1.安らぎの物質オキシトシン(5)

オキシトシンのさまざまな効果は、一本の大きな木【図6】に例えられています。オキシトシンの基本的原理は幹ですが、これは成長の促進です。いろいろの作用が記載されております。これが風にそよぐ枝のように一緒になって効果を現わしております。

図6のイメージ

オキシトシンと触覚刺激ですけれども、これは、闘争か逃走かということではなく、愛情がこもった皮膚刺激は安らぎと結びつくシステムを活性化し、安らぎの幸福感をもたらします。この効果は、ストレスや危機に遭ったときほど、直ぐには現われませんが、長く続くことになっております。

タッチケアとふれあいの効果です。タッチケアやふれあいの子育ては、人と人との感情的絆の形成に至るサイクルがつくられます。幼い子どもの世話をしますと、なでたり、抱きしめたりする機会が自然と多くなります。そのため、子どもは親や大人にたっぷり触れられたと同じことになります。

こういう身体的接触によって、安心感と親密さが増します。その後、さほど集中的に触れられることがなくても、その子が幼い頃に温かく愛情を込めて触れられたことは、後に信頼関係や結びつきを伴う人間関係を築いていくことに役立っております。

スウェーデンの保育園や学校でマッサージを受けた子どもたちは、落ち着きが出て、他者とのかかわりに成熟が見られます。最も効果があったのは、乱暴な言動で集団をかき乱すタイプの男の子だったそうです。タッチケアによって攻撃的な振る舞いが減少したそうです。

現在の我が国の子どもたちは、生身のふれあいが減少し、ストレスと安らぎと結びつきシステムのバランスが崩れで、心の健康の危機にさらされております。枯渇しがちな安らぎの貯水池を定期的に満たす必要があります。積極的に広義のタッチケアを、子どもたちの健全育成のために行おうではありませんか。以上です。

それでは、次に、吉永陽一郎先生に「ふれあい保育の実際」の講演をいただきます。

先生は、長年、子育て支援と保育園や障害児の施設において、タッチケアの実践をしております。本日は、タッチケアの実際の事例とか、いろいろなことについてお話がいただける予定です。

それでは、吉永先生、よろしくお願いします。