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財団法人母子健康協会 第30回シンポジウム 「保育における食物アレルギーの考え方と対応」
4.総合討論(13)

伊藤それから、主に乳児保育をされているところで、「赤ちゃんから1歳ぐらいまでは、園としては卵や牛乳は使わないようにしている。小麦も遅らせるようにしているけれども、どうでしょうか」というご質問です。これは、すべての子どもさんに対して一律にそういうふうにしているということでしょうね。

これはいろんな考え方があると思いますけれども、予防的な除去はしないという原則から言うと、あまりお勧めしたい対応ではないと思います。こういうことをやると、アレルギーの子どもさんが殺到するんですね。名古屋市内でも、「アレルギー対応します」と、昔から先進的にやっている保育園というのがありますが、そうすると園児の過半数がアレルギーの子たちになるんです。アレルギー食を食べている子のほうが多いので、そうなってくると、「卵・牛乳は、はなから使えません」とやらないと、逆に大変なことになります。そして、普通食を食べている子が、「僕はあっちのほうが食べたいな」と言ったりする。そんな状況になっている園でしたら、これはあながち間違いではないと思います。もちろん、安全ということを考えたら、そうかもしれません。

まあ、食べられるものは家庭で食べてもらったらいいじゃないかという考え方も、基本的にはあるかもしれませんので、一概に否定することではない。ただ、これがさらに発展してしまって、家庭でも卵や牛乳を1歳まで完全に食べさせないということになると、お腹の中の食べ物に対する反応の抑制というか、食べ物に慣れていくという成長の大事なポイントを逃すことになるかもしれませんので、基本的には食べられる子は、「家でちゃんと食べていますか」ということは確認されたほうがいいのではないかと思います。

海老澤先ほどの免疫を強くするという話と関係するかもしれないけれども、私たちが食べ物を食べることって、皆さんごく当たり前にしているからわからないと思いますが、意外と私たちの体の中を回っているんですよね。例えば卵を食べたり牛乳を飲んだりすると、ペプチドぐらいのものは大人でも若干、血液中に入ってしまうんです。では、なぜそれが私たちにとっては食物アレルギーにならないのかという、そこなんですね。

それは、私たちが小さいときから食べていることによって体を馴らしているわけです。そういうのを「免疫学的寛容」と言います。免疫がそういうことを許す状態をつくっている。許している状態をつくるためには何が必要かというと、小さいときにある期間、そういう刺激を受けることが必要なわけです。

逆に、母乳栄養中も授乳中も何にも症状がないのに、ずうっと除去してしまった。でも、即時型の症状が出てしまったというと、そういうアレルギーは、私たち専門医の間では「ちょっと治りにくいなあ」という印象を持つんですね。たぶんそれは、免疫の教育が、すべきときにちゃんとできていなかったということと関連するわけです。

そう考えると、さっき伊藤先生が読んでくれた質問に対しては、もちろん一人ひとりに対して必要な除去はすべきだけれども、症状が何もない人に対して余計な除去をするというのは基本的には勧められません。だから、本当に原因になる物質だけを避ける。もちろん、食物アレルギー専門保育園みたいな感じで、卵、牛乳の人が全員というのだったら、「卵、牛乳は1歳まで摂らせません」ということでいいですが、そういう保育園はないですよね。ですから、やはりその辺は冷静に対応していく必要があるのではないかと思います。

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