4.総合討論(4)

吉永次の質問は、「タッチケアをすることで子どもたちはどのように変化していったか。事例をもっと聞きたい」ということです。新生児センターでは、子どもたちが成熟していく。つまり、眠っているときにちゃんと寝ている、起きているときにしっかり起きているという、覚醒・睡眠のリズムがはっきりしてくる。また、睡眠に入りやすくなるということが報告されています。そういう生理学的な変化の経験もしますが、お母さんたちが、「うちの子ね、『いぬのおまわりさん』が好きなんですよね」だとか、母子分離をしている中でも、我が子はこんな子なんだということを早くキャッチできるという機会にもなっていたようです。

それから、乳児院。残念ながら、親と一緒に過ごすことがかなわなくなった子どもたちの施設では、夜間徘徊の癖が減ったり、お友達とのトラブルが減ったり、ずっと口に手をやる癖があった子が、その癖が消えたりという報告を受けました。

障害児施設では、睡眠・覚醒のリズムがはっきりするということと、指しゃぶりなどの癖が消えてきたという話も聞くようになりました。

講演の中で話しましたうんちいじりの子は、「この子にはタッチケアをずっとやります」という話だったので、よかったなと思っていたんです。ところが、次の月に運動会シーズンに入りました。ちょっとタッチケアをお休みをしたわけです。そうすると、タッチケアをする前の月に26回、見られていたうんちいじりが、タッチケア中は数回に減っていたのが、次の月は29回に増えていたのです。これはいけないということで、またタッチケアを始めたら、次の月は数回に激減しているのですが、その数回も、担当の保育士さんの出勤前か退社後に限られている。その保育士さんがいるときにはうんちいじりは一回もしないのです。すごいなあ、と思いました。

そこの施設では、おむつの中に手が入らない洋服を工夫しようとしていました、うんちいじりというプロブレムを消すために。だけど、「好きよ、好きよ」と言うだけで、こんなにそのプロブレムが減っていくのだったら、「一体私たちは何をしようとしていたんでしょうね」という反省も聞くことができました。

恐らく普段から、好きよ、好きよといって抱っこされている子どもたちでは、そんなに目に見えて何か大きな反応があるわけではないのかもしれませんが、みんな、「今日もタッチケアして」といって寄ってきますので、「心の中で」という言い方が合っているかどうかわかりませんが、きっと、みんなふれられること好きで、その時間が待ち遠しいということには違いなさそうだというふうに思います。