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第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気
1.子どもの特性
神奈川県立保健福祉大学大学研究科科長 前川 喜平 先生



ゼロ歳児保育で保育園に預けると病気ばかりしている

前川 それでは、まず皆様に質問。「ゼロ歳児保育で保育園に預けると病気ばかりしている」、正しいと思う人?正しくないと思う人?
 面白いですね、半々ぐらいですね。答えは、「普通の人だったら病気ばかりする」です。保育がどんなによくても恐らく病気はするでしょう。
 その理由は、いま、麻疹(はしか)が流行っています。麻疹の予防接種を受けると、血液中に麻疹の抗体ができて麻疹にかからないようになります。皆様の血液中には抗体があって、それを免疫グロブリンと言います。人間の免疫グロブリンには、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)と免疫グロブリンM(IgM)の3種類と、アレルギーと関係する免疫グロブリンE(IgE)というのがありますけれども、80%ぐらいの抗体が免疫グロブリンGに乗っていて、妊娠中にお母さんの免疫グロブリンGがすべて赤ちゃんに胎盤を通過して移行しているのです。
 初乳はご存じですね。これは在胎週数に関係なく、生後3日間に分泌される母乳のことです。ここには大量の分泌型の免疫グロブリンAが含まれておりまして、初乳を赤ちゃんが飲むと、腸管の表面を覆って感染を防御しているわけです。
 このように赤ちゃんが病気にならないのは、すべてお母さんからの抗体があるからです。IgMは分子量が大きいので、胎盤も乳腺も通過できないので、Mに関係している大腸菌やブドウ球菌などは赤ちゃんでも病気になるわけです。ですから、ぜひゼロ歳児を見るときには、皆様がトイレへ行ったときによく手を洗ってください。赤ちゃんのうんちは汚くないですけれども、皆様の菌が感染する可能性があるということと、皮膚をきれいにしてください。そういう意味です。
 いまのような理由で、免疫グロブリンGにある抗体、麻疹、風疹、溶連菌感染症は、生後数カ月はお母さんがなっていれば発病が阻止されているということになっています。けれども、細胞性免疫機能が感染防御の主体でありますヘルペスウイルスとか、いわゆる粘膜の局所免疫ですが、分泌型のA抗体が関係している百日咳だとかクラミジアなどの感染は防御できないわけです。
 図1にありますように、新生児の感染防御は受動免疫でお母さんからの免疫が主ですので、お産してしまえばだんだんそれが少なくなって、特に3カ月ぐらいからだんだん減り出してきて、半年近くなると、赤ちゃんは一つひとつ感染して自分で抗体を産生して丈夫になっていくわけです。

図1

 ですからこの答えは、「ゼロ歳児保育で保育園に預けると病気ばかりしている」は正しいということです。普通は保育園に入れるのは3カ月過ぎですから、保育園は感染症の巣ですから次から次へと病気になり易いというのはそういう理由です。ぜひ赤ちゃんが病気になることを恐れないでください。子どもは病気になって丈夫になるのです。



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