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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
1.「乳幼児の感染症の特徴」

東京慈恵医科大学名誉教授 前川喜平先生

前川 「乳幼児の感染症の特徴」について、最初に私が話させて戴きます。

一.「受動免疫と感染防御」

【1】 経胎盤移行免疫グロブリンG(IgG)
 インフルエンザの予防接種を打つと、血液中にインフルエンザの抗体ができます。それでインフルエンザにかからない。血液中の抗体は免疫グロブリンにより運ばれております。免疫グロブリンにはIgG,IgA,IgM,IgEの4種類がありますが、大部分の抗体はIgGにあります。妊娠中に母体のIgGが胎盤を通して胎児に総て移行しております。在胎週数に関係なく、お産して育つようになれば、24週でも、41週でも、同じ量の免疫グロブリンが移行しているのです。

【2】 初乳の分泌型免疫グロブリンA(IgA)
 在胎週数と関係なく、分娩0〜3日に分泌される母乳を初乳と言います。3〜6日が移行乳で、それ以降が普通の母乳です。初乳には大量の分泌型免疫グロブリンAが含まれており、
 初乳を飲むとIgAが腸管の表面を覆い病原体の侵入を防ぎます。母親よりのIgG,IgAのお陰で、新生児は母親と同様に感染症に罹患しないようになっているのです。移行しないIgMや免疫学的特性で、新生児は大腸菌、ぶどう球菌、百日咳、B群連鎖球菌、ヘルペス、クラミジア、結核などの感染は阻止できないわけです。IgEはアレルギーと関係する免疫グロブリンです。
 知って欲しいのは、赤ちゃんが病気にならないのはすべてお母さんからの免疫なのです。どんなに丈夫なお母さんの子どもでも、親からもらった抵抗力がだんだん減っていくわけです。それから後は一つひとつ病気になって、赤ちゃんが自分で抗体をつくって丈夫になるのが特徴です。特にゼロ歳児保育を行う3カ月以降では移行抗体が減りますので、その頃、保育園に入れると、面白いくらい病気になるというのはそのためなのです。
 乳児は病気になって初めて丈夫になるのに、感染症をいかに阻止するかが、ゼロ歳児保育の矛盾です。

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