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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
2.子どもの歯の問題と対応
昭和大学歯学部小児成育歯科学教室助教授 井上 美津子



井上 こんにちは。昭和大学の井上と申します。
 きょうは、子どもの歯の問題ということで、話さなければならないことがたくさんあるのですけれども、その中から幾つか取り上げさせていただきました。
歯の数や形の異常とその対応
 まず歯の数が多い少ないということですが、いま、少ないほうが注目されています。けれども、実際は歯の数が少ない子と、多い子の、両方が見られます。
 歯の数がもともと少ないという状況を先天性欠如といいます。それから2本の歯が1本にくっついたという状況が癒合歯です。そうしますと、先天性欠如の発現状況は1%前後、2%まではいないかなという状況です。癒合歯は、もうちょっと率が高くて、1%台から3%台ぐらいの報告がいままでされております。合わせて2から4%ぐらいという状況です。我々も、1歳半健診、3歳児健診などいろいろ歯科健診を行いますと、50人以上お子さんが来ると、必ず1人か2人はいるというのが現状です。ですから、少し人数の多い園では、癒合歯とか歯の数が少ないお子さんが結構いらっしゃるのではないかと思います。
 2歳半過ぎぐらいで乳歯が上下20本生えそろうので、そのくらいのお子さんを500人近く私どもで調査した結果では、先天性欠如はそんなに多くないです。男女合わせて見ましても、0.8%ぐらい。1%弱です。ただし癒合歯はもう少し多くて、3%ぐらいという状況です。このぐらいのパーセンテージで、実際に私たちの調査でも見られたということです。
 乳歯が先天性に欠如したり、癒合したりというと、乳歯そのものよりも、次の永久歯がどうかというのが心配になるわけですが、やはり次の永久歯も影響を受けやすくなります。ただし、乳歯が欠如していたり、癒合だからといって、永久歯が必ず少なくなるとも限らないわけです。通常の数があるお子さんに比べると、乳歯にそういう歯の数が少ないという問題があると、永久歯のほうも少なくなる確率は高くなりますが、五分五分だったりという状況です。先天性欠如の症例の後継永久歯の状態、それから癒合歯の場合の後継永久歯の状態というのを調べてみますと、乳歯の数が足りない(欠如している)という状況ですと、やはり永久歯も欠如の率が高いです。はっきり言って、少なくとも50%以上は問題がある。全く歯数の異常なしは2割ぐらいという状況です。
 ただし、癒合歯といって2本が1本にくっついている場合は、歯の発生学的な問題がたぶん絡んでいるのですけれども、半分ぐらいは永久歯の数に異常がない。でも、逆に言えば、乳歯が2本くっついているのに永久歯の数がちゃんとあると、生えかわりの問題がかえって出てきたりいたします。ですから、そこら辺で経過観察が必要になってくるということです。
 ですから、対応として考えていきますと、癒合、先欠というのは、具体的には、乳歯のうちは様子をみるのがだいたい主体です。ただし、2本の歯が1本にくっついている場合というのは、くぼみ(癒合の線)がついているときがあります。そこら辺が結構むし歯になりやすいのです。特に斜めにくっついていたりすると、そこのところに汚れがたまりやすい。その専門的な対応として、いま、シーラントといって溝を埋める処置がありますけれども、2本が1本にくっついている歯の場合には、そういうシーラント的な対応をしてあげると、むし歯の予防にも有効です。
 基本的にはそれで様子をみる。ただし、癒合は前歯の場合が多く、生えかわりはだいたい6〜7歳なんですけれども、もう4歳ぐらいになると、次の下の永久歯が育ってきて、乳歯の根が溶けるという作用が始まります。ですから、4、5歳過ぎたら、できれば、下の永久歯がどうかなというのをエックス線写真でチェックしておいて、その生えかわりのときに対応がうまくできるようにします。片方の歯が出てきても片方の根が残っていたりすると、乳歯と永久歯の生えかわりがスムーズにいかないということが起こってきますので、そのようなお話を親御さんにして対応を考えていただくということになると思います。




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