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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
3.食の問題行動と対応
国立保健医療科学院研修企画部長 加藤 則子



思春期やせ症


 最後に、思春期やせ症のことですけれども、ごく手短に申し上げます。
 思春期やせ症は、いま、スリムファッションということで、思春期の女性がやせたがって食べずにいると、本当に食べられなくなってしまう病気だというのが、簡単な解釈です。けれども、それが心の問題と密接な関係があると言われています。
 何が怖いのかというと、飢餓状態になるとすごくハイになって、飢餓状態になっていることが、自分にとっては、「美しくなりつつある」という状態と混乱してしまって、本当に食べられなくなると死に至る、進行してしまうと治りにくいという大変怖い病気なのです。なぜ、このような病気の予防を保育所でというふうに私が思っているかといいますと、基本的に、母親に素直に甘えたり、本音を出したり、人目を気にせず自分のペースで生きていくとか、そういうことのできにくい女の子(男の子もたまにいますけれども)、女性の方がこの病気になりやすいと言われています。
 いろいろな事例を聞いていますと、思春期やせ症になる方は、幼い頃の食卓が暗かった方が多いです。特にお父さんが、今、不況のため、すごくストレスが多いです。家に帰ったときに、ストレス、情動のはけ口というふうに言いますけれども、食卓で怒ってばかりいる。お母さんとか子どもさんたちが、そーっと遠慮しながら食べているような暗い食卓とか、あるいは、お母さんがすごく厳しくて、それこそ好きだとか嫌いだとか自由に言えない雰囲気のある食卓とか、そういった食卓というものが、治療の途中で浮かび上がってくることがだんだんわかってきました。
 それを保育所で見抜くというのは難しいですけれども、お母さんとざっくばらんに話をしていったりとか、特にお父さんは社会的動物なので、そういったリスキーな家庭のお父さんでも、外面がいいという表現はよくないですが、保育所の先生方には表面的にはすごくいい人に振る舞っていて、なかなかつかまりにくいのですが、お子さんとかお母さんのふだんの表情などを見ながら、もしかして気になることがあったら、言葉をかけてあげるとか、そういうことをしながらかかわっていくことで、将来の思春期やせ症の方が減っていくかなという思いがございます。早期発見にこしたことはないといいますか、食育検討会は、まさにこの思春期やせ症の予防ということが主な課題だったので、それも含めてご紹介させていただいた次第です。

前川 非常に参考になる話で、どうもありがとうございました。



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