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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
4.総合討論(4)

佐藤前川先生から発疹の話がありましたので、ご質問だと思います。「発疹が感染性であるかどうか迷うことがあります。判断基準になるような写真で示されたものがあればいいと思いますが、よいものがあったら教えてほしいです」ということです。

前川普通、感染性のものは発熱を伴います。だから、熱が出て、発疹が出てきて増えるようだったら、どうですか、先生。

和田やはり感染性のものがあると思いますね。

前川それが一つだと思うのです。もう一つは、もし発疹が出たら、余裕があったら主治医に診てもらって、感染性のものかどうかを区別してもらって、少なくとも登園許可証か何かを持ってこられるのが理想だと思います。

和田そうですね。先ほどの繰り返しになりますけれども、麻疹は予防接種を打っていればほとんどかからないわけです。そういうことを考えますと、最低、予防接種は受けていてほしいわけです。水疱瘡は、打っていても80%で、20%はかかってしまう可能性があります。ですから、最低、予防接種を受けておくことと、先生がさっきおっしゃったように、急性期、熱があるときは、まず病院へ行って診断をつけてもらってから行くということが大前提です。

例えば、一つ紛らわしいのは、「エンテロウイルス」というのがあります。腸管系ウイルスですけれども、その中にはヘルパンギーナもありますし、手足口病もありますし、ポリオもそうです。そういったものは発疹が非定型的に出てくるわけです。そうすると、夏場などは診断をつけにくいわけです。その子たちを行かせるかどうか。そういったエンテロウイルスは必ず便からウイルスが出てくるわけです。ですから、外から帰ってきたら手洗い、うがいをしなさい、保育園でも手洗い、うがいを励行させるようにしなさい、ということを我々はいつもお話ししています。

もう一つ、保育園では便に気をつけてほしいわけです。便からうつる感染症というのはすごく多いわけです。糞口感染と言いますけれども、手洗いをよくすること。お腹がゆるいお子さんに対しては特に気をつけてほしいし、場合によって、別の場所でオムツを取り替えるぐらいの気持ちであってもいいのではないかと思います。

佐藤インフルエンザのお話から次の話に移りたいと思いますが、いろいろな感染症について具体的に知りたいことがあるようです。まとめて挙げながら和田先生に答えていただきたいと思います。

「口元にできたヘルペスは、水痘に対する免疫を持っていない子に接触すると、水痘が発症しますか?。」

和田単純ヘルペスのお話だと思いますけれども、単純ヘルペスと水疱瘡は全然違うウイルスであります。同じヘルペスウイルス属にあって、ヘルペス属というのは8つぐらい種類があります。ヘルペス1型というのは口唇ヘルペス、2番目は性器ヘルペス、3番目は水疱瘡です。口元に出来たヘルペスが単純ヘルペス(口唇ヘルペス)だとすれば、水痘は発症しません。

突発性発疹もヘルペス属なんですね。突発性発疹というのは、2回やってもおかしくないか、2回やっているというお話がございましたけれども、突発性発疹は2種類あります。ヘルペスの6番目と7番目が突発性発疹で、大体80%が6番目。そして、7番目が20%ぐらいです。だから、2回やってもおかしくないということになります。突発性発疹というのは、生後6カ月ぐらい、お母さんの免疫がなくなった頃から発症して、1歳半ぐらいでかかってくる、良性な疾患だと言われていますけれども、中には熱性けいれんを起こすこともございます。

それから、単純ヘルペスは、ヘルペスの1番目の口唇ヘルペスのことだと思いますが、それと水疱瘡は違うわけです。口唇ヘルペスに関して保育園はどうするかというところですけれども、食事がとれない。歯齦炎を起こしたり、口内炎を起こしたり、ひどくなった時は、やはり休んでほしいわけです。

感染力はそれほど強くありませんけれども、初感染したときには、軽くかかる方もいますけれども、すごく重くなる方もいます。場合によっては、例えばアトピー性素因のあるお子さんが単純ヘルペスのウイルスにかかった場合には、カポジ水痘様発疹という発疹が出ることがあります。ですから、単純ヘルペスも、登園許可証には入っていませんけれども、やはり気をつけて、休まなくてはいけないこともあるわけです。先ほどお話ししたように、医師に診てもらって、登園してもいいかどうかというのを確認していただきたいと思います。

佐藤続いて、帯状疱疹のことで、「水痘は登園許可証があるけれども、帯状疱疹が不要になっているのはどうしてでしょうか」ということです。

和田帯状疱疹も同じヘルペス属のウイルスですけれども、一度水疱瘡をやった方が活性化したとき、今度は帯状疱疹という形で出るわけです。帯状疱疹というのは一般的には高齢者の方が多いですけれども、最近は若い方もかかります。水疱瘡を必ず先行に感染しているわけです。帯状疱疹も、出た発疹のところにはウイルスがあるんです。水痘の時よりウイルスの感染力は弱いと云われています。

中には、帯状疱疹という形で子どもたちがかかることもありますし、保育士さんとか看護師さんがかかって来られることがあります。我々は、「それも同じに考えましょう」ということであります。やはり水疱瘡と同じ基準で、発疹が痂皮化していないときは休んでもらったほうがいいのではないか。

保育園に来ているお子さんはいろんなお子さんがいます。免疫抑制剤を使っているお子さんもいるわけです。そうすると、やはりそこを基準にして考えていったほうがいいのではないかということもありまして、水痘と同じ基準と考えようというふうになっております。今度のガイドラインもそうしました。

前川前に地方に講演に行ったときに、「帯状疱疹はうつりませんか」という質問が来たんですね。そうしたら、ある医師会の先生が、帯状疱疹におじいさんがなって、孫と一緒に遊んだら水疱瘡になってしまったわけです。だから、もし保育士さんがなって、子どもと濃厚に接触すれば、水疱瘡になります。

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