4.総合討論(7)

吉永発達障害に関する質問が出ています。「園に、環境による後天的な発達障害だと思われる子がいます。療育センターに通っています。園では、その子だけ工夫した対応をすべきだろうか」という話です。

私たちが医者になりたての頃は、自閉症とかは、親のせいではないんだ、親のせいにしてはいけないと教わりましたし、そのように学会でも言われていました。先天的な脳の器質的な疾患なので、病気なのだから、親の育て方のせいではないと言われてきたのです。

なるほど、そうなのかと思って、教えを守ってきたのですが、最近になって、専門家の間でも、自閉症と診断されている中に、本当の自閉症ではなく、どうやら愛着障害で人とかかわれなくなっている子がいるのではなかろうか、ということが言われ始めています。

ADHDと診断された子の中に、誰彼かまわずベタベタとしていく愛着障害の子がまざっているらしいぞということも言われてきている。自閉症、多動、両方ともに、実は愛着形成不全の子がまじっているのではないかということが言われてきています。

育ちだとか親のせいではない、親のせいにしてはいけない、育児のせいにしてはいけないというふうに言われてきたことが、実は、親のせいかどうかは別として、親との愛着のつくり方、でき方、育ちのあり方が、そこに陰を落としている子がいるということがわかってきたんですね。そうすると、私たちは一体どうすればいいのかという話になります。

実際、障害の診断がついて困っている子のお母さんに対して、お母さんのせいにはしたくない。これから親子で世の中をうまく生活していくためのスキルを、手に入れましょうねというエールを送っていきたい。だけど、これから子どもを産む人、それから、生まれたての赤ちゃんを持つお母さんたちには、「愛着って大事みたいよ」「子どもとの結びつきは大事みたいよ」という話を、今日の話のように伝えていきたい。

本当の発達障害、自閉症、ADHDなのか、愛着障害が影を落としているのか。もしくは、発達障害があるからこそ子どもの反応が乏しく、お母さんたちが育児の無力感を感じて、育児のやりがいを失い愛着もうまく育たなかったというダブルパンチになっている子も少なくありません。

ですから、園で何をしたらいいかということは、具体的に一人一人違うでしょう。一言で言うのはなかなか難しいですが、指を握ったり、手をつないだりということを通して「一緒にいるよ」ということをどうやって伝えるかということなのだろうと思います。その伝え方は、今日はタッチケアということを例に挙げて話をしていますけれども、どうやって伝えれば一番いいのかというのは、その子その子で、ひょっとしたら違うのかもしれません。親御さんによってもできることは違うのかもしれません。

子守歌だったり、手遊び歌だったり、おんぶだったり、絵本だったり、様々な方法があるでしょう。そのスキルは、私よりもきっと皆さんのほうがはるかに高いだろうと思いますので、期待をしています。