囲気が、そこには漂っていたのです」

悲しいことに、No.14をつけたダラーラ・ホンダは、彼らが期待したような金曜日を迎えることができなかった。バンク角が大きく、極めてハイスピードな1.5マイル(約2.4km)オーバルでは、予選前のプラクティスが1度だけしか予定されていなかったにもかかわらず、ギアボックス・トラブルのため琢磨はプラクティス中にマシーンをガレージに止めることになったうえ、予選もまるで戦えなかったのである。

「本当に難しい滑り出しでした。セッションの時間はいつもより長めでしたが、予選前のプラクティスは1回しか行なわれなかったのです。ギアボックスに問題を抱えてしまったため、僕はマシーンをガレージに運び込むと、直ちに修復作業が始まりました。
問題はこれだけに留まらず、今年3月にテキサスでテストを行なったときとは、マシーンのバランスがまるで変わってしまったことも難問でした。しかも、テストのときは華氏65度(約18℃)ほどだったのが、金曜日は華氏80度(約27℃)まで気温が上がったため、ダウンフォースの量もグリップレベルもまったく変わっていたのです」

「タイアも大きな問題でした。ファイアストンは、コンパウンドも構造も異なるまったく新しいタイアを持ち込んでいました。一部のチームは別のコースでこのタイアをテストしていましたが、僕たちにそのチャンスはなく、おかげでバランスがまるで変わってしまいました。このため、プラクティス中にいいセッティングを見つけ出すのはほとんど不可能な状態でした」

「メカニックたちは懸命にギアボックスの修復作業を行ってくれましたが、予選前の車検を受ける列には、わずか2分遅れで並ぶことができませんでした。おかげで、僕たちは新しいセットアップを施したものの、その手応えを掴むチャンスは失われてしまったのです。これも本当に難しい問題でした」

その夜にはもう1度プラクティス・セッションが開かれ、ここで琢磨は6番手のタイムをたたき出すことになる。
「幸運なことに、実質的にレース前のウォームアップ走行となる1時間半のセッションが行われました。このときのほうが、土曜日の夜に行われる決勝レースに近いコンディションになりました。この日は夜遅くなっても比較的寒くありませんでしたが、それでもランチ・タイムに比べれば気温は大きく下がっており、ここでようやく多少のセットアップ作業を行う条件が整いました。けれども、走行時間は30分ほどしかなかったので、セットアップの変更に必要な時間はあまりなく、やはり決勝レースでのセッティングは想像で進めなければならない部分が残りました。それでも、スティント中にマシーンの特性がどのように変化し、トラフィックの影響がどの程度かを確認できました。この結果に僕たちはとても勇気づけられました」

21番グリッドからスタートする琢磨にとって、何よりも重要なのは何度もフルコーションとなることである。しかし、この点でも琢磨の思い通りに事が運んだとは言いがたかった。

「スタートでは少しポジションを上げたほか、レースが少し落ち着くと何台かをオーバーテイクし、ピットストップの様子も僕たちのほぼ期待どおりとなりました。おかげで、レースの1/4が終わったころ、僕たちはトップ10まで躍り出ていたのです」

琢磨にとっては好ましい展開だった。そしてレース半ばにオリオール・セルヴィアがスピンし、この日3度目にして最後のフルコーションとなるまでに、琢磨は6番手まで浮上していたのである。
「基本的に順調のように思えました。ただし、コース上の戦いはとてもタフなものでした。ニュータイアを履いた直後はかなりいいペースで走行できましたが、昨年よりもダウンフォースを削り取られてしまったため、タイアにとっては非常に厳しい状態となりました。おかげでデグラレーションが激しく、タイアのパフォーマンスが大きく落ち込むとともに、マシーンのバランスも大きくシフトするような状況でした」

「コクピットからはフロント・アンチロールバー、リア・アンチロールバー、それにウェイトジャッカーなどを調整できますが、これらをすべて使っても、バランスのシフトを補うことはできませんでした。僕たちはニュータイアを装着してもフルスロットルでは走行できませんでした。これはとてもチャレンジングで、エキサイティングな戦いでしたが、それと同時に困難なレースでもありました。チームによってピットストップのタイミングが大きくずれていたのは、これが原因だったといえます」

「タイアが新しければコースのアウト側からでもオーバーテイクできますが、タイアの性能が低下し始めると、戦いは非常に厳しいものとなります。そんなときは、順位を保つのに精一杯でした。ピットストップを行ったときはまだ6番手につけていましたが、その直後にイエローが提示されたため、僕は不運にもほぼ最後尾まで順位を落とすことになりました」

最終的に琢磨は11番手まで挽回してレースを終えた。素晴らしい成績とは言いがたいが、ここまでの流れを振り返れば、よくリカバーしたと賞賛すべきところである。
「僕たちのマシーンは、優勝争いができるほどのパフォーマンスはありませんでしたし、それを改善するのに必要な時間もありませんでした。フロントウィングとタイアの空気圧は何度か変えましたが、とにかく苦しいレースでした。ピットストップではメカニックたちが素晴らしい働きを示してくれましたが、イエローの出たタイミングがきわめて悪く、不運にも僕たちは大幅に順位を落としてしまいました。もっとも、たとえそれがなかったとしても、トップ6でフィニッシュするのは難しく、うまくいってもトップ10に入れるかどうかという状況だったと思います」

「レースを続けるだけでも困難でしたが、僕たちはマシーンをフィニッシュまで導き、貴重なポイントを手に入れることができたのですから、結果的にはいい夜だったといえます。チームは難しい状況からよく立ち直ったと思います」

オーバルレースはさらに続き、来週はミルウォーキー、その数日後にはアイオワ・スピードウェイと、シリーズのなかでももっとも全長の短いコースが連続する。
「ショートオーバルのレースは楽しみです。どちらも僕が好きなコースですし、ミルウォーキーのセットアップはロードコースのものとよく似ていて、空力パッケージはロードコース用のものをそのまま使います。きっと、楽しいレースになりますよ!」

 

2013年 第8戦 テキサス レースレポート

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第8戦 テキサス(テキサス州)
予選(6月7日):ギアボックス・トラブルのため予選に出場できず
決勝(6月8日)11位:21番グリッドからスタートし、11位でフィニッシュ
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● 決勝(227 Laps)

テキサス・モーター・スピードウェイで開催されたファイアストン550では、初日にギアボックス・トラブルが発生するという不運に遭いながらも、佐藤琢磨とABCサプライ・チームは見事にそこから立ち直り、土曜日の晩に行われた決勝レースで11位にフィニッシュを達成。これにより、琢磨はIZODインディカー・シリーズのポイント争いで5番手まで挽回しました。

昨日のプラクティスではNo.14ABCサプライ・ホンダにギアボックス・トラブルが発生。この影響で予選に出走できなかったため、琢磨は24台中21番目のグリッドからスタートすることになりました。

最初のスティントで琢磨はいくつか順位を上げましたが、燃料をセーブして走るドライビングが効を奏し、54ラップ目にイエロー・コーションのもとでピットストップを行うことができました。
おかげで、63ラップ目にレースが再開したとき、琢磨は5番手につけていました。2巡目のピットストップが始まると琢磨は7番手へと後退。その後、109ラップ目にピットストップを行いましたが、この4周後にイエロー・コーションが提示されたため、12番手まで順位を落とすことになります。

続くふたつのスティントを琢磨はトップ12圏内のポジションで走り続けましたが、最後のピットストップが始まると、一時は7番手まで追い上げます。しかし、フィニッシュまで走り切るには燃料をほんの少しだけ給油する必要がありました。タイアの摩耗が進行していたため、チームは少しだけ早めにピットインの指示を出すと、燃料を補給し、ニュータイアを装着したうえで琢磨をコースに送り返しました。
このとき琢磨のポジションは14番手でしたが、228ラップのレースはまだ15ラップが残されていたため、そこから激しく追い上げて11位フィニッシュを琢磨は果たしました。

【佐藤琢磨のコメント】
「コース上の戦いが激しかったうえ、タイアのデグラレーションもとても大きく感じられました。最初の7ラップは問題ないのですが、その後はグリップが低下し、バランスも崩れてしまいました。僕たちのピット作業は順調でしたが、ピットインのタイミングは少しずれていました。不運にも、ピットに入った直後にイエローが提示されたため、順位を落とす一幕もありました。
コース上の順位の影響でトップグループに追いつくのは難しい状況でしたが、チームのメカニックたちが頑張ってくれたおかげでいくつか順位を上げられました。昨日のトラブルを考えれば、僕たちは本当によく挽回したと思います」

 

2013年 第7戦 デトロイト 第2レースレポート

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第7戦 デトロイト第2レース(ミシガン州)
予選(6月1日):21番グリッドからスタート
決勝(6月2日):ライバルに押し出されてリタイアに終わる
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ダブルヘッダー・レースの2戦目、21番グリッドからスタートした佐藤琢磨は力強くポジションを上げていき、70周のレースの21周目にフルコーションが出たときには8番手まで駒を進めていました。そして24周目のリスタートで、琢磨はルーキーのトリスタン・ヴォーティエにわずかに先行してスタート/フィニッシュラインを通過すると、2台はサイド・バイ・サイドとなって0.5マイル(約800m)ほどのストレートを走り抜け、そのままターン3に到達しました。その進入でヴォーティエのラインがアウトにはらんだ影響で琢磨ははじき飛ばされ、タイアバリアに激突してしまいました。

琢磨のマシーンは左フロント・サスペンションにダメージを負ったほか、ステアリングラックも傷めており、レースの残り時間で修理を行うのは不可能と判断されたため、ここでリタイアに追い込まれました。

この結果、琢磨はIZODインディカー・シリーズでチャンピオン争いの6番手へと順位を落としました。
次戦は6月8日にテキサス・モーター・スピードウェイで開催されます。

【佐藤琢磨のコメント】
「とてもフラストレーションのたまる週末でした。今朝のウォーミングアップで僕たちのマシーンは大きな進化を果たし、とてもいい感触を示していました。そこで今日のレースは力強く戦えると期待していたのです」
「ヴォーティエはスタートのときからとても危険なドライビングをしていました。グリーンが提示されるふたつ前のコーナーで、早くも僕に覆い被さるような動きを見せていたのです。まるで僕がいないかのような振る舞いで、スタートのときも、2台並んで走行できるはずのキンクで僕のラインに割り込んできました。まったくスペースが残されていなかったので、僕は急ブレーキをかけ、おかげで空中に浮いてしまうほどでした。この時点で彼にはペナルティが下されるべきだったのです。その後も2度、3度と、彼はいたるところで似たようなことを繰り返しました。最後のリスタート後、ターン3に進入しようとしてときは、僕がアウト側で彼がイン側にいました。そしてサイド・バイ・サイドのままコーナーに入ろうとしたところ、彼が突然、向きを変えて僕をアウト側に押し出したのです。僕には、まったく逃げ場がありませんでした。とても残念な週末でしたが、来週はテキサスに向かうことになります」

 

2013年 第6戦 デトロイト 第1レースレポート

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第6戦 デトロイト第1レース(ミシガン州)
予選8位(5月31日):7番グリッドからのスタート
決勝19位(6月1日):レース中のガス欠により19位でフィニッシュ
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● 予選(Time 01:22.7164 Speed 102.277 mph)

佐藤琢磨は明日の午後に開催される「シボレー・インディ・デュアル・イン・デトロイト」の第1レースに7番グリッドからスタートすることが決まりました。

今日の琢磨は予選の第2ラウンドを通過し、ファイアストン・ファスト・シックスに進出するかに思われましたが、赤旗が提示されてセッションは予定より3分ほど早く終了となりました。

1回だけ行われたプラクティスで10番手のタイムをマークした琢磨は、予選の第1ラウンドで12番手となり、第2ラウンドへの進出を易々と決めました。しかし、この次のセッションで、琢磨がフロントロウを獲得する期待は潰えることとなります。

赤旗が提示されたとき、琢磨のポジションは8番手でしたが、予選でトップだったダリオ・フランキッティがインディアナポリスで行ったエンジン交換により11番グリッドからのスタートとなったため、琢磨はひとつ繰り上がって7番グリッドを手に入れました。

【佐藤琢磨のコメント】
「興味深い予選でした。土砂降りの雨が止むと、コースはすぐに乾いていきました。セミウェット・コンディションではいちばん速かったので、予選に対しても強い自信を持っていました。予選の第2ラウンドでは最初にブラックタイアでチェック走行を行い、続いてレッドタイアを装着しました。そのアウトラップではターン3でスピンしたマシーンがいたために黄旗が提示されました。
次のラップでもターン3で黄旗が提示されていたので、僕はペースを落としました。次のラップでタイムアタックを行いましたが、今度は何の理由もないのに赤旗が提示されたため、僕はアタックを完了することができませんでした。チームが頑張ってくれたことを思うと、やりきれない気持ちになります」


● 決勝(68 Laps)

第6戦の決勝を佐藤琢磨は19位でフィニッシュしました。この結果、琢磨はIZODインディカー・シリーズのポイントテーブルで4番手となりました。ただし、ロードコース・チャンピオンシップではエリオ・カストロネヴェスを1点差で凌いでポイントリーダーの座を守っています。

ベルアイルで開催されたダブルヘッダーの第1レースに7番グリッドからスタートした琢磨は、最初のピットストップが始まったときには6番手までポジションを上げていました。24周目、チームは琢磨に対し、ピットストップではなくステイアウトを指示します。この判断は、もう1周走るのに必要な燃料が残っているとコンピューターに表示されていたために下された判断でしたが、実際にはそれだけの燃料はなく、琢磨のマシーンはコース上に停止してしまいました。

このミスにより、琢磨は全長2.3マイル(約3.68km)の市街地コースで2ラップ分の遅れを喫することとなります。当初、琢磨は自分のレースが終わったと考え、コクピットから降りかけましたが、やがてそれを思いとどまります。その後、No.14 ABCサプライ・ホンダはホルマトロ・セイフティー・チームの手でピットまで運ばれると、そこで燃料を補給し、琢磨のベルトを締め直してからレースに復帰していきました。

27周目、琢磨は23番手でレースに復帰しましたが、チームは日曜日のレースに備え、残る43周をテストとして利用することを決めます。もしも、それで琢磨が順位を上げることができたら、それはボーナスのようなものです。このプランを実施することで、レースにおけるマシーンのパフォーマンスをエンジニアは確認することができました。

【佐藤琢磨のコメント】
「厳しいレースでした。今朝はマシーンのバランスとグリップに満足がいかなかったので、(明日の決勝レースのための)予選後、午後のレースが始まるまでの間にセットアップを大幅に変更しなければいけませんでした。レースが一旦落ち着くと、僕たちのペースが良好であることが明らかになり、徐々に順位を上げて6番手まで浮上しました。ここでミスがあり、僕たちは燃料を使い果たしてしまいます。コースに戻ったとき、僕たちは2ラップ遅れとなっていましたが、その後はプライマリー・タイアとオルタネート・タイアがレース中にどのような性能を発揮するかが確認できたので、明日のレースに向けていい準備ができたと考えています」

 

2013年 第5戦 インディ500 マーカス・シモンズ レースレポート

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第5戦 インディ500
ブリックヤードで過去最高の成績を達成
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アメリカでもっとも有名なレースであるインディ500は、移り気で予想不可能なことでも知られる。

佐藤琢磨はIZODインディカー・シリーズのポイントリーダーとして伝統的な「マンス・オブ・メイ」を迎えた。そしてAJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダを駆り、13位でレースを終えた。
これ自体、あまり特別なこととは思えないが、インディ500に通算4回出場した琢磨にとってこれは過去最高の成績であり、ここから連続週で集中的にレースが開催されるシーズン中盤戦に、琢磨はマルコ・アンドレッティに続くチャンピオンシップ2位で突入することになる。

いうまでもなく、インディ500で4度の優勝という伝説的な記録を持つフォイトのチームに所属しているだけでも多くの関心を集めたが、さらに琢磨はポイントリーダーでもあったのだからその注目度は否が応にも高まった。
「本当に心地よい気分でした」と琢磨。「たくさんのファンに応援してもらい、いたるところで名前を呼んでもらいました。AJのチームの一員としてインディにやってきたことで、とても心強い気持ちになれました。メディアの取材やスポンサー・イベントもたくさんあって大忙しでした!」

しかし、本当の仕事はコース上で繰り広げられる。琢磨はプラクティスが始まった当初から全長2.5マイル(約4km)のトラックで力強い走りを示した。
「開幕当初からエキサイティングなシーンがたくさんあったので、僕たちは大きな期待を抱いてインディにやってきました。
勢いもありましたが、新しいチャレンジに向けて気持ちを切り替える必要がありました。僕たちはロードコースや市街地コースでは強力でしたが、今回はインディ500という、これまでとはまったく環境で戦うことになるのです」

「昨年、チームがダラーラDW12に用いていたセッティングをベースにし、そこから開発を進めていくことにしました。チームは本当にやる気満々で、一致団結して仕事に取り組んでいました」

「天候はまずまず安定していたので、作業は順調に進み、セットアップがどんな働きをするかも確認できました。1日だけちょっと間違った方向に進んだ日がありましたが、それを除けば毎日、期待のできる状況が続いていました」

予選を迎えると、ホンダ・ユーザーはトップ9にひとりも食い込めず、2012年と同じようにシボレー・ユーザーがアドバンテージを有していることが明らかになる。
ここで琢磨は18位となり、インディ500ウィナーでインディカー・シリーズ・チャンピオンに輝いたこともあるスコット・ディクソンやダリオ・フランキッティ(ともにホンダ・ユーザー)と並ぶ6列目グリッドからスタートすることになった。

「予選でトップ9に入れなかったのは残念でした」と琢磨。「けれども、チップ・ガナッシ勢と同じ6列目グリッドだったことは興味深いと思います。僕たちはなにひとつミスを犯しませんでした。できることはすべてやりきったのです」

「翌日のバンプデイで、僕はついに大きなパックとなった集団のなかで走ることができました。僕たちは、たとえば5台をエントリーするアンドレッティ・チームが常に集団走行を行っていたような贅沢なことを、これまでのプラクティスでは経験できなかったので、これはとても重要でした。自分たちに欠けている領域がどこなのかを確認できて、とてもよかったと思います。なにしろ、混雑した状況で起きる激しいタービュランスのなかでマシーンがどうなるかを、それまでは知る手立てがなかったのです」

「それまでのマシーンの仕上がりは良かったのですが、トラフィックのなかでのフィーリングに関しては不満が残りました。
スタビリティをもっと向上させると同時に、しっかりと向きが変わるマシーンに仕立てる必要がありましたが、これはセッティングを変更することでうまく対応できました。この作業は決勝レース2日前の金曜日に行われるカーブデイまで続きました。
あとほんの少しだけ仕上げたいところでしたが、まずまずのレベルまで到達していると思われました」

こうした状況はレースでも変わらなかった。
「(最終ラップに優勝を賭けてフランキッティにアタックし、残念ながらクラッシュに終わった)昨年に比べると、予選順位はひとつ上がっています。けれども、僕のイン側にガナッシの2台が並んでいるのは、なかなか面白いと思いました。アンドレッティ・オートスポーツは本当に強そうで、チーム・ペンスキーの速さは群を抜いていました。DW12で戦う初年度となった昨年、おそらくどのチームもそこまでのスピードには達していなかったのでしょうが、今年は誰もがコンペティティブになっているようでした」

「僕のスタートに特別な部分はありませんでした。いくつかポジションを落としましたが、徐々に順位を取り戻していきました。
それは、いつもどおりチャレンジングな戦いでしたが、順位を上げていくのは楽しいものです。ピットストップでのメカニックたちは素晴らしい仕事をしてくれて、僕を大いに助けてくれました。僕はチャージを開始し、一時は6番手まで浮上しました。
この時点ではホンダ・ユーザーのトップで、これには非常に勇気づけられましたが、それ以上順位を上げるのは難しそうにも思えました。僕の前を走るマシーンはどれも非常に速く、追い越すのは至難の業のように思えたのです」

そしてついに、琢磨はカルロス・ムニョスをパスしようとして失敗に終わり、スピンを喫して大きく遅れたのである。
「カルロスのラインは非常に興味深いものでした。彼はコースのインサイドにある白線のさらに内側を走るくらい、コーナーを小さく曲がっていたのです。通常、誰かの後ろを走行するときは、そのドライバーの少しイン側を覗くようにラインを取り、ターンインも前のマシーンより早めに行います。さもないとフロントウィングに風が当たらず、巨大なアンダーステアを招きかねないからです。けれども、カルロスはバンクの下の方を走っているため、ノーズをイン側に覗かせるのはとても難しい状況でした。
そこで僕はバンクの上側に上がり、アウト側のラインを狙いましたが、ターンの出口で彼もバンクの上側に上がってきたため、僕はエアを失う形となりました。これで大きくダウンフォースを削られたマシーンは不安定になり、激しいタイヤの摩耗ですでにグリップの確保に苦労していたリアが限界に達してしまい、最終的にスピンしてしまったのです。ただし、幸いにもどこにもマシーンを当てずに済んだので、そのままレースを続けることができました。ここでラリー・フォイトが好判断を示したおかげで僕らは周回遅れになることを免れ、リードラップに留まることができましたが、29番手までポジションを落としたうえに、行わなければいけない作業もいくつか抱えてしまう状態でした」

こうして琢磨はスピンで失ったポジションを徐々に取り戻していった。最終的にリアタイアにブリスターが発生してそれ以上順位を上げられなくなるまで奮闘した結果、琢磨はトップ20まで追い上げていた。
「この頃からとても苦しくなり、問題を解決するまでには2スティントか3スティントが必要な状況となります。とても辛い展開でした」

グリップがひどく低下したために予定よりも早くピットストップを行った琢磨は、他のドライバーとはピットストップのタイミングがずれる形となった。
「トップグループとはちょうどハーフ・スティントくらいずれている状況でした。これは非常にいい結果をもたらす可能性もありましたが、残念ながらそうはなりませんでした」

琢磨にとって不運だったのは、この後、ほとんどフルコースコーションにならなかったことにある。このため、トニー・カナーンは記録を塗り替える平均スピードで栄冠を勝ち取ることとなった。
「残り数周となったところでリスタートとなりましたが、順位を取り戻すのは遅すぎました。今日はたくさんのライバルたちをオーバーテイクしましたが、それでも結果は13位でした。いい1日になるように思われたものの、結果的にそこから多くのことを学び、またもやインディアナポリス・モーター・スピードウェイでいい経験を積むことになりました。来年、ここに戻ってくるのが待ちきれない気分です!」

「TK、ジミー、そしてKVレーシング・チームのみんなには心からおめでとうと申し上げます。彼らがウィニングサークルで喜んでいる姿を見るのは、僕にとっても嬉しいことでした」

ここからインディカー・シリーズは毎週のようにレースが開催される時期を迎えるが、その手始めとなるのが今週、デトロイトの市街地コースで行われるダブルヘッダー・レースである。

「“500”は信じられないようなレースです。そこで2週間半を過ごしたかと思うと、僕たちは荷物をまとめて、そのままデトロイトに向かわなければいけない。これは大変な作業ですが、デトロイトに行くのは楽しみです。ここから僕はチャンピオンシップに集中しながら戦っていくことになります」

 

2013年 第5戦 インディ500 決勝 レポート

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第5戦インディ500 決勝(5月26日)
佐藤琢磨、インディ500で過去最高となる13位でフィニッシュ
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本日開催されたインディ500において、No.14ABCサプライ・ホンダに乗る佐藤琢磨はハードに戦い続けました。
琢磨はスピンから立ち直り、前後の右タイアにブリスターを抱えながらも13位でフィニッシュしました。
これまで4度インディ500を戦った琢磨にとっては、これが過去最高の成績であり、ABCサプライチームにとってはダレン・マニングが9位に入った2008年以来の好成績となりました。


18番グリッドからスタートした琢磨は、200周のレースの48ラップ目に6番手まで浮上しました。その後、57ラップ目のターン2出口で360度スピンを喫したものの、どこにも接触することなく、レースを続行できる状況にありました。

セーフティカーチームの手を借りて再スタートを切った琢磨に対して、ラリー・フォイトはそのまま走り続けるように指示しました。
このため、コーションが出て他のドライバーがピットストップする間に、琢磨は順位を取り戻すことができました。

ここから琢磨は反撃を開始します。しかし、右側の2本のタイアにブリスターが発生しており、うち1本は深刻な状況だったため、予定よりも7ラップ早くピットストップを行うことになりました。けれども、この影響で175ラップにピットストップしたときには燃料を満タンにしなければならず、ここで順位を9番手から19番手に落とすこととなります。
その後、他のドライバーがピットストップするなどしたため、琢磨は13番手へと復帰しました。琢磨より前にフィニッシュしたドライバーのほとんどは、最後のピットストップをスプラッシュ&ゴーで済ませ、ポジションを上げていました。

この結果、琢磨はIZODインディカー・シリーズのポイントスタンディングで2番手となりましたが、ロードコースシリーズ・チャンピオンシップでは依然としてトップに立っています。

【佐藤琢磨のコメント】
「慌ただしいレースでした。ひとりずつオーバーテイクして6番手まで順位を上げました。すべて順調のように思えましたが、わずかにバランスが狂った影響によりターン2で360度スピンを喫し、これで大きく順位を落としてしまいました。
ここから再び順位を上げていかなければいけませんでした。たくさんオーバーテイクをしましたが、いくつかのスティントではグリップ不足に見舞われました。ピットでは何度かセットアップの修正を試みたものの、非常に難しい状況でした。
13位という結果は残念ですが、僕たちは精一杯戦いました。今日だけでなく長い5月を通じてピットではメカニックたちが素晴らしい働きをしてくれたので、彼らには心から感謝しています。これからも攻める姿勢でチャンピオンシップを戦っていきます。
優勝したジミーとTKには心からおめでとうと申し上げます」

 

2013年 第4戦 サンパウロ マーカス・シモンズ レースレポート

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第4戦 サンパウロ
ついにポイントリーダーへ!
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IZODインディカー・シリーズのサンパウロ戦で、これまで佐藤琢磨はいくつもの“初”を達成してきた。2010年は琢磨のインディカー・デビューレース。2011年はレース中に初めてトップに立った。2012年琢磨がインディカーの表彰台に上ったのは、このときが最初だった。

今回、琢磨が達成したのは初優勝ではない。なにしろ、これは2週間前にロングビーチで成し遂げていたからだ。けれども、あとわずかなところで2勝目を挙げられたうえに、世界中の耳目が次戦のインディ500に集まろうとしているいま、琢磨はインディカー・シリーズのポイントリーダーに初めて立ったのである。

カリフォルニアで栄冠を勝ち取ってからというもの、より一層忙しい毎日を送ることになった琢磨は、ブラジルに到着するまでに、およそ3万5000kmのフライトを経験しなければならなかった。「ロングビーチの後、仕事がたくさんあったので日本に戻りました。でも、初優勝のおかげで急に予定が膨れあがりました。とはいえ、東京で優勝記者会見ができたのは本当によかったし、応援してくれるファンの前でトークショーができたことはものすごく嬉しかった。それにしても、本当に忙しい毎日です!」

サンパウロのコースと琢磨の相性がいいこと、そしてAJフォイト・レーシングが走らせるダラーラ・ホンダが好調なことを考えれば、今回も好成績が期待できると誰もが思うところだが、プラクティスから予選にかけては、そうした期待は現実のものとはならなかった。

「自分たちがそれほどコンペティティブでなかったことは、ある意味驚きでした。その理由のひとつとして、ファイアストンが昨年仕様のタイアをサンパウロに持ち込んだことが挙げられます。このタイアを上手く使いこなそうとして様々な努力をし、今年のセットアップを昨年のタイアにマッチさせる試みもいくつか行いましたが、どれも上手くいきませんでした」

「今回は2デイ・イベントだったので、走行時間も限られていました。予選前のプラクティスは2回しかなく、そのうちの1回は途中で赤旗が提示されて中断となりました。おかげで、なにをしてもバランスを改善できませんでした」
「予選では本当に苦しみました。最善を尽くしたところ、幸運も手伝ってQ2に進出できました。ただし、トップには0.5秒も引き離されており、とても難しい状況に追い込まれていました」

琢磨は12番グリッドからスタートすることになったが、決勝当日のウォームアップではまだ多くの作業をこなす必要があった。
「コースコンディションは大きく変わっていました。気温が下がり、その当然の結果としてペースが上がっていたのです。
ここでは、昨年のセットアップをベースに、今年のセットアップの考え方を取り込むことにしました。チームは、昨年のセットアップに満足していませんでしたが、これをきっかけにしてマシーンの状態は徐々に良くなっていきます。ただし、決勝レースまでにはまだやるべき仕事がたくさん残っていました」

「サンパウロではアクシデントなどの波乱が起こりがちで、いつもエキサイティングなレースになるため、展開はまったく予想できません。僕たちにできることといえば、クルマが好調で、スタートでアクシデントに巻き込まれないことを祈るだけでした」

琢磨のスタートは順調で、最初のコーションが出るまでに9番手へと浮上すると、続いてジャスティン・ウィルソンとEJヴィソを攻略。
コース上でウィル・パワーのマシーンから炎が上がって2回目のコーションが出されるまでに、琢磨は6番手へと駒を進めていた。

「とてもいい流れでした。ターン1とターン2が大幅に改修されてコース幅が広がり、コーナーの角度も浅くなった結果、コーナリングスピードは大幅に上昇しました。
けれども、急減速する区間は引き続き残っていたので、僕はこれを活用して大きく順位を上げていきました」

「硬めのブラック・タイアは確実なパフォーマンスを発揮してくれました。ほとんどのドライバーがブラック・タイアでスタートしたのは、今回がおそらく初めてだったと思います。とても興味深い状況でした」

「サンパウロのコースレイアウトは大好きです。オーバーテイクもできるので、僕たちはリスタートのたびにポジションを上げていき、思い通りの状況となっていました。マシーンの反応が良好なことにも満足していました。僕たちのマシーンがいちばん速かったわけではありませんが、安定感はあったので、不安なく速いペースを保つことができました」

レース中盤、トップのセバスチャン・ブールデと2番手のジョセフ・ニューガーデンがそれぞれ2回目のピットストップを行うと、これとほぼ同時に琢磨はライアン・ハンター-レイをオーバーテイクして実質的な首位に浮上する。「大きな達成感を味わっていました。ポールポジションからスタートした彼と、レース前はトップ争いなど望めないと思っていたマシーンで勝負し、これに勝ったのですから……。
僕はレッド・タイアで、ライアンはブラック・タイアを履いていましたが、それでもオーバーテイクできて最高の気分でした。難しい状況の予選からここまで立ち直れたことに、僕たちは本当に勇気づけられました。とても素晴らしい進歩を果たしたと思います」

その後、琢磨は4ラップで4秒間のリードを築いたが、グレアム・レイホールのマシーンから落ちた破片を回収することになった影響で琢磨のアドバンテージは消滅。
そこでチームは琢磨を予定よりも早めにピットへと呼び戻すことにした。残り37ラップを1セットのタイア、そして無給油で走りきろうという戦略である。

「これは少しギャンブルだったと思います」と琢磨。「このとき、ほとんどのドライバーはステイアウトを選びました。僕に確信はなかったので、とりあえずチームの指示に従うことにしました。いまにして思えば、これはやや早すぎるタイミングでした」

「この頃、僕はできる限り燃料をセーブしながらイエローが出るのを待っていました。けれども、実際にイエローが出ると、僕はピットに呼び戻されてわずかな量の給油を行い、また列の後ろに並ぶことになりました。最初は、これでどうやって順位を上げるのか見当がつきませんでしたが、やがて、ほとんどのドライバーは最後のスティントのためにもう1度ピットストップしなければいけないという朗報がもたらされます。それだったら、レース終盤にかなり順位を上げられるのではないかとの期待が膨らみました」

残り20周でレースが再開されたとき、各チームの戦略の違いによってオーダーが大きく変化し、琢磨は4番手に浮上していた。その10周前に20番手まで順位を落としていたことを考えれば、悪くない展開である。

「あるリスタートでは、周回遅れに行く手を阻まれ、もう少しでウォールと接触しそうになりました。そのとき、目の前では何台かのマシーンが互いに絡み合っていました。続いてたくさんのオーバーテイクをしたので、タイアに大きな負担を強いることになりました」

このとき、琢磨はレース中盤に装着したレッド・タイアを履き続けていたが、マルコ・アンドレッティとジェイムズ・ヒンチクリフをパスして4番手から2番手へとジャンプアップ。さらにウィルソンがタイアバリアに突っ込んだ影響で、この日最後のイエローが提示される。
そしてレースが残り16ラップとなったとき、トップを走っていたJRヒルデブランドがピットストップを行ったため、琢磨は再び首位に浮上したのだ。

まずはニューガーデンが、そして最後の数周はヒンチクリフが襲いかかってきたとき、履き古したタイアでこれに対抗するのは琢磨にとって容易なことではなかった。
「ふたりは、僕よりもずっとフレッシュなタイアを履いていました。彼らが攻めてくることはわかっていました。最後の5ラップは、タイアがもうなくなったも同然の状態でした。タイアはすっかり磨り減っていたうえに、ブレーキにも小さな問題を抱えていました」

「ニューガーデンとのバトルは、お互いホンダ勢ということもあって、とても面白かったのですが、ヒンチが2番手になってからはずいぶん苦しめられました。というのも、トップスピードではシボレー・エンジンにアドバンテージがあったからです」

「ヘアピンへの進入では、毎周、懸命にディフェンドしなければいけなかったし、最終ラップに入るときはヒンチやニューガーデンとともに3ワイドにさえなりました! これはエキサイティングな展開でしたが、おかげでふたりをほんの少し引き離すことができました。
ターン1では、おそらくコンマ数秒の差があったので、『よし、このまま逃げ切るぞ!』と思っていましたが、彼はバックストレートで急激に迫ってきました。僕はストレートでディフェンディングラインを採りましたが、最終コーナーでは本当にギリギリでした。ここでマシーンがスライドし、ヒンチを抑えきることができませんでした。彼の動きは見事だったと思います」

「最終ラップの最終コーナーまでリードしていながら、最後の数百mで敗れたことは本当に残念でした。でも、それまでの状況を考えれば、2位は決して悪い成績ではありません。本当に力強い立ち直りだったので、2戦連続で表彰台に立ち、チャンピオンシップでポイントリーダーに立てたことは、本当にボーナスみたいなものだと考えています」

もしもニュータイアに履き替えていたら、結果は変わっていただろうか? 「最後のピットストップでは、予選で3周しか走っていない比較的フレッシュなレッド・タイアに交換することが可能でした。これには3〜4秒の時間を要し、おそらくひとつかふたつ、順位を落としていたことでしょうが、そこから力強く挽回できたとも思います。結果がどうなったかはわかりません。レースに“タラ・レバ”はつきものですが、あの時点でチームがこの判断を下すのは難しかったと思います。彼らは素晴らしい働きをし、最高のピットストップ作業を見せ、おかげで僕は楽しくレースができました」

「もしも2連勝できたら、こんなに素晴らしいことはありませんが、あまり欲張りすぎるのも考え物です。本当に素晴らしいレース、素晴らしいエンターテイメントで、ファンの皆さんも楽しんでくれたことでしょう。いずれにせよ、今季はまた優勝のチャンスが巡ってくるはずです」

次のレースはシリーズ最大の1戦、インディ500である。今年、アメリカのレースファンは時間を大きく遡ったかのような感覚を味わうことだろう。なにしろ、フォイト(のもとで走る琢磨)がアンドレッティ(の息子であるマイケルのチームで走るマルコ)に13ポイントの差をつけているのだ! 「ポイントリーダーになるのはいつでも最高の気分ですし、チームのモチベーションも高まります。この2レースでは大成功を収めることができましたが、シーズン最初の2レースでも僕たちは貴重なポイントを獲得していました」

「でも、インディ500はまったくの別物です。まずは一度落ち着いて、第1週目のプラクティスで手堅い仕事をするつもりです。
今回、コノー・ダリィというチームメイトがいることは心強いですね。2台で貴重なデータを収集し、来るべき1戦に備えるつもりです」

 

ロングビーチ 佐藤琢磨 優勝 レポート


2013年 インディカー・シリーズ 第3戦、カリフォルニア州 ロングビーチで
佐藤琢磨選手が 日本人ドライバーとして初優勝を成し遂げた!


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第3戦 ロングビーチ
甘美な勝利の美酒に酔う
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長く待たされれば待たされるほど、勝利の美酒はいっそう甘美に感じられるもののようだ。

最後に佐藤琢磨が優勝したのは2001年11月。
あれはマカオGPのF3レースでのことで、このシーズンはイギリスF3で12勝を挙げてタイトルを勝ち取っただけでなく、
マスターズF3でも栄冠を手に入れた。
同じ頃、AJフォイトのチームはオーバルコースだけを転戦する初期のインディカー・シリーズにエントリーしていた。

フォイトのチームが最後に勝ったのは2002年7月のこと。
コースはカンザス・スピードウェイで、ドライバーはブラジル出身のエアトン・デアだった。
このとき、琢磨はF1初年度のシーズン半ばをジョーダンとともに戦っている。

オーバル以外のコースにおけるフォイト・チームの優勝となると、さらに時代をさかのぼらなければならない。
それは実に1978年9月、イギリスで2連戦を行った最初のレース(サーキットはシルヴァーストーン)で
AJ自身が優勝したのが最後となっているからだ。
この頃、琢磨はようやくひとり歩きができるようになったかどうか、というところだろう。


いずれにせよ、2013年のロングビーチ戦で味わった美酒はとりわけ甘美だったはず。
なかでも、IZODインディカー・シリーズで過去3年間にわたって何度も速さを見せつけながら、
そのたびに不運に泣かされてきた琢磨が、A J フォイト・レーシングのダラーラ・ホンダを駆って
ようやく勝利を手に入れたのである。
それだけでなく、これは日本人ドライバーにとってもインディカー・シリーズにおける初の快挙だった。
いや、対象をアジア人全体に広げても、これほどレベルの高いオープンホイールカーレースで
勝利を挙げたドライバーはこれまでいなかった。

だからといって驚く必要はまるでない。
なぜなら、開幕2連戦が行われたセントピーターズバーグの市街地コースでもバーバーのロードコースでも、
No.14をつけたマシーンはとびきり速かったからだ。

「自分たちが望むようなスピードを手に入れていました。
僕たちはセントピーターズバーグでコンペティティブだったし、バーバーでも充分にコンペティティブでした」

「まずはロングビーチのスタンダード・セットアップに仕立てて、どんな様子かを確認しました。
最初のプラクティスは順調でした。クルマの感触は良好で、走り始めからいいペースで走行できました。
けれども、その後ギアボックスに小さな不具合が発生し、セッションを早めに切り上げることとなりました。
さらに、2回目のプラクティスは3回も赤旗が提示される展開となります。
このため、僕たちが行った計測ラップはそれほど多くなく、セッティングを変更しての比較テストを行うのも困難な状況でしたが、
セットアップは順調に進歩していきました」

「チームはいいムードに包まれていましたが、まだやるべき仕事は残っていました。
ところが、土曜日のフリープラクティスではあまりコンペティティブではありませんでした。
ニュータイアを履いたときのスピードが伸び悩んでいたのですが、
やがて、ニュータイアでのバランスに問題があることに気づきました。
というわけで、セッションとしてはいい結果ではありませんでしたが、
予選に向けて取り組むべきポイントがわかったことは大きな収穫でした」

予選の展開は実にシンプルなものだった。
最初のセッションは3番手、2回目は5番手で、最終的には4番グリッドを手に入れた。
「おそらく、ベストなバランスではなかったと思います」と琢磨。
「でも、Q1とQ2でのパフォーマンスはとても良好でした。
接戦でしたが、そのなかでQ3に進出できる充分なスピードを発揮できました。
4番グリッドは、チーム全員が頑張って手に入れた結果です。
2列目からスタートできることは素晴らしく、僕はこの結果に満足していました」

スタート直後に琢磨はウィル・パワーを捉え、ダリオ・フランキッティとライアン・ハンター-レイに続く3番手に浮上した。
「僕はライアンの直後につけると、スタートでウィルをパスしました。
僕以外の上位陣はみんな柔らかめのレッドタイアを履いていたので、これは嬉しい展開でした。
ブラックタイアを履く僕が、もしもレッドタイアを装着したライバルたちと同じペースで走れれば、
彼らはいずれブラックタイアに履き替えることになるので、
僕たちの作戦は大成功だったことになります。
だから、スタートで順位を落とさなければそれでいいと思っていましたが、
ひとつ順位を上げられたので期待以上の展開でした!」

「ダリオが徐々に引き離していくのが見えましたが、僕はライアンに抑えられていたので、燃料をセーブすることにしました。
柔らかめのオルタネーティブタイアを履くドライバーを抜くのは容易なことではありませんでしたが、
僕は虎視眈々と機会をうかがっていました。
そして、ついにそのチャンスがやってきました。
ヘアピンの脱出で彼の出足が鈍ったのです。
僕はこのチャンスを見逃さず、プッシュ・トゥ・パスとスリップストリームを使ってライアンを捉えると、
ターン1でインサイドに飛び込んで彼を仕留めました」

琢磨がハンター-レイをオーバーテイクしたのは23周目のこと。
このとき約3秒だったフランキッティとの差は、数周後には1秒差まで縮まったが、ここで上位陣は続々とピットストップを行った。
フランキッティはこのピットストップに手間取って遅れ、パワーはその後のフルコーション中にピットストップを行っていたが、
レースが再開したとき、琢磨はパワーとフランキッティをリードする立場に立っていた。

「僕たちのペースは本当に力強く、次第にダリオを追い詰めていきました。
さらにメカニックたちがスムーズでとても速いピット作業を行ってくれました。
これで僕はトップに立ちました。
しかも、ライバルの多くはブラックタイアを装着しているのに対し、僕はレッドタイアに交換したばかりで、
次のスティントでもレッドタイアを履いて、そのままフィニッシュまで走りきる作戦でした。
だから、これは本当に理想的なシナリオでした」

「リスタートで肝心だったのはペースをコントロールすることです。
マカオと同じように、僕は数秒ほど後続を引き離してスリップストリームを使われないように注意しました。
その後はオルタネーティブタイアを持たせるように丁寧にドライブしました」

偶然にも、このとき2番手に浮上したのは、
昨年琢磨が操っていたNo.15のマシーンで、ドライバーはグレアム・レイホールだった。
「グレアムが仕掛けてきましたが、僕はすぐにこれに応え、彼とのギャップを保ちました。本当に最高のレースでした。
クルマも好調でハンドリングもよく、ドライブが本当に楽しく思えました」

レースが残り24周となったときのリスタートでは、周回遅れのチャーリー・キンボールが琢磨に襲いかかってきたが
(コーション中にほとんどのドライバーがピットストップを行っていた)、
直後にウォールと接触したキンボールを琢磨は避けることに成功する。
「彼のリスタートは素晴らしいものでしたが、『うーん、ちょっと待てよ』と思いました。
彼は相当やる気のようだけど、僕は不運から逃れないといけない。どんなリスクも回避しなければいけなかったのです」

ここから琢磨はレイホールを突き放していったので、
フィニッシュ直前にトニー・カナーンがクラッシュしたときにはその差を5秒としていた。
しかし、このアクシデントによりフルコースコーションとなり、レースはそのまま幕を閉じた。
「最後のスティントでは、新品のオルタネーティブタイアを履いた直後の数周は抑えたペースで走行し、
タイアにダメージを与えないように気をつけました。
チームは、確実にというか、ある意味保険というか、燃料をセーブした走行を僕に指示するとともに、
すべてをコントロールできている状態だと伝えてきました。
僕は指示通りの燃費を確保しながら、それでも後続を引き離していきました。
僕は心からドライビングを楽しみました」

「本当に完璧なレースでした。
2回のピットストップはうまくいき、レースでは常にペースをコントロールしていました。
作戦も完璧で、信じられないような気分でした。F3からステップアップして、メジャーシリーズでの最初の優勝です!
これまでヒロ松下さんを始めとする数多くの素晴らしい日本人ドライバーが長年アメリカで挑戦してきた結果が繋がり、
今日その1ページをめくることができて本当に嬉しく思います。
こんな風に優勝できて本当に嬉しいし、AJフォイト・レーシングにとっては久しぶりの勝利となりました。
今週手術を受けることになるAJのご無事をお祈りすると共に、
こんなに素晴らしいチャンスをくれたAJに改めて心から感謝します!」

琢磨は現在ランキング2位。
首位のエリオ・カストロネヴェスとは僅差で、迎えるレースは琢磨が得意とするサンパウロで開催される。
ここで一気にポイントリーダーの座を狙うのか?
インディカー・シリーズは常に接戦なので、現在ランキング4位、5位、もしくは6位のドライバーでも、
次のレースで表彰台に上ればランキングトップに浮上する可能性があるのだ。
「こうなるなんて想像もしていませんでした。僕たちは自分の仕事をやり続けてきただけです。
サンパウロではこれまでにいくつもいい思い出があるので、ここをいい形で終え、次のインディ500に臨みたいと思います」

「優勝してからはとてつもなく忙しい毎日です。
世界中のたくさんの人々から祝福を受け、そのメッセージを読むのも返事もまるで追いつかないほどですから!
でもこれは嬉しい悲鳴っていうことですね……」

 

速報!佐藤琢磨 ロングビーチで 日本人 初優勝!

2013年4月21日、
カリフォルニア州ロングビーチで開催された インディカー・シリーズ 第三戦で、
佐藤琢磨が 日本人初となる 優勝を遂げた。

予選 4番手からスタートした琢磨は、前半でトップにたち、
その後 安定した速さで トップを守り続けた。

インディカーに活躍の場を移して4年目。
うれしい初優勝を果たした。


「琢磨選手、本当におめでとうございます!」

 

2013年 第2戦 バーバーモータースポーツパーク レポート

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第2戦:バーバーモータースポーツパーク(アラバマ州)
決勝(4月8日):佐藤琢磨、最後まで戦い抜いて14位完走を果たす
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佐藤琢磨とABCサプライ・チームは、予選最終ラウンドであるファイアストン・ファスト6に進出できるスピードを手にしていながら、
オフィシャルによってペナルティを科せられた結果、12番グリッドからレースに挑むこととなりました。

しかし、琢磨は素早く気持ちを切り替えると、ホンダ・インディカー・グランプリ・アラバマのスタート直後から反撃を開始します。

オープニングラップでは後方集団でアクシデントが発生。
これをきっかけとするイエローコーションが終わると琢磨は11番手に浮上し、
さらに7周目に行われたリスタートでは9番手までポジションを上げることに成功します。

23周目、琢磨はピットストップを行うと、オルタネートタイア(レッドタイア)から
コンパウンドのより硬いプライマリータイア(ブラックタイア)に交換します。
ところが、プライマリータイアではペースが上がらなかったため、
次のピットストップではオルタネートタイアに交換することにしました。

43周目、タイア交換と給油は順調に終わりましたが、
作業を終えて発進しようとした際、ギアをニュートラルから1速に入れることができず、
さらにエンジンがストールしたために琢磨は13番手から23番手へと大きく順位を落としてしまいます。

しかし、予選で1度だけ使用し、やや磨り減ったオルタネートタイアを手に入れた琢磨は、
ここから懸命な挽回を図っていきます。

最後のピットストップまでに何台かをオーバーテイクした琢磨は、
ABCサプライ・チームの素早いピットストップ作業にも助けられ、
ピットアウトの際にシモーナ・デ・シルヴェストロをパス。
これで18番手になると、JRヒルデブランドと15周にわたってバトルを繰り広げた末、
レースが残り4周となったところでその攻略に成功しました。

しかし、琢磨はこれに満足することなく、17番手を走るオリオール・セルヴィアに照準をあわせます。
最終ラップになると数台のマシーンが燃料を使い果たして遅れましたが、ここで琢磨はさらに順位を上げます。
そしてフィニッシュラインの直前でセルヴィアをオーバーテイクした琢磨は14位でチェッカードフラッグを受けました。

次戦のロングビーチ・グランプリは4月21日にカリフォルニア州で開催されます。


佐藤琢磨のコメント

「結果は残念でしたが、最後の最後まで全力で戦い続けることができたので、いいレースでした。
ピットストップではトラブルが発生して大きく順位を落としましたが、
これを解決したほか、最後のピットストップで素晴らしい働きを示してくれたメカニックたちはよく頑張ってくれました。
ただし、ロングビーチに向かう前に、いくつか解決しておかなければいけない問題があります。
できれば、ここでの素晴らしいスピードを次戦につなげたいと考えています」


 

2013年 インディカー 第1戦 レポート

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開幕戦:ホンダ・グランプリ・オブ・セントピーターズバーグ
    (予選:3月23日、決勝:3月24日)
予選2位:セントピーターズバーグで過去最高となる予選2位を獲得
決勝8位:開幕戦を8位でフィニッシュ
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■予選2位 (Total Time 01:01.5776 Avg Speed 105.233)

佐藤琢磨のコメント

「最高の気分です。これでチーム全体のモチベーションが上がりました。ウィンターテスト・プログラムを通じて、チームは本当に頑張ってくれました。ここにきたとき、マシーンのバランスはまずまずでしたが、予選用のセットにすると素晴らしい仕上がりになりました。セグメント1、セグメント2、セグメント3と、すべて2番手でした。これはチームにとって完璧な結果で、本当に嬉しく思っています」

AJフォイト(チーム・オーナー)のコメント

「これまでのテストの結果から、琢磨が速いドライバーであることは知っていましたし、これまでのチームでも速さを証明していたので、我々はできるだけいいマシーンを用意したいと考えていました。今日、彼が成し遂げたことを誇りに思います。本当によかった」

ラリー・フォイト(チーム監督)のコメント

「このような形でシーズンをスタートすることができ、とても嬉しく思っています。今日の結果はこれまでの努力が実ったものであり、チーム全体がひとつになったおかげです。いまのところ好調なので、明日もいい成績を残したいと期待しています」


■決勝8位 (110 Laps)

AJフォイト・レーシングからのデビュー戦を迎えた佐藤琢磨は、決勝で力強いスタートを見せた後、軽い混乱に巻き込まれましたが、その後も1.8マイル(約2.9km)の市街地コースでベストな成績をチームにもたらすべく粘り強く戦い抜き、8位でチェッカードフラッグを受けました。

ウィル・パワーに続く2番グリッドからスタートした琢磨は、最初のピットストップまでそのポジションを維持し、そこでユーズドのオルタネートタイアから新品のプライマリータイアに交換しました。ただし、ピットストップでミスがあり、ここで7.3秒を要したため、琢磨は3番手へとポジションを落とします。

32周目のリスタートで、結果的にウィナーとなるジェイムズ・ヒンチクリフが琢磨とバトルして3番手に浮上しますが、この途中で琢磨のフロントウィングを損傷させてしまいます。続く数周で琢磨はさらにポジションを落とし、45周目にコースの清掃のためにイエローコーションとなったときには6番手となっていました。

先のアクシデントでウィングストラットのひとつが部分的に壊れましたが、パーツの交換によって順位を下げることは避けたいと考えたチームは、琢磨がポジションを守れるようになったこともあり、補修作業を次のピットストップまで先送りすることにしました。さらに、ヘルメットに組み込まれたドリンク・システムにトラブルが発生したため、ピットストップの際にメカがドリンクボトルを琢磨に手渡すことになります。さらにタイアを交換し、フロントウィングの調整を行った結果、琢磨は6番手から12番手へと転落しました。

次のストップではこの影響がさらに拡大します。ピットストップのタイミングが他のドライバーとずれたこともあり、琢磨は9番手まで順位を取り戻しましました。ところが、放り投げられたドリンクボトルを受け取ろうとした琢磨はエンジンをストール。これでレースに復帰したときには13番手となっていました。また、このとき琢磨はリードラップの最後尾につけていたため、彼をピットに呼び戻してフロントウィングの修正することを決断。この作業をチームは実に11秒以下で終わらせました。

琢磨はさらに給油のためにピットストップ。さらにポールシッターのウィル・パワーに不運が降りかかったこともあり、琢磨は13番手でリスタートに臨みました。残り26周で再びリスタートとなります。ここで琢磨は5台をオーバーテイク。さらにファイナルラップでジャスティン・ウィルソンを仕留めて8番手となり、IZODインディカー・シリーズでNo.14ABCサプライのマシーンを8位完走に導きました。

佐藤琢磨とチームは今週の水曜日に行われるテストのため、テキサス・モータースピードウェイに向かいます。その後、短い休暇を挟んで、次戦が開催されるバーバー・モータースポーツ・パークへと移動する予定です。

佐藤琢磨のコメント

「レースは最初から苦しい展開となりました。2回目のリスタートでフロントウィングにダメージを受けてしまい、そこからは完調ではないマシーンでレースの大半を戦うことになりました。その後、フロントウィングを交換したときには15番手まで順位を落としました。そこからポジションを取り戻し、何台かをオーバーテイクできたことには勇気づけられました。レースに関してはいくつか見直したいこともありますが、今日は懸命に戦い抜きました。ハードワークをこなしてくれたABCサプライ・チームに心から感謝します」

ラリー・フォイトのコメント

「開幕戦でポイントがとれたことはよかったと思います。今日はとてもコンペティティブなマシーンでスタートしましたが、運がありませんでした。レース序盤にフロントウィングを破損させてしまいましたが、順位を落としたくなかったので、ピットストップは先送りしました。その後も問題はあったものの、とにかく走り続け、長いイエローコーションとなったときにクルマを修正し、コースに送り返しました。
コース上で起きたことはちょっとした不運でしたが、シーズンの滑り出しとしては上々で、トップ10でフィニッシュできたことはよかったと思います。混乱に巻き込まれながらもトップ10でフィニッシュできたことは、我々のポテンシャルが高いことを物語っています。結局のところ、ついてない日に期待できるのは、こういうことだと思います」

 

バーバー・オープンテスト

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バーバー・オープンテスト
会場:アラバマ州リーズ
   バーバー・モータースポーツ・パーク(ロードコース)
期間:3月12日ー13日
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2013年3月13日、アラバマ州リーズ発

佐藤琢磨とABSサプライ・チームは本日バーバー・モータースポーツ・パークで行われたIZODインディカー・シリーズのオープンテストを好調のうちに終えました。

No.14ABCサプライ・ホンダに乗る琢磨がセッションの最後にマークした本日の最速ラップは122.208mph(約195.5km/h)で、これはこの日の午後の記録としては5番目に相当します。このタイムは、25台のマシーンが参加した本日のセッション終盤で、チェッカードフラッグが振り下ろされる直前に記録されたものでした。

今日のファステストラップはシボレー勢のウィル・パワーがマークした123.33mph(約197.3km/h)で、2番手はやはりシボレー・エンジンを用いるジェイムズ・ヒンチクリフの122.878mph(約196.6km/h)、3番手と4番手はいずれもホンダ勢のジャスティン・ウィルソン(122.667mph/約196.3km/h)とスコット・ディクソン(122.327mph/約195.7km/h)でした。

2日間にわたって行われたテストの総合結果では、シボレー・エンジン搭載のマシーンに乗るトニー・カナーンとライアン・ハンター-レイが今朝の午前中に琢磨を上回るタイムを記録したため、琢磨は7番手となりました。

IZODインディカー・シリーズの開幕戦ホンダ・グランプリ・オブ・セントピーターズバーグは3月24日(日)に開催されます。

●佐藤琢磨のコメント

「やらなければならない仕事がまだたくさん残っていますが、今日は順調に進歩できたので、実りある1日だったと思います。ある段階では、いろいろ試したのに期待したような結果が得られないこともあり、そのときは少し苦しみました。けれども、僕たちはとても重要なデータを収集し、それらをまとめあげてパフォーマンスを向上できたので、良かったと思います。
この後、ファクトリーに戻ってすべてのデータを分析し、より速くなることを期待しています。全般的にはいい内容のテストで、チームの全員がいい仕事をしてくれたと思います」

●ラリー・フォイト(チーム監督)のコメント

「いいラップタイムを記録し、タイムチャートでトップグループの仲間入りができたのは素晴らしいことです。ただし、今季のインディカー・シリーズはかつてないほどの激戦となっています。琢磨は素晴らしい働きをし、たくさんのデータを集めてくれました。これはセントピーターに向けた準備を進めるうえで大いに役立ってくれるはずです。いまはシーズンが始まるのが待ちきれない思いでいます」

 

2013年 インディ・カー シリーズ スケジュール

今年より、名称がフォーミュラ・ニッポンから変更したスーパーフォーミュラ。
佐藤琢磨が「チーム無限」から開幕戦を含め数戦に参戦することが発表された。

2013年インディ出場予定レースは下記の通り。

 3月24日 第 1戦 セント・ピーターズバーグ ストリート
 4月 7日 第 2戦 バーバーモータースポーツパーク ロード
 4月21日 第 3戦 ロングビーチ ストリート
 5月 5日 第 4戦 サンパウロ ストリート
 5月26日 第 5戦 インディアナポリス オーバル
 6月 1日 第 6戦 デトロイト ストリート
 6月 2日 第 7戦 デトロイト ストリート
 6月 8日 第 8戦 テキサス オーバル
 6月15日 第 9戦 ミルウォーキー オーバル
 6月23日 第10戦 アイオワ オーバル
 7月 7日 第11戦 ポコノ オーバル
 7月13日 第12戦 トロント ストリート
 7月14日 第13戦 トロント ストリート
 8月 4日 第14戦 ミド・オハイオ ロード
 8月25日 第15戦 ソノマ ロード
 9月 1日 第16戦 ボルチモア ストリート
10月 5日 第17戦 ヒューストン ストリート
10月 6日 第18戦 ヒューストン ストリート
10月19日 第19戦 フォンタナ オーバル

※2013年3月現在の予定(変更される場合があります)

今年も佐藤琢磨の活躍を期待!

 
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