3.タッチケアのきっかけと日本における広まり(3)

2.愛着形成のために

では、愛着の形成のためにはどうしたらいいか。それは〝Hug&Touch〟からです。乳児期の育児というのは、「抱いて、語りかけて、おっぱい」、これが三原則だと思います。まずここから始めていかなければいけないと思います。

その愛着形成のためにまずは…

その順番を示しましょう。

(1) まずは胎響から

まず、おなかの中にいるときは、「胎響」。お母さんのやさしい気持ちを胎児に響かせてあげる、それが胎響で、それが、絆(愛着)構築のスタートです。胎教のキョウという字は、教育の「教」よりもシンフォニーの「響」と書いたほうが、生理学的には合っています。

(2) 早期母子接触(バースカンガルーケア)

そして赤ちゃんが生まれた瞬間、お母さんは赤ちゃんを抱いて、これがまさに最初のタッチケアであり、カンガルーケアでもあります。そして生まれて約2時間は、神様がお母さんと赤ちゃんにすごいプレゼントをしています。お母さんにはプロラクチン(催乳・愛情ホルモン)、赤ちゃんにはカテコーラミンです。これは神経を覚醒させ、パッと目を見開いて敏感にさせる物質です。よって、このときこそ、お母さんと赤ちゃんを離してはいけないといえます。

早期母子接触(バースカンガルーケア)

ですから、この約2時間を「神生児覚醒」という言葉で呼びます。赤ちゃんは何もわからないのではなくて、しっかり目覚めているんだよということがわかってきたわけです。この「シンセイジ」も、私は、新しく生まれた児なんて書かずに、「神様が生んでくれた子(神生児)」と、いつも書きます。古くから「子どもは神様からの授かりもの」と呼ばれていましたが、赤ちゃんを知れば知るほど、神様が生んでくれた児と書いたほうがぴったりなんですね。

赤ちゃんは生まれてお母さんのお腹の上に置かれますと、自分でお母さんの乳首にたどり着いていきます。そして、おっぱいをチュッチュッと吸い始めます。目は見えていません。何でお母さんの乳首がわかるかというと、嗅覚(におい)です。お母さんの乳首から出るフェロモンのにおいを嗅ぎつけて、お母さんの乳首にたどり着き、そしてチュッチュッと吸います。すなわち、最初の臭い、お母さんの声、そしてお乳の味覚を通してお母さんを認識していくのです。さらにこの体験を実施できた親子には虐待が減少するというデータも出ています。だから、虐待予防の第一にこれを書いてもいいぐらいですね。生まれたらすぐ赤ちゃんを抱きましょう、おっぱいを飲ませましょう。これを「バースカンガルーケア」(早期母子接触)と言います。

(3) 母乳育児と愛着形成

その後、乳児期は、まさにこの図1枚(母子像)でおわかりになると思います。愛着形成、子育ての全ての原点がここに含まれていると思います。

母子像

見てください。赤ちゃんは、おっぱいを飲みながら右手でちゃんとお兄ちゃんにとられないように隠しています。お兄ちゃんはジェラシーの表情を浮かべながら、仕方なくお母さんの肩に。みんな、それぞれ勉強をしている。これが今、日本中のどこででも見られるようになったら、恐らく虐待も犯罪も減り、育児もすごくいい方向に向いていくと思います。この授乳行為は、まさに母子の基本的信頼関係の基盤と言えることが生理学的にもホルモン学的にも証明されているのです。