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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
3.食の問題行動と対応
国立保健医療科学院研修企画部長 加藤 則子



偏食に対する工夫


 次に、偏食に対する工夫ということです。偏食というのも、好き嫌いがあるというのは、とても賢くなっていることの証拠です。大抵離乳食というのは、味もわからないでモゴモゴ、ゴックンやっているけれども、1歳くらいになって味がわかってくると、自分の好きなものがわかってくる。これは重要な発達の経過です。そもそも、何でもかんでも食べるのではなくて、食べ物と食べ物でないものがわかってくるというのは一つの重要な発達です。それにつながっていくものとして、前川先生が言われましたように、塩辛いとか、苦いとか、そういった変な味と、自分の生命を保つために重要な甘いという味との違いがわかってくるというのは、非常に重要な発達です。ですから、偏食は必ずしもネガティブなものではないというふうに理解したらいいかと思います。偏食というのは食欲不振と同居しています。おなかがすいていれば何でも食べられるし、おなかがいっぱいだと、好きなものしか食べられないことがあるということもちょっと頭に入れておきましょう。
 もう一つ、ひどい偏食というのは最近流行りの発達障害です。ADHDとか、いろいろなスペクトラムとか、偉い先生が難しいことをおっしゃっている、いわゆる「発達障害」という病態の症状の一つとして出てくることもありますので、あまり頑固に受け付けないような食材があるときとか、新しい食材を全く食べないときには、小児精神に詳しい先生にご相談するのもいいかもしれません。
 偏食に対する工夫例を紹介しますと、 1.おろしたり、こまかく刻んで、好きな食品や料理に混ぜる。調味料を変える。においを変える。目新しい形に切るなど料理の工夫をする。 2.食事中に、さりげなく食事の関する話題をなげかけて会話する。 3.絵本、紙芝居、パネル、ペイプサート、パネル・エプロンシアターなど年齢相応の媒体を用いて食事への興味を持たせる。 4.園庭の片隅の野菜畑やプランターに、トマト・ピーマン・なすなどの種を撒き、その成長を見せる菜園活動は、自然への親しみを持たせたり、植物の成長を観察させることの他に、食べ物への関心を高めます。 5.自分で材料を洗ったり切ったり、調理した料理した子どもたちにとって格別な味になります。クッキング保育を通して、食べる意欲を向上し、偏食は軽減されます。
 さらに追加しますと、年齢相応の媒体を用いての説明をしましたが擬人化というのも子どもたちには有効だと思います。食べ物をあたかも人格があるかのように思わせることで、子どもは、これにごまかされて食べるということがあります。例えば、「ピーマンさんが食べてほしいって言ってるよ」とか、「食べてくれなくて寂しいと言ってるよ」とか、そういったストーリー性、お話として食事を考えていくと、子どもも、食べるということにスッと入っていけるのではないかということがあります。



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